黒猫 (監督:スチュアート・ゴードン)

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エドガー・アラン・ポーの有名な短篇『黒猫』を題材に、ポー自身を主人公として、彼がどのようにしてこの物語を書くに至ったかを描くメタフィクション。監督のスチュワート・ゴードンは前回《マスターズ・オブ・ホラー》でしょーもない作品を撮っていた上に、『黒猫』という新鮮味の薄い題材で、まるで期待していなかったのだが、蓋を開けてみるとこれが結構よく出来ていた。原作の持つゴシック・テイストをそのまま映像化しただけなのかもしれないが、妙に奇をてらわずストレートに黴臭い時代の暗い物語を描いた部分に潔さを感じたのかもしれない。昔NHKで日曜午後なんかにこんな海外ドラマやってたよなあ、なんて途中まで思っていたぐらいだ。
しかし!安心してボケッと観ていたら中盤からドバドバ鮮血が飛び散り、ラストも思わぬグロさで、いい具合に予想を裏切ってくれるではないか!どれが現実でどれが幻想なのか区別の付かなくなった物語構成もいい。そして緊張感をギリギリ振り絞った後のあのラストもいい。なんだベタ褒めじゃん!いや、別に大傑作というほどでもないんだが、こういうオーソドックスな”幻想と怪奇の物語”もたまににはいいよな。