- 作者: 京極夏彦
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2007/07/01
- メディア: 単行本
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内容は幽霊や物の怪、そして”奇妙な話”としか言いようの無い話が集められていますが、「耳袋」の奇談には鬼面人を驚かすようなショッキングなものというよりも、何か薄暮のように朧で曖昧で不確かな、それこそ「幽(かそけ)し」という語感がぴったりな世界が広がっています。この時代というのは、人と自然はより近い場所にあり、自然はまだ十分恐ろしいものであったし、人は今よりも簡単に死んだし、突然の行方不明というのも結構あったんだなあ、ということが話の向こうから透けて見えてくるんです。そしてこのような人の”生”の曖昧さ不確かさが形を変え、”怪談”となったのではないかな、とちょっと思いました。
そんなですからこの『旧怪談』自体はそれほど”怖い”お話が収められている訳ではありません。寧ろ草木のような死生観を持った江戸時代の人たちの心の中を覗く、といった部分で、この「耳袋」は意味があるのではないかと思います。ちなみにネットでもこの「耳袋」の現代語訳を手掛けているサイトがあります。
■《耳袋〜江戸の奇談・怪談・異聞・逸話》
他にも文庫版で現代語訳が出版されています。
- 作者: 根岸鎮衛,志村有弘
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2002/07
- メディア: 文庫
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