最近読んだコミック / 「ピコピコ少年」、「以下略」、「アオイホノオ(4)」などなど

■ピコピコ少年 / 押切蓮介

ピコピコ少年

ピコピコ少年

インベーダーゲームのブームがやってきたのはオレが高校生の時だったが、オレはまるで触らなかった。お金と時間の無駄だと思ってたのもあるし、何よりゲームをして負けても、上手くなりたいとかクリアしたいとかいう欲求がまるで沸かなかった。ファミコンブームが到来した時も、あれは子供のやるものだ、とか知ったようなことを言ってスルーしていた。そんなオレが30近くになり、スーパーファミコンが発売された頃からゲームに手を染めてしまい、以来いっぱしのゲーム好きを気取っているのだから人生分からないものである。オレがゲームをやり始めたあの頃、人生に面白いもんなんて何もなくて、ゲームでもいいから自分を忘れて没頭できるものが欲しかったのだ。しかしオレは今自分の人生がつまらないなんて全く思っていないが、ゲームの面白さはやはり変わりはしない。
押切蓮介の『ピコピコ少年』は少年時代にゲームの洗礼を受け、すっかりゲームの虜となり猿のようにやりまくっていた、どこにでもいそうなゲーム少年の日常を描いた漫画だ。オレの少年時代と被る部分は全くないのだが、オレの場合はこれがTVだったり漫画だったりするだけのことで、時代が違えばオレもこの主人公のような生活をしていただろうことは想像できる。しかしこれは作者のテイストなのか、物語がやたら殺伐としているのだ。この殺伐とした雰囲気と、ゲームの持つ刹那的な快楽が妙にマッチして、単なる「子供の頃の楽しかった思い出」のみを描いたのではない、奇妙に生々しい作品となっている。このへんの甘さの無さが特徴的な作品になっているだろう。しかしそれにしても思ったが、親も次から次に発売されるゲーム機をよく子供に買って与えているよなあ。歳のせいなのか、子供にゲーム機をねだられる親のほうの心情に興味を持って読んでしまった漫画だった。

■以下略 / 平野耕太

以下略

以下略

ヘルシング』の平野耕太が描くギャグ漫画。作者本人と思われる登場人物を筆頭に、ゲームショップに集うオタクでオタクでどうしようもない人たちがひたすらオタク話に血道をあげ、お互いがいかに筋金入りのダメ人間かをひけらかしあうというしょーもないオハナシ。『ヘルシング』単行本の巻末にあった汚い絵のユルいオマケ漫画を想像するとヨロシ。オレは年代的には作者とは全然ずれるので、この漫画で飛び出すオタクネタはよく分かんなかったりするのだが、ゲームネタだけはなんとなく伝わりました。そしてなんとなく伝わったなりに、本当にこの人よく知ってんなあと感心しまくりでした。伊達に漫画家なんかやってないよね。それにしてもゲーム・マニアのある種の部分って、なんかどっか殺伐としてる部分があるのは確かだなー。ゲーム関連のHPやアマゾンの評価欄って容易く荒れるし、そういうの抜きにしてもゲームばっかやってる時の廃人感って結構あるんだよな。ゲームって他のホビーなんかと比べても相当快楽中枢刺激するから、やってる時はそれこそ猿みたいにやってるし、他のことに目が行かないし、逆にこの快楽を阻害されると鬼のように攻撃的になったりすることがあるんだよね。ゲームってどこか麻薬的な部分があるのは確か。だからこの漫画も、ジャンキーについての漫画だということが出来るかもね。ところでオレもゲーム好きですが、やってる時は程よい加減に廃人状態です。反省はしません。

アオイホノオ(4)/ 島本和彦

アオイホノオ 4 (少年サンデーコミックススペシャル)

アオイホノオ 4 (少年サンデーコミックススペシャル)

島本和彦の自伝的セーシュン漫画第4巻であります。大阪の芸術大学に通う主人公ホノオ・モユルは「漫画家とかアニメーターとかなんかそういうもんになりたい」という夢を抱えながら、実力も実行力も伴わない自分に日々悶絶し、時には咆哮を上げたりしているんです。しかしこのホノオ君、性格が単純なせいか立ち直りも早く、落ち込んだかと思えば根拠不明な自信を取り戻し、時々勝手に勝利宣言しちゃったりするんですな。もうホントこのホノオ君、思い込みが激しい上に意味も無く力みまくる性格で、そんなアホさ加減が思いっきり笑わせてくれる漫画なんですが、逆にこのアホなりに屈託の無い性格が、まともに描くと暗くなりがちなセーシュンのヒトコマを、熱血と暴走の良質なギャグ漫画として成立させることに成功しているんですな。ただ、アホなんて書きましたが、若い頃は多少アホでカッコ悪くたって構わないんじゃないのかな。それにしても準主役キャラである庵野英明の怪しさと才能がハンパなくて、今回も主人公を食っちゃう勢いであった。