ジャズを聴く。

実はここん所暫らく、ジャズばかり聴いている。ジャズというのは今までずっと避けてきたジャンルで、半ば退屈・半ばよく分かんない、あとジャズってなんか気取ってねーか?ムッキーッ!という理由からだったが、数枚のジャズアルバムは何故か持っていた。マイルス・デイヴィスである。

もう20年以上前、FENあたりのラジオ番組でたまたま耳にしたマイルス・デイヴィスの音に魂も凍らんばかりの感銘を受け、すぐさまレコード店に足を運び買ってきたアルバムがあった。当時ロック・ミュージックばかり聴いていたオレにしては有り得ない行動だった。そのアルバムこそ、あまたのジャズ・アルバム・ベストで常にナンバーワンの座を保ち続ける名作《カインド・オブ・ブルー》だった。この静謐と緊張はオレの知っている”ジャズのようなもの”の音を超えた”何か”だった。

ジャズという音楽を言い表すボキャブラリーの無いオレではあるが、言葉足らずを承知で表現するなら、オレが知っていた”ジャズのようなもの”の音は常に”走って”いたし”乗って”いたが、《カインド・オブ・ブルー》の音はどれも”止まって”いた。”ジャズのようなもの”の音の持つ賑やかさやパッション、ダイナミズムではなく、音響そのもので構築された未来的なオブジェを眺めているような静的な緊張感を孕んだ感銘があった。

後に他のマイルスの音源を漁ってみたが、このような音世界を持っている作品は他に見当たらず、まして他のジャズ・アルバムにも存在していなかった。ジャズというジャンルの中でも唯一無二の音、それが《カインド・オブ・ブルー》だったのではないかと思う。勿論ジャズの門外漢の人間が言っている話なので、ファンの方には鼻で笑ってしまうような物言いだとは思うのだが。ただ、ジャズを知らないし理解力の無いオレでさえここまで引き込まれたこの音は、やはり、ジャズを超えた”何か”であったという確信は強くある。そしてそれだけ強力な音であるからこそ、ジャズのオールタイム・ベストで常に上位をキープし続けているのだろう。

結局、オレにとって理解の出来たジャズ・アルバムはこの《カインド・オブ・ブルー》一枚であり、学習と食わず嫌いを避ける為買った他のアーティストのジャズ・アルバムは、ピンと来ないまま長らく押入れに仕舞われていた。しかし最近押入れ整理であれこれCDを取り出し、その中から昔買ったジャズアルバムを何とはなしに聴いてみたら、これが、結構、いやかなり、いいではないか。つまり、オレは、数十年掛けて、やっとジャズなる音楽を聴く耳が出来たと言うことらしいのである。

これには長らく聴いてきたクラブ・ミュージックの影響も強いと思われる。クラブ・ミュージックには、なにも電子楽器を多用したテクノやハウスばかりではなく、ジャズ的なアプローチのダンス・ミュージック、即ち《クラブ・ジャズ》なるジャンルが存在し、これらのジャンルが交じり合いながら、クラブでDJプレイされることは良くあることなのだ。最近のお気に入りだったジャイルズ・ピーターソンもそういったクラブ・ジャズのDJだったりしたし、こういった音をよく耳にするようになったが為に”ジャズのようなもの”の音に抵抗がなくなってきたのだろう。

というわけで最近聴いているジャズ・アルバムをピックアップ。ジャズは歴史も古く、個々の作品の評価が既に定まっているジャンルなので、作品のセレクトはさして難しく考えずに、いわゆるジャズ・ベスト10なり100なりの作品を上から聴いていっただけの話であり、”オレの薦めるアルバム”などというおこがましいものではさらさら無い。しかし何度も聴くにつけ、やはりジャズというのは枯れたジャンルなのかな、オレも歳を取ったのかな、となんとなく思えてくるのである。

Kind of Blue

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COOKIN-RUDY VAN GELDER RE

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Round About Midnight

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A Night at Birdland, Vol.1

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Art Pepper Meets The Rhythm Section

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Waltz for Debby

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Somethin' Else

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Blue Train

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SAXOPHONE COLOSSUS

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