フランキー・ワイルドの素晴らしき世界 (監督:マイケル・ドース 2004年 イギリス=カナダ映画)

一言で言うと聴覚を失ったクラブDJがその障害を乗り越えて再びDJに復帰する、っていうお話だYO!映画では「実話に基づいている」と言っているけどあくまでフィクションなんで念の為。モデルは多分NYのクラブ「パラダイス・ガラージ」でプレイしていた伝説のDJラリー・レヴァンなんじゃないかな。ラリー・レヴァンも聴力が弱くてそのせいでクラブではかなりの大音響でプレイしてたっていう話がドキュメンタリー映画「MAESTRO」で言われてたような気がするな。

ええと舞台はスペインのイビザ島、クラブ・ミュージックを聴かない人には判らないかもしれないけれど、ここは言ってみれば”クラブ・ミュージック界の原宿”で、ヨーロッパ、特にイギリスの若者が卒業旅行なんかでよく訪れるリゾート地なんですよ。クラブ好きには有名な場所なんだが、ただなにしろ”原宿”なだけあってクラブのパーティはお子ちゃま向けなイメージがあるな。石野卓球なんかも「もう二度とプレイしたくない」なんて言ってた位だから。まあしかしなにしろ若さ弾ける皆さんが集っているのは確かで、セックス・ドラッグ&ダンス・ミュージック!の放蕩な臭いがプンプンしているのは確かだ!そんなクラブの花形DJフランキー・ワイルドも若者たち同様イカレまくった男で、いつでもどこでもコークで一発キメてはスコッチがぶ飲みしてエッチな事しているかなーり悪いオジサンなんだYO!チョイワルじゃなくてカナワルだ!そんなワイルドなワイルドおじさんが耳が聴こえなくなったからさあタイヘン!その後の絶望に満ちた日々から心機一転、読唇術を覚えそして再起を賭けた努力の日々が彼を待っていたんだ!

でもなあ、結局最後まで「有り得ネーよな」と思って観てしまったオレだ!例えば聴覚障害があっても活躍する事の出来たベートーヴェンでは、絶対音感というものがあり楽器がどのような音色を出すか全て理解し、楽譜を見ただけで音楽が聴こえてくる、というクラシックならではの背景があったればこそだけれど、クラブミュージックってもっとフィーリングありきの音楽じゃないですか。確かにデジタル制御されている音楽なので、デジタルデータを目視することの重要性はありますが、シンセサイザーなどで”音そのもの”を作る作業は聴こえないと無理でしょー。うーんその無理なトコロを可能にしたから感動を生むとか言われてもなあ…。主人公がのっけからお馬鹿まるだしなので、突然の悲劇に絶望的になられてもあんまり同情出来なかったしな。

ところで「そんなに無理しなくてもMIXしたCDをクラブでかけとけばいいんじゃない?」とか思われる方もいるかもしれないが、DJプレイというのもあれはあれで一つのライブだしインプロビゼーションな訳で、さらにその場の観客との場の雰囲気を読みながらプレイスタイルやセレクトする音楽も変えているんですよ。確かにハウス・ミュージックぐらいだと1曲1曲を繋げて行くスタイルでもOKなんだけれど、これがテクノになるとターンテーブルを3台使いさらに複数のレコードを同時に廻す事さえあります。こうなってくると選曲や繋ぎの上手さだけじゃなくて、いかに手元にある”音素材”から自分の音を組み立てていくか、というセンスとイマジネーションが問われるんですね。これがDJの良し悪しという事になるんです。

そんな訳で取り合えず映画の見所としては「前向きに頑張ればいいことあるYO!」という割とベタな所に落ち着くんではないかと。あと読唇術の先生がなんだかメッチャイイ女で、そして主人公とすぐデキてしまうのはお約束過ぎるのではないかと。クラブ・ミュージックがガンガンかかってて、ポール・ヴァン・ダイクやカール・コックスなど実在の有名DJがカメオ出演してたのが楽しいといえば楽しかった、そんな映画でしたYO!

■公式サイト:http://www.frankie-wilde.com/
フランキー・ワイルドの素晴らしき世界(原題:It's All Gone Pete Tong)トレーラー