- どうでもいいカンソーブンを書くのにも疲れたのでたまにはどうでもいい日記でも書くことにする。
- ちなみにオレのカンソーブンは感想文ではなくあくまでカタカナのカンソーブンであり即ちカタカナ文字の見た目の如く軽薄かつ蒙昧なものであるということを字面から表現しているのである。
- さらにいってしまえばレビューという言葉もあるがこれがどうにも面映く感じてしまうのはレビューというと宝塚歌劇団あたりのお星様がキラキラした絢爛豪華な映像が頭に浮かんでしまい「レビューしました」なんぞと言ったが最後この自分自身が金ラメジャケットにシルクハット蝶ネクタイに網タイツでハイヒール履いた足を上げ下げしているような眩暈にも似た錯覚にとらわれ悪寒悪心冷や汗身体の震えが止まらなくなるという症状を巻き起こしてしまうのであまりこの言葉は使いたくないのである。
- まあそんなことはどうでもいい。
- そういえばこの間すき焼きなんぞを食ったのである。
- 清貧として生きることを人生の訓とし清く正しく美しく生きることを是としているオレ様にとって贅沢とは鬼畜米英の如き不倶戴天の敵であり竹槍にてこれを撃退する撃ちてし止まん大和魂はこの身に満ち満ちているのではあるが清貧というのは時として飽きるものであり稀にこのような蕩尽に走りあえてこの身を汚すのである。しかしこの心の弱さこそが清濁併せ呑むこのオレ様の人間味溢れるキャラクターを生み出しているといっても過言ではない。…と誰も褒めてくれない寂しい人生を生きるがゆえにそっとネットの片隅で自画自賛してみるfumoさん47歳初老の冬が身に凍みる男である。
- ちなみに実際は清くなく正しくなく美しくなく生きているのが現実でありそれならfumoさんあんたは「汚貧」というのが正しいんじゃないかとおっしゃる方もおられるかもしれないが自らの生活を「汚貧」と呼び貶めるのはあまりにも汚れちまった悲しみにであり今日も風さえ吹きすぎるのである。
- さてそのすき焼きであるがなにしろこんなものを食うのはダグラス・マッカーサーが厚木海軍飛行場に降り立ち「コーヒーはbossだね」と宣言して以来久しぶりなので作り方などをおさらいしてみる。そしてそうだそうだあれは醤油をベースに肉や野菜に酒だの砂糖をぶっ掛けてグツグツ煮る食いモンだったわなと記憶を引っ張り出したのである。というわけで野菜を刻み格安オージービーフをパックから引っ張り出し醤油をぶっ掛け砂糖をぶっ掛け酒をぶっ掛けカセットコンロでグツグツ煮たオレなのである。
- そして火の通った頃合を見はかりそのすき焼きを小皿の溶き卵に落とし込みおもむろに一口頬張るとおお美味いあら美味いこりゃ美味いなんて美味い食いモンなんざんしょと身を走る衝撃に滂沱の涙を流して咽び泣くこのオレだ。今までこんな美味いものを食べられなかったなんて…みんな…みんなビンボが悪いんじゃ!と天に唾を吐きかけるか如き勢いのオレ様であった。
- ううむしかし鍋などという食いモンはその曖昧な味わいからそれほど好きではなかったオレ様がなぜにしてこのすき焼きに限ってはこれほどまでに美味に感じるのかと暫し熟考してみたのである。
- そして閃いたのはやはりこのすき焼きなる食いモンはまず醤油のピリッ!そして日本酒のピリッ!さらに砂糖のピリッ!のそれぞれのピリッ!が三位一体となって醸しだす刺激が牛肉という肉の中の肉の王にじっくりと染み入り味の濃いもんが大好きなオレの舌に歓喜のハーモニーを奏でるのではないだろうかとそう解釈したのである。
- ここで「fumoさんすき焼きってそんなピリピリした濃い味付けなんかしないよー」などという一般論などは一切受け付けるつもりなぞ無い事をここに明記しておく。
- そして醤油酒砂糖によりどこまでもピリピリ舌を刺激するこの料理は実はジャンクフードなのではないのかとオレは思い立ったのだ。なにしろこの味の濃さそして牛肉の肉肉しさ全体的なカロリーの高そうな感じは鍋物という概念の中から導き出されるヘルシーなイメージとは真逆の位置に存在していると思ったのである。
- だいたい「〆にうどんをぶっこむ」ってもはやお前はたっぷり太ってくれと言ってるようなもんじゃねー?
- そう。すき焼きはジャンクフードなのである。味が濃くて美味くてひたすら身体に悪そうなジャンクフードなのである。今オレの中ですき焼きはピザやポテチやハンバーガーと同じ位置にある食いモンとして認識されたのである。そしてオレはジャンクフードが大好きなのである。そのオレがすき焼きを食って感激したのはこれは既に運命であり宿命であったといっても過言ではないであろう。
- と言う訳でオレとすき焼きの新たな未来がこれから始まるのである。道は遠く険しいかもしれない。しかし求めればそれは与えられるものなのだ。そして今日もすき焼きを食うことを夢見ながら幸薄き人生を模索してゆくこのオレなのである。
- 完。
- 作者: 泉昌之
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 1998/10/01
- メディア: 文庫
- 購入: 19人 クリック: 140回
- この商品を含むブログ (71件) を見る