映画『アドベンチャーランドへようこそ』は嬉し恥ずかし王道セーシュンドラマだった

アドベンチャーランドへようこそ (監督:グレッグ・モットーラ 2009年アメリカ映画)


この映画『アドベンチャーランドへようこそ』、タイトルの"アドベンチャーランド"というのは遊園地の名前なんですけれどね、ここでアルバイトする若者たちのセーシュン群像を描いたドラマなんですね。主人公ジェームズ(ジェシー・アイゼンバーグ)は大学出たての学生なんですが、突然悪化した家庭の経済事情で卒業旅行には行けないわ、NYでの大学院生活も危ぶまれるわで、いきなりバイトをせにゃならなくなったわけです。で、あれこれバイト先を探すんですが景気が悪くてどこも見つかりゃしない。やっと見つかったのがあまりにもあまりにセコい遊園地、《アドベンチャーランド》。しかしここにはびっくりするぐらい可愛い女の子がいて主人公ジェームズは早速胸ときめかせるんですが、なんとジェームス君は《童貞》だった!?というドラマなんですな。
童貞クンがその童貞ぶりを堂々と胸はって主張する(まあ胸まではってないけど)セーシュン・ドラマだというのと、監督が日本未公開DVDスルーながらも大傑作だった青春コメディ『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(コメディ好きは必見っすよ)のグレッグ・モットーラと聞くと、やはりそっち方面なお下劣バカ映画かとちょっぴり期待しちゃいましたが、これがいい意味で予想を裏切り、実に王道の素敵なセーシュン・ラブロマンス・ドラマに仕上がっておりましたよ。(ところで"青春"って単語はどこか気恥ずかしいものがありますなあ。なんか"青春"な時期って、そんなに青くも春でも無くて、どっちかというと灰色だったり冬っぽかったりしているように思えます。おまけにお馬鹿な時期でもありますな。まあこれはオレの個人的な体験なのかもしれませんんが。だからどうしてもカタカナで"セーシュン"って書いてしまうんですな)
これ、なんといっても遊園地っていう限定された舞台設定という所がいいんですな。遊園地ってやはりどこか現実からちょっと浮き上がっている場所じゃないですか。まあ舞台になっている「アドベンチャーランド」はさびれた零細遊園地のうえ経営者夫婦は怪しい感じのオッサンオバハンで(この二人の掛け合いがまた笑わせるんです)、来る客はどっちかというといけすかないし、バイト君連中はダルそうに仕事してたりするんですが、やっぱりちょっとキラキラと浮き足立った非現実感があるんです。この舞台設定がワカモノたちが彼らの現実を一時保留にしたモラトリアムな毎日を上手く象徴しているんですな。そしてやっぱり、ラブロマンスが盛り上がったときに、ロケーションとしてとてもドリーミンな雰囲気を盛り上げるんです。
その中で主人公ジェームズ君は仲間たちとバカやりながら同僚のバイト女子エムたん(クリスティン・スチュワート)に恋しちゃうわけなんですが、ジェームズ君ったらもう童貞クンならではの異様なモジモジ感でもってエムたんにアタックするもんですから、観ているこっちはなんだか焦れったくてしょうがない!「ええと僕は君のことが好きだけれどまだ君とは付き合ってないしだから昨日別の女の子とデートしてキスしちゃったんだけれどでもこれを大好きな君に打ち明けないのは不誠実だと思ったから今君に打ち明けるんだ」とか訳のわかんないことを言ったりしてるんです。ああもうウゼエエエ!でもその焦れったいところがなんだかたまんない!くうう!そしてこのエムたん、家族と全然うまくいってない上に実は職場の上司と不倫関係にあったりするんです…。この辺のちょっとダークな現実を垣間見るところにもセーシュンの光と影をうまく表現していて見入っちゃうんですな。さて、ジェームズ君とエムたんの恋の行方はいかに!?とても素敵なセーシュン・ドラマ『アドベンチャーランドへようこそ』、胸キュンしたい人に是非お薦めです。

アドベンチャーランドへようこそ 予告編


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