DVDダラ観日記〜『ワールド・オブ・ライズ』『ヒットマン』

ワールド・オブ・ライズ (監督:リドリー・スコット 2008年アメリカ映画)

ワールド・オブ・ライズ 特別版 [DVD]

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中東を舞台に危険な任務を遂行する「現場」のCIA工作員と、安全なアメリカ本国であれこれ無茶を指図する「事務所」のCIA上官を対比させたスパイ・ドラマ。まあ「現場」のブルーカラーと「事務所」のスーツ族の対立というのはどこの企業でもありそうな話で、これが弾薬爆炎撒き散らしながら国際規模で展開されていると思えばいいんですな。派遣されている現地の人間に気遣いしながら危ない橋ばっかり渡らされている「現場」の職員は、功利主義的で計算づくの「事務所」の上司に不満たらたらなんですが、"組織"の為なら仕方あんめえと汲々と仕事をするわけです。しかし最期に頼りになるのは一緒に苦楽を共にした現地の人間だったというお話です。単純に言えばそんなことではないかと。
あと、戦争というのもひとつのコミュニケーションだという言い方もあって、侵略にしろ制裁にしろ防衛的攻撃にしろ他国の風土や文化を学ぶというのは戦略的に有効な方法であるにせよ、アメリカ的なマキャベリズムは機械的な拡大主義を繰り返すだけで他国の、特にこの映画にあるような中東の有り様を尊重し学習するということが出来ない、そういった尊大さを皮肉った作品だということも出来るでしょう。クーラーの効いた安全なオフィスで「中東って最低だよな」とうそぶくCIA上司と、死の危険と隣り合わせの中東の町を疾走しながらそれでも中東を愛してしまう主人公のCIA職員の対比にそれが表れていると思います。

ヒットマン (監督:ザヴィエ・ジャン 2007年アメリカ映画)

ハゲ坊主で後頭部にバーコードを刺青した凄腕暗殺者が、ロシア大統領暗殺指令をきっかけに自らを生み出した謎の組織に追われる羽目になる…というアクション映画。人気ゲームの映画化で、そのせいもあってかリアルなサスペンス・ドラマというよりはゲームっぽい単純明快さと漫画的なカリカチュアライズ振りがポイントなんですが、この辺は好き嫌いが分かれるかもしれないけれどもオレはかなり面白く観れました。
クールで寡黙、沈着冷静で正確無比、素手でも銃でも最強の暗殺者が主人公なんだけど、ドバドバ敵をぶっ殺しながらも表情一つ変えず汗一つかかない様はさながらターミネーターの如き不死身の殺人マシーン!しかし人間としてのアイデンティティを喪失した悲壮感と孤独感もどことなく漂わせ、決してぶち壊し屋のゴリラや冷酷な殺人者という訳ではない。そんな暗殺者の彼は暗殺指令を拒否して助けた売春婦と少しづつ心を通わせてゆくんですが、最後まで決してロマンスにならない甘さの無さもハードボイルドでいい。
そうは言いつつ細かい心理描写が描かれる映画ではなく基本ドンパチなんですが、こういった内面とかどうでもいいような超人的な主人公がコミック・ヒーローのように暴れ回るすっきり爽快B級アクションってことでいいんではないかと。だから暗殺者のクセに目立つし派手に殺しまわりまくりなんだけれども、納得して観るならかなり楽しめると思いますよ。レンタルして観たけどDVD欲しくなってしまった。