『サンシャイン・クリーニング』は淡々と今日を生きる映画だった

サンシャイン・クリーニング (監督:クリスティン・ジェフズ 2007年アメリカ映画)


高校時代はチアリーダーの花形だったローズ(エイミー・アダムス)だが、今はしがないシングルマザーのハウスキーパー、おまけに昔好きだった男の不倫相手。息子は情緒不安定で退学させられ、妹ノラ(エミリー・ブラント)は定職に就かずいつもブラブラ、父親は一攫千金を狙いながら失敗ばかり。負け続けの負け犬人生に嫌気が差したローズは、大きく稼ごうと妹と二人である事業を始める。それは自殺や事故の血塗れの事件現場を後片付けする特殊清掃だったが…。

リトル・ミス・サンシャイン』の制作チームによる家族の再生を描いた人間ドラマ。『リトル・ミス・サンシャイン』では徹底したダメ振りが香ばしいダメ家族が登場し、この家族を通してアメリカという国で暮らす家族のひとつの縮図を描きながらも最後は家族賛歌で落とすというドラマだったが、この『サンシャイン・クリーニング』はダメはダメでももう少しごく普通にいそうなダメな人々が主人公となっており、その分地味ではあるが平易で共感しやすいドラマに仕上がっている。言ってしまえばよくある「どうしようもなくなってしまった自分の人生をどうにかしてよくしたい」という人々のドラマではあるが、これがありがちなハリウッド映画のようにとんでもない悲劇のどん底に突き落とされたりドラマチックに一発逆転したりそこでなんだかカンドー的な音楽が流れて人生バンザイ!なんてやるような物語になっていないところがこの『サンシャイン・クリーニング』の持ち味だろう。

極端な不幸も幸福も無い。頑張ればどうにかできそうな現実と頑張ったってどうしようもない現実があり、そして頑張ったってどうしようもない現実があったってやっぱり明日もにっこり笑って生きてゆくしかない。明日いいことがあるなんて保証はどこにもないけれど、明日いいことがあればいいな、と思いながら生きることは出来る。辛いことも嬉しいことも両方あって、そうして今日も淡々と過ぎてゆく。『サンシャイン・クリーニング』はそんなドラマだ。ローズが自殺現場の特殊清掃に興味を持ったのは、幼い頃母の自殺現場を目撃してしまったからであったことが途中明かされる。彼女は仕事を続けることによりそのトラウマを払拭しようとするが、「天国に通じる無線」で死んだ母に語りかけるところがこの物語のハイライトになるだろう。小品であり、説明不足で時々戸惑うような描写もあるが、心に残る佳作であることは確かだろう。