- 作者: 別役実
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1999/04/01
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 27回
- この商品を含むブログ (8件) を見る
そもそも妖怪なんぞというものは”雰囲気”とか”気配”みたいなもので、それに形や人格を与えたのが巷に溢れる妖怪像という訳なのだろうが、その”雰囲気”や”気配”から連想されるものが赤いのか黒いのか、丸いのか四角いのかなどというのは、それを感じた者の主観でしかないのだから、実はどんな形や名前があったって良いのである。更に民俗学的に言うなら伝承や禁忌に形を与えたものもあろうが、それもまたあくまでその時代や地域限定のものもあろうから、決してその妖怪の形が現代でも普遍なものである訳ではないはずなのだ。
そんな訳でこの『もののけづくし』だが、前回紹介した『虫づくし』のナンセンスさは少々弱まり、逆に既存の妖怪に別個の意味付けをしたり、ある種の事物に勝手に妖怪的な意味付けをしたりと、「ラベルの張り替え」遊びのような文章が今回のメインとなっている。だからよく読むと批評的であったり皮肉っぽく書かれていたりする文章もあって、『虫づくし』とはまた別の趣があって面白かった。