Cubism In Concert - Live In Mexico City 2006 / PET SHOP BOYS


ペット・ショップ・ボーイズがアルバム『ファンダメンタル』発表後に行われたツアーのひとつである、2006年のメキシコ・シティでのライブ映像を納めたDVD。ペット・ショップ・ボーイズはロック・アーチストの中でオレが一番好きな連中だ。だがことライブに関しては、これだけのビッグ・ネームなのにも関わらずエンターテイメント性が薄いなあ、と思う。逆にそれはPSBがありがちなロック・コンサートを否定しているということでもあるのだろうが、それほど高くは無いコンサートチケットを買って会場に入っても、なんだか物足りない思いをして帰る羽目になってしまうのではないか。PSBのコンサートは1度だけ行った事があるのだけれど、少なくてもあの時オレはそんな風に感じた。
PSBのライブを表現する言葉に”シアトリカルな”というのがあるのだが、ダンサー達によって寸劇めいたパフォーマンスが演じられながら進行するステージは、クオリティが低いわけではないけれど、”コンサートライブ”を見に行った者としてはなんだかお行儀が良くて高揚感や熱狂度が足りないのだ。しかも、彼らのお好みのスタイルであるシンプルなビジュアルが仇になり、大ホールにしては随分簡単すぎる書割の前で、数人のダンサーがちまちま動いている、という貧相なものになってしまうのである。これでは会場の後ろのほうの人間は何をやっているのさっぱり分からない。
だがこのDVDでは当然の事ながらステージの模様を間近から撮った映像を見ることが出来、彼らがライブパフォーマンスで何を表現したかったのかがちゃんと伝わってくるようになっている。だから彼らのライブは実際の会場よりもDVD再生モニター越しの方が楽しめるという事になってしまうのかも。もともとロック臭さを全て否定した所から始まった批評的なアーチストだからこうなってしまうんだろうが、ちょっと本末転倒しちゃっているか?
読み返したらあんまりな書き方だったので追記。後半はさすがに盛り上がる。"Where The Street Have No Name"では金色のツナギを来たダンサー達が舞い"The Sodom And Gomorrah Show"ではメダルだらけのギラギラの軍服で登場し"It's A Sin"ではラメ入りのシルクハットとブラウスで歌い踊る。やはりギンギラにグリッター炸裂なゲイテイスト満載の演出のほうが盛り上がる。かつてはデレク・ジャーマン演出の耽美的なライブや半裸の男女が檻の中でくねくねと妖しく踊り狂うライブをやってきたPSBであるが、やはりゲイの香り高い演出が一番彼ららしいような気がする。そしてラストはゲイ賛歌"Go West"。PSBは年を経てもやはりバリバリにゲイのほうが素敵だ。