■オオシマさんちのもうひとつの猫日記/大島弓子
漫画家
大島弓子が飼い猫たちと過ごす日々を描いたコミック『
グーグーだって猫である』に登場する猫たちを作者自ら撮影し、その写真に短い物語を付けて作られた
猫写真集。大島の数篇の日記もあり。あのコミックの猫たちの現実の姿を見られるという意味ではファンには嬉しい贈り物となるだろう。ただ読んでみて思ったが、日常的な写真とそれに付けられた短いキャプション、日記、という形式って、今インターネットのブログを覗けばそれこそ掃いて棄てるほどあり、おまけにその中にはア
マチュアながらレベルの高い写真作品もUPされていて、それらをただで見られることを考えると、この薄くて小さな判型で価格が1890円という写真集はちょっとお高いんじゃないかな。当然ファン以外には意味の無い写真でもあるわけだし。今度『
グーグーだって猫である』が映画化されるけど、案外出版社がそれにあて込んで作ったもののような気がするなあ。
■累(かさね)巻之弐/田邊 剛
日本の三大怪談噺の一つ、『
真景累ヶ淵』をコミカライズしたもの。これは第2巻になるが、んんん?これで完結ってことでいいの?物語は、呪われた過去、闇に葬られた殺人、非業の死、おぞましい疾病、そしてそれに女の嫉妬と怨念が絡み合い、どこまでも暗くドロドロと語られてゆく。この救いようの無い陰惨さって昔の怪談の特徴だけど、それは今と違って家父長制度で個人の自由が無かったり、身分が違ったり、性別で下に扱われたりする部分の抑圧の重さが相当あるからなんだろうなあ。同じ物語を現代に移し変えてもここまで暗く嫌らしい話にならないような気がするな。それと第1巻でも思ったが、田邊 剛の絵はやはり素晴らしく表現力がある。壁に映る影がこんなに怖いマンガは初めてかもしれない。行灯から洩れた薄暗い光の醸し出す、室内や人の表情の陰影も実に巧みに書き込まれ、この陰惨な話をなお一層暗く冷え冷えとしたものに仕上げている。
■ベルセルク(32)/三浦建太郎
32巻出た。(以下ネタバレあり)入道雲のように巨大怪獣化したクシャーン帝国のバケモノ大帝とガッツ、ゾッドとの決戦から始まるが、いやこれどう収拾付けるんだ?と思っていたのに案外あっさりと弱点を見つけ出し決着をつけてしまう。このバケモノ大帝、続くグリフィスとのタイマン勝負でもやはり腰砕けで、なんだよ!あんだけ物々しく登場したのにこの
ありさまかよ!とちょっと拍子抜け。まあクシャーン帝国を映画『300』の如く蹴散らす鷹の団の活躍も見られたからいいか。それにしても無敵なヤツ同士という設定で戦わせるのって大変だよな。物語はこの巻で一応の一区切りが突いたみたいだから、次回からどんな展開に持っていくか楽しみです。次は来年の春ごろか…。