それはセンスがない

オレの会社は実は給料が現金払いで、今でも給料日になると給料袋というやつがやって来るんである。そして会社の趣味なのか、その中に必ず本や新聞のページからコピーされた、サラリーマン心得や一言処世訓のようなものが書かれた紙が入っているのだ。会社としてはこれでも読んで社員一同に向上心を持ち仕事に励んで貰いたいとでも考えているのだろう。まあそれはいい。オレは基本的に会社の方針に言いたい事など何もないからである。
それでだ。この間の給料袋に入っていたコピーがなかなかふるっていたのである。それは某新聞からコピーされた、「賃金低迷脱出見えず」とタイトルの付けられた記事だったのである。別欄には「冬ボーナスマイナス予測」という文字まで躍っているではないか。なるほど、世間はなにかと大変なのだろう。それは分かる。だがな。その記事を、わざわざ給料袋に入れる、というのは、一体いかなる意図の下に成された事なのであろうか。
はっきり言ってオレの会社の給料は安いのだが、オレはそんな事でああだこうだ言うほど恥知らずではない。そういう会社にいるのだから仕方ないのだと納得している。しかしな。己が会社の従業員の給料袋に「世間も給料は安いんだよ」などと書かれた紙を入れて渡すセンスというのはいかがなものなのであろうか。それはちょっと、ええと、なんというかかんというか、ナニのソレのコレなんじゃないのかなぁーーーって、思っちゃったあたしなの!エヘッ(はあと)!
オレは自分の会社のナニのソレのコレなことをネット上でアレのコレのソレのと書くことはしない主義であるが、今回はさすがに呆れ果てて、気の抜けた笑いが洩れてしまったのであった。その時の笑い声というのは、水木しげる大本尊の描くしょぼくれサラリーマン・山田氏に倣って、当然「ふはっ」なのであった。ふはっ。

水木しげるのニッポン幸福哀歌(エレジー) (角川文庫)

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