ヘルボーイ:プラハの吸血鬼 / マイク・ミニョーラ

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当初クトゥルー神話+ナチスドイツ+ハードボイルド超常現象探偵といった盛り込みようで始まった『ヘルボーイ』は、次第に世界の伝承、伝説、民話、神話を織り込んで、カール・グスタフユング唱えるところの”集合的無意識”の世界をヘルボーイが彷徨うかの如き物語へと変化してゆき、それ自体が一つの神話が生成されてゆく過程を辿ってゆくという、驚異に満ちた展開をみせていた。しかし今回の『ヘルボーイ:プラハの吸血鬼』は、その新たなヘルボーイ・サーガの中休みと言うことか、幾つかの短篇で成り立っている作品集である。
なお今回は作画としてマイク・ミニョーラ本人だけではなく、P・クレイグ・ラッセル(プラハの吸血鬼)、リチャード・コーベン(マコマ)らが参加している。どうやら映画『ヘルボーイ』の製作でミニョーラ自身が多忙なせいなのらしい。そしてこのリチャード・コーベン描くところの「マコマ」が素晴らしい。アンドリュー・ラングの童話からインスパイアされたとミニョーラは語っているが、アフリカを舞台に、全ての生命と大地の起源を描いたこの神話物語は、これがヒーロー物のコミックであることすら忘れてしまいそうな深淵なる暗喩に満ち満ちている。他にも「醜女の魔女」の静謐さの中で語られる呪いと絶え無き想いについての物語はいつまでも心に残ることだろう。あー、映画『ヘルボーイ2』早く観てえ。