僕らのミライへ逆回転 (監督:ミシェル・ゴンドリー 2008年アメリカ映画)


発電所で電磁波を大量に浴びまくったジェリー(ジャック・ブラック)は、何故だか"電磁波人間"となり顔見知りのビデオレンタル店のビデオテープの中身を全部消してしまう!困ったジェリーは友人のレンタル店店員マイク(モス・デフ)と二人でビデオカメラを担ぎ、人気映画を次々とリメイクしてゆくが、なんとそれが町中で大評判!図に乗ってビデオを作りまくる二人だったが、レンタル店は町の再開発で立ち退きの命令が来ていた…。PV界の異才であり『エターナル・サンシャイン』等の映画監督も務めるミシェル・ゴンドリーの送るコメディ・ドラマ。

しかし発電所で高圧電流浴びて死ぬことも無く"電磁波人間"になるとかいう有り得ない設定が既にインチキ臭くて可笑しい。タイトルやこの設定から最初はSFドラマなのか!?とも思ったが、出来上がった作品はとても感動的な「映画愛」の物語だった。そもそも客のリクエストで映画撮るって言っても、作っている間はレンタル屋閉めなきゃいけないし、そのセットやらなんやらはいつ調達してるのか、撮影している時間はたいしてないだろうにどうやって本数稼いでいるのか、ジェリーって仕事していないみたいだけどナニモノなのか、など疑問点の多いかな〜り行き当たりばったりの脚本なんだが、そんなことよりもチープなりに工夫を凝らして映画を撮っている最中の映像がひたすら楽しい映画なのだ。

チープだけれどもアイディアのいっぱい詰まった手作り感覚溢れる映像を作るジェリーとマイクは、これまで様々なユニークなPVを作ってきた監督のミシェル・ゴンドリー自身が投影されているのだろう。ミシェル・ゴンドリーの映像は《DIRECTORS LABEL ミシェル・ゴンドリー BEST SELECTION [DVD]》というDVDで観る事が出来るが、カラフルでポップなセンスもさることながら、そのアイディアを映像化する為の手間隙を決して惜しまない監督であり、どの作品を見ても「よくもまあこんなものを作ったもんだ」と唸らせられてしまう。しかしミシェル・ゴンドリーでさえ丹念に時間を掛けて撮っているであろう映像を、たった1時間余りで作り上げてしまう劇中のジェリー&マイク・コンビは、実はメチャクチャ才能がある連中なのかも知れない!?

そしてこのビデオが町中の注目を浴び、それに応えるべく次々と映画を撮ってゆく主人公二人だが、しまいには町中の人まで巻き込み、人々はそれに嬉々として参加してゆくのだ。ここではアフロ・アメリカンを中心とした町の小さいけれども暖かいコミュニティの様が描かれてゆき、実に心温まる人間ドラマとして物語は発展してゆく。映画作りに参加し、そして自分達の携わった映像を目を輝かせて観る人たちの表情は、驚くほどに美しい。それは《映画》というものを作ること、そしてそれを観ることへの愛に他ならないのだと思う。そして映画で描かれるこの人々の輝く表情は、即ち映画を愛する様々な人たちの、映画を楽しんでいるときの表情に他ならないのだ。

そう、難しいことやややこしいこと、偉そうなことを言いたくて人は映画を観ているんじゃない。映画を観ることが楽しいのは、それは、そこに"驚き"があるからだ。その驚きとは、世界をもう一度新鮮な眼差しで見つめることができるということだ。人が何故映画を愛し、映画を見続けるのか。そんな、映画を観る原点に立ち返らせ、考えさせてくれるという意味で、この映画は素晴らしいひと時を観るものに与えてくれるだろう。

ちなみにこの映画の影響なのか、映画の自家製リメイクが流行っているらしく(映画中の呼称にちなみ"スウェーデッド"と呼ばれるらしい)、こんなHPでいろいろな作品が紹介されている。興味の沸いた方はどうぞ。
Sweded Films (and Movies)
(※これはその中の一作、「Indiana Jones and the Sweders Of The Lost Ark」。くだらないっす!)

僕らのミライへ逆回転 オリジナル・ポスター集