オレ的作家別ベスト5・第2回 ベスト・オブ・スティーヴン・キング!


作家別ベスト5、今日は《ホラー小説の帝王》、スティーヴン・キングでお送りします。例によって以下にWikipediaから抜粋した全著作リストを挙げてみます。この中で””が付いているのが未読のもの。ただでさえ分厚く長くリリース量の多いキング小説、1作が上下2巻なんて当たり前。『IT』の全4巻とかいったいなんなんだよ全く…。そんな中で《ダーク・タワーシリーズ》は全て未読です。全7巻て…。この先読むかどうかも定かではありません。あとスーパーナチュラル要素のないホラーや普通小説もあまり読んでいません。だから有名な『ミザリー』や映画化作品の多い中篇集『恐怖の四季』の4作も読んでないんだよなあ。ではそんな中から選んだキング小説ベスト5は?


【長編】
キャリー(1974, Carrie )
呪われた町(1975,'Salem's Lot )
シャイニング(1977, The Shining)
ザ・スタンド(1978, The Stand)
デッドゾーン(1979, The Dead Zone)
ファイアスターター(1980, Firestarter
クージョ(1981, Cujo )
ダーク・タワーシリーズ(1982〜2004, The Dark Tower)
・第一巻「ガンスリンガー (The Gunslinger)」(1982)
・第二巻「運命の三人 (The Drawing of the Three)」(1987 「ザ・スリー」改題)
・第三巻「荒地 (The Waste Lands)」(1991)
・第四巻「魔道師と水晶球 (Wizard & Glass)」(1997 「魔道師の虹」改題)
・第五巻「カーラの狼(The Wolves of the Calla)」(2003)
・第六巻「スザンナの歌(Song of Susannah)」(2004)
・第七巻「暗黒の塔(The Dark Tower)」(2004)
クリスティーン(1983, Christine)
ペット・セマタリー(1983, Pet Sematary)
タリスマン(1984, The Talisman ピーター・ストラウブと共著)
人狼の四季(1984, Cycle of the Werewolf「マーティ」改題)
IT-イット-(1986, It 映画『IT』原作))
ドラゴンの眼(1987, The Eyes of the Dragon)
ミザリー(1987, Misery)
トミーノッカーズ (1987, The Tommyknockers)
ダーク・ハーフ (1989, The Dark Half)
ニードフル・シングス(1991, Needful Things)
ジェラルドのゲーム(1992, Gerald's Game)
ドロレス・クレイボーン (1993, Dolores Claiborne)
不眠症(1994, Insomnia)
ローズ・マダー (1995, Rose Madder)
グリーンマイル(1996, The Green Mile)
デスペレーション (1996, Desperation)
骨の袋 (1998, Bag of Bones)
トム・ゴードンに恋した少女 (1999, The Girl Who Loved Tom Gordon)
アトランティスのこころ(1999, Hearts in Atlantis)
ドリームキャッチャー(2001, Dreamcatcher)
ライディング・ザ・ブレット(2000,Riding the Bullet)
ブラックハウス(2001, Black House ピーター・ストラウブと共著)
回想のビュイック8(2002, From a Buick 8)
コロラド・キッド(2005, The Colorado Kid)
セル(2006, Cell)
リーシーの物語(2006,Lisey's Story)


【短編集】
深夜勤務
トウモロコシ畑の子供たち
骸骨乗組員
神々のワードプロセッサ
ミルクマン
いかしたバンドのいる街で
ヘッド・ダウン
第四解剖室 
幸福の25セント硬貨 



【中編集】
ゴールデン・ボーイ(春夏編)
スタンド・バイ・ミー(秋冬編)
ランゴリアーズ
図書館警察


【ノンフィクション】
死の舞踏(1981, Danse Macabre )
小説作法(2000, On Writing: A Memoir of the Craft )


リチャード・バックマン名義】
ハイスクール・パニック(1977、Rage)
死のロングウォーク(1979、The Long Walk)
最後の抵抗(「ロードワーク」改題)(1981、Roadwork)
バトルランナー(1982、The Running Man)
痩せゆく男(1984、Thinner)
レギュレイターズ(1996、The Regulators)

《1位》呪われた町

呪われた町 (上) (集英社文庫)

呪われた町 (上) (集英社文庫)

呪われた町 (下) (集英社文庫)

呪われた町 (下) (集英社文庫)

キング小説で一番最初に読んだのがこの『呪われた町』であり、そしてこれがオレにとって最も面白く恐ろしかったキング小説だったんです。アマゾンリンク見て貰えると分かりますが、これ、発売日が1983年の5月と6月となってるじゃないですか。要するに上下巻が別々に発売されたんですね。上巻を発売日に書店で手にし、これまでどんなホラー小説でも味わったことの無い未曾有の恐怖物語をとり付かれたように読んでしまったオレは、「ぐああああああ!この後いったいどんなになってしまうんだああああああ!!!!」と狂乱のまま1ヶ月も下巻の発売を待たねばならなかったのです!この小説のオレの評価が高いのは、あの1ヶ月の焦れに焦れた毎日、そうしてようやく下巻を手にしたときの狂喜が加味されていると言ってもいいでしょう。物語はよくあるようなヴァンパイア・ストーリーを換骨奪胎して現代に新しく蘇らせた、キングのストーリ−テラーの超絶振りが最も見事に生かされている作品だと思います。一つの町があたかも死病に冒されたように、吸血鬼の牙によってじわじわと、しかし確実に崩壊してゆく様が、非情ともいえる筆致で語られてゆきます!ホントに怖いんだから!怖いけど読め!読みやがれ!

