[MOVIE]映画『ナイト&デイ』はとうのたったスター二人が頑張る痛快スパイ・アクション・コメディだったッ!

■ナイト&デイ (監督:ジェームズ・マンゴールド 2010年アメリカ映画)


トム・クルーズというのは実は結構好きな俳優である。『宇宙戦争』や『マイノリティ・リポート』あと『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』に『ミッション・インポッシブル』シリーズなど、どれもこれもオレ好みの映画ではないか。『オースティン・パワーズ ゴールドメンバー』や『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』のカメオ出演なんか最高だったじゃないか。ところがキャメロン・ディアスとなるとこれは困ってしまう。どうもまともに観たことのある映画がない。いや、調べてみたら何本か観ているのだがこれが全然印象に残っていない。う〜むきっと全然好みの女優じゃないってことなんだろうなー。で、『ナイト&デイ』はこの二人の主演映画ってことなのだが、「二人ともそろそろ歳だし人気も落ちてねえか?」というのが世間の意見であるらしい。悲しいことである。

まあ確かにトム君なんかはカメオ出演の2作では殆どセルフ・パロディの領域だったが、この『ナイト&デイ』も、ある意味『ミッション・インポッシブル』のセルフ・パロディと取れないこともない。かつて"イケメン俳優"であった自分を"一見イケメンだが実はなんだかミョーなヤツ"として演じているわけなのだ。なにやら重要な秘密を握ったばっかりにいろんな組織に追われることになった諜報部員のトムくん、襲いかかる危機また危機!に対して、「眉間に皺を寄せて一見シリアスに思わせながらもいつも口元はニヘラッと緩んでいるアホ顔」で対処するのである。「アホ顔」というより「アブナイ顔」と言ってもいい。トム君の巻き添えで危険にさらされたキャメちゃんに、「ボクがいれば大丈夫さ!」とアブナイ笑顔をニッとさせて言いつつ付きまとう様は、ナイトというよりも殆どストーカー状態である。

そしてこのトム君、やためったら強い上にそりゃアリエネーだろ、と言いたくなるぐらい都合よく危機を脱する。普通こういうのをご都合主義というのだが、あまりにも屈託なく演じられる上にヒーロー俳優のセルフ・パロディでもあるため、ゲラゲラ笑いながら「ま、いっか」と思わせてしまうのである。即ち『ナイト&デイ』のトム君、実はかなりイイ仕事してるんである。一方、キャメちゃんは、ええと、あのう、ううん、ホントに歳食ったよなあ、目元の小皺がかなり悲しい領域に達しているよなあ、と映画の最初から思ってしまったオレである。なんでキャメロンちゃんなの?他にもっと若い美人ちゃん女優なんていくらでもいんじゃない?とさえ思ってしまったオレである。途中で登場したキャメちゃんの水着シーンでは、「すまない。本当にすまない」と何故かオレの方で土下座してしまいたくなったほどである。

しかしだ。映画が進むにつれ、キャメちゃん、意外と愛嬌あんじゃん?と思えてくるんである。表情や仕草に、いい具合にくすぐり要素があるのである。この映画のコメディ要素の半分以上は、実はキャメちゃんが醸し出しているのではないか、と思えるのである。オレは俳優の演技の良い悪いというのはよく分からないのだが、自分のキャラをこうして押し出せるのは、ベテラン俳優であり、しかもコメディエンヌの資質を持ったキャメちゃんならばこそなのではないか、と思えてきたのである。即ち『ナイト&デイ』のキャメちゃん、実はかなりイイ仕事してるんである。そういった意味でこの映画は「二人ともそろそろ歳だし人気も落ちてねえか?」なんて風評を吹き飛ばすべく、二人の力量と経験豊富さを目一杯押し出した傑作として完成しているのである。アクション映画としてもおそろしくテンポが良く、細かいアラなど気にしなくさせる痛快・軽快・爽快感に満ちている。これ、予想以上に面白い映画だったな。

■ナイト&デイ 予告編