ななさん

金曜の晩は会社の武闘派アブラダコ密教僧【う】と飲み。しかし武闘派アブラダコ密教僧ってなんやねん。あれよ、漫画『孔雀王』に出てくる如意棒担いでバケモノと血みどろになって闘う裏高野の修行僧みたいなやつね。1個の粒が野球の球ぐらいあるような数珠を首から下げてるようなイメージね。基本は頭が坊主で顔が凶悪なのね。こういうのがアクアスキュータムの20万のコート着て現れるんだからなおさら怖いわ。
で、酒飲みつつ【う】から香港裏社会とかイスラマバードの組織犯罪とかヤンゴンの非合法結社とかケイマン諸島でのマネーロンダリングとかラオスでのストリートファイトとかマカオで体験した銃撃戦とかパタヤで出会った薄倖の売春婦などの香ばしいお話を聞きながら盛り上がっておったわけだ(例によって100%脚色)。
さて夜も更けてお互いグダグダに酔っ払い(焼酎ボトル空けちまったわ)、そろそろ店出ようかと思ってふと隣の席を見ると、若い男がテーブルにお金を広げてしきりに首を傾げている。一緒に女の子と来ていた様だがその子は今トイレに行っているらしい。で、酔っ払いの我々二人は馴れ馴れしくその若い男に「どしたのー!?」などと声を掛けてみたのである。そして彼の言う所によるとこういうことらしい。
・一緒に来ている女の子は彼女というわけではないが結構長い付き合いである。
・食事や飲み代を奢ろうとすると「なんか魂胆があるんでしょう」と怒られる。
・割り勘にしようとすると「男の癖にせこい」となじられる。
・だから彼女のほうが出す金額を自分よりも少なめに見積もって貰うことにしている。
・その料金の比率は自分の中で自分7、彼女3の《ななさん》の割合と言うことに決めている。
・で、たった今今日の飲み代を精算してもらったのだが、これを《ななさん》に分ける計算にこんぐらがっている。
…ということらしい。そこで目を見交わすオレと【う】の頭の上には《めんどくせえ女と馬鹿正直な男》という言葉が電飾付きでふわふわと浮かんでいたのは言うまでも無い。それに今日び電卓ぐらい携帯電話に付いてんだろ。
なんだろなあ、オレの場合は奢るとか割り勘とかってその時によるし、きっちりそれぞれの料金を払う場合だって当然ある。酒なんかだと、相手が女子の場合だったら、どうしたってオレのほうが飲み食いする量が多い訳だから、会計は割り勘よりも少し多めに払うことにはしてるけど、そん時は2000円とか3000円とかキリの良い額で貰ってるな。細かい計算してもしょうがないだろ。まあ人それぞれだろうから《ななさん》で幸せにやってるならとやかく言う筋合いは無いけどな。
しかし料金の折半は男が多めで《ななさん》だろうけれど、この二人のパワーバランスは絶対女子のほうが《ななさん》で勝ってるよな…。