《2位》ファイアスターター

ファイアスターター (上) (新潮文庫)

ファイアスターター (上) (新潮文庫)

ファイアスターター (下) (新潮文庫)

ファイアスターター (下) (新潮文庫)

あああ…これもコワ〜イお話だったなあ…。《ザ・ショップ》と呼ばれる政府の謎の機関による新薬実験を受けた夫婦に発火現象を起こす超能力を持った女の子が生まれちゃうんですが、ある日母親は《ザ・ショップ》に殺害され父娘は逃亡の旅に出るんですな。逃げても逃げても執拗に迫ってくる《ザ・ショップ》の冷酷無比な工作員がまずコワイ…。娘を守ろうとする父親がどんどんボロボロになってゆく様がもう哀れで哀れで、その救いの無さがまたコワイ…。そして全てを焼き尽くし灰燼に変えてしまう強大な能力を持ちながらそれを使うことを禁じられた幼い女の子が、お父さんと二人辛く惨めな逃避行を続け、そして最後の最後に…ああああこれがもう読んでいて体が氷付いちゃうぐらいに恐ろしいカタストロフが待っているんですよ!所謂”恐怖”というよりも、延々と続く”不安”で読む者をがんじがらめにする優れたホラー小説でした。面白いよー。

《3位》不眠症

不眠症 (上)

不眠症 (上)

不眠症 (下)

不眠症 (下)

老い先短い爺さんが不眠症の果てに見た異様な光景。それは町を歩く人々の体からオーラのように立ち昇る光の渦、そして人の命を奪ってゆく小人の影だった…。ホラーというよりもダークファンタジー的色彩の濃い作品でありますが、生命というものの神秘、死というものの謎に具体性な形を与え、それをサイケデリックなビジョンで描き出した想像力が圧倒的なんですわ。そして爺が主人公なだけに常に死というものを考え、死に相対している自分を意識し、人は何故生きて、何故死ぬんだろう、とどこか崇高で哲学的なテーマがここにはあったりするんです。それは人一倍怖がりでヘタレなキングが、最も恐ろしいものである”死”というものを考えた末に生み出された物語でもあるのでしょう。終盤、抗えないはずのその”死”と戦おうとする主人公の爺の姿は感動的ですらあります。キング後期の最高傑作だと思う。

《4位》デッドゾーン

デッド・ゾーン〈上〉 (新潮文庫)

デッド・ゾーン〈上〉 (新潮文庫)

デッド・ゾーン〈下〉 (新潮文庫)

デッド・ゾーン〈下〉 (新潮文庫)

交通事故で植物状態だった主人公が奇跡的に目覚めると、体は言うこと効かないし、かつての恋人は結婚しちゃってるし、なんだか予知能力が芽生えたようだけど、そのお陰で逆に嫌な思いばかりして、もう弱り目に祟り目という悲惨なお話ですな。おまけに大統領候補が核戦争を起こす予知を見ちゃって、「えええ!?オレがこいつやっつけないといかんの!?」と理不尽な運命にどこまでも翻弄される、あまりに不憫なホラー小説であります。所謂不幸の下降スパイラルをジェットコースターよろしく加速しながらどんどん転げ落ちていってしまうという、読むも涙、語るも涙、どこまでも人間サンドバック状態の主人公が哀れすぎて心を打ちます!クローネンバーグの映画化作品も良い出来でしたよう。

《5位》骨の袋

妻の死で悪夢で幽霊話なんですがね。キングにしてはしっとりと語られていてなかなか雰囲気がいいんですよ。でまあ読んでゆくと…うぎゃああああ、そりゃないだろッ!と思わず本のページに絶叫したくなるような悲劇が起こりましてですね…あれはショックだったわあ。別に怖い話も面白い話もいらないから、あの悲劇は無かったことにしてくれよお願いだよキングよお…と言いたくなってしまった位でありました。でもその強力なインパクトがこの小説をいつまでも記憶に残しているわけですから、フィクションというのはある種罪作りなものでありますね。

なおスティーヴン・キングについてはオレの日記の《スティーヴン・キングの“不安の立像”〜『リーシーの物語』序》でも触れているので、興味の沸いた方はご一読を。