■巨人譚/諸星大二郎
- 作者: 諸星大二郎
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/12/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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それは紀元前3000年紀まで遡って描かれる、古代メソポタミア〜地中海文明の漂泊の様だ。ギルガメシュ王の放浪を描いた「ギルガメシュの物語」から始まる「巨人譚第1部」は、ミノタウロス伝説で知られるクノッソス宮殿の崩壊をクライマックスに迎える「ミノスの牡牛」、"憎まれ者"オデュセウスが登場する「ロトパゴイの難船」、そしてサハラ砂漠を舞台に全ての伝説と文明が砂に沁み込む雨水のように消失する様を描いた「砂の巨人」へと辿り着き、悠久の時の彼方に埋もれていった幾多の人々とその物語を陽炎のようにページに映し出すのだ。地中海の眩い光さえも黒く不安定な妖しい描線で描く諸星の物語は、全てが費え去ってゆく歴史の無常観を読むものに語りかける。
第2部は「巨人譚」とは別の物語であるが、古代中国を舞台にした諸星の怪異伝、『諸界志異』系列の怪しく幻想的なな2編の短篇が収められている。こちらも読み応えは十分だ。
■ヘルボーイ:闇が呼ぶ/マイク・ミニョーラ、ダンカン・フィグレド
ヘルボーイ:闇が呼ぶ (JIVE AMERICAN COMICSシリーズ)
- 作者: マイクミニョーラ,Mike Mignola,Duncan Fegredo,関川哲夫
- 出版社/メーカー: ジャイブ
- 発売日: 2008/12
- メディア: コミック
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ちなみに今作ではマイク・ミニョーラは原作のみで、アートをイギリスのコミック・アーティスト、ダンカン・フィグレドが全篇手掛けている。ミニョーラ的な色彩感覚と描画の陰影を受け継ぎながらも、非常に細微にわたる書き込みが特徴的で、ヘルボーイの物語をミニョーラとは別の角度で魅力的に描き出している。
■毎日かあさん(5)黒潮家族編/西原理恵子
- 作者: 西原理恵子
- 出版社/メーカー: 毎日新聞社
- 発売日: 2008/12/15
- メディア: 単行本
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そしてこの「毎日かあさん」第5巻は、夫であった鴨志田氏が亡くなって間も無くの自分と家族を描いた作品でもある。ああだこうだと大騒ぎしている日常の中で、ふとエアポケットのように鴨志田氏の幻影がサイバラの目の前に現れる描写は、実に切ない。現実的に自らの家族や愛する人の死に立ち会ってしまった人の言葉には、やはり胸に重いものを感じてしまう。子育てのドタバタを描いたこの「毎日かあさん」第5巻は、逝ってしまった家族という現実を受け入れる、ひとつの過程を描いた漫画でもあるのだ。そしてサイバラは今日も逞しく生きてゆく。だからみんなも逞しく生きればいいと思うよ。