トロピック・サンダー/史上最低の作戦 (監督 : ベン・スティラー 2008年アメリカ映画)


トロピックなんだッ!サンダーなんだッ!トロピックサンダーなんだッ!2008年の最後を汚す大作バカアホ映画『トロピック・サンダー』の登場なんだッッ!

■トロピックなサンダーだった!

と言う訳で観てきました『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』。無駄に派手で豪華な配役・アクション・爆発、これでもかといわんばかりの下品・グロ・差別ネタの応酬、そして分かりやすいぐらいあからさまな様々な映画のパロディ。あそこが面白い、ここが面白いなどとあれこれギャグを書き連ねるのにも徒労感を憶えるほどのお腹一杯なアホアホ映画でありました。

だいたいジャック・ブラックベン・スティラーというコメディ映画の両巨頭が並んでいる横でロバート・ダウニー・Jrがしかつめらしい顔して何かボソボソ言ってるし、ブランドン・T・ジャクソン演ずるところのアルパ・チーノがプッシープッシー連発してるし、ニック・ノルティはなんだかチャック・ノリスが取り付いたかのような酸っぱい顔してるし、もうステーキとハンバーグとトンカツを一皿に盛り付けられたかの如き濃厚さなんであります。

■お腹一杯だった!

ただね。これらの俳優達の熱演・力演・快演は胸焼けするほど伝わってくるし、面白い映画作っちゃるぜ!という熱気もパンツの奥までじっとり染み渡ってくるし、笑いにも力が篭りまくっているのはオレが劇場でメチャクチャ腹抱えて笑ったことで証明できるんですが、贅沢を言うならなんかこう、ホゲラーと気の抜けたクルクルパーな部分も欲しかったような気がするんですよ。

映画をいわばザ・ドリフターズの太平洋戦争コントみたいなもんとして捉えると、出ているのが全員志村けんみたいな按配なんですよね。で、映画の登場人物はダグやらジェフやらというよりも、そのまんまベン・スティラーでありジャック・ブラックであるんですよね。ロバート・ダウニー・Jrも、誰かが言ってたけど結構地の様な気がするし。みんな勤勉にお笑いやってるんですよ。

■トムちゃん大乱心!

そんな中で、一種異様というか別格だったのがトム・クルーズ演ずるところの怪プロデューサー、レス・グロスマンなんだよね。それとなんだかふわふわした金髪とキラキラしたオメメが逆に気色悪かったマシュー・マコノヒー。異論は沢山あるとは思うが、実はこの二人が、この映画の本体だったのではないかとオレは思うのよ?

なにしろハゲデブメイクで現れて汚い言葉を連発しながらもっと汚い姦計を巡らし、さらに不気味な踊りまで披露しちゃうレス・グロスマン、こいつの狂った頭と腹の中の黒さは映画の中でも際立っていたけど、なぜかこれが妙にリアルなんだよ。グロテスクにデフォルメされているけれども、こいつ(と脳みそツンツルテン風のマシュー・マコノヒー)だけが現実の側の人間の臭いをさせているのね。

■ドリフVSたけし・・・?

アメリカ映画界の有名プロデューサーというとジェリー・ブラッカイマージョエル・シルバーあたりを思いつきますが、トム・クルーズカリカチャライズしたのは多分このあたりなんだろうね。そしてそのカリカチャライズには明確な悪意を感じるんですよ。トム・クルーズのフォースの暗黒面がひしひしと伝わって来るんですよ。きっとああいったプロデューサーが大嫌いだったんだろうなあトムちゃん…。

ジャングルでドタバタを演じるベン・スティラーさん御一行が計算されきっちり練習されたコントを演じるザ・ドリフターズだとしたら、トム・クルーズはさしずめ毒ガス吐いてた時代のビートたけしって役回りなのかもね。PTAは怒らせても基本的には万人向けのお笑いを演じたドリフと人気者だったけれども何か黒い狂気の宿っていたたけし。なんだかオレはそんなふうに『トロピック・サンダー』を観てしまいました!

■Tropic Thunder Japan Trailer

http://jp.youtube.com/watch?v=0PLFYXPpxU0:MOVIE