スノウホワイト〜グリムのような物語 / 諸星大二郎

スノウホワイト グリムのような物語

スノウホワイト グリムのような物語

以前「トゥルーデおばさん〜グリムのような物語」として出版されたものの続編に位置する作品集。でも出版元は朝日ソノラマから東京創元社に変わっている。「トゥルーデおばさん」では諸星版「本当は怖いおとぎ話」といった展開で、諸星流の彼岸とも此岸ともつかない幻想的で朦朧としたあやしの世界が描かれていたが、この「スノウホワイト」では諸星も原作童話の料理の仕方が手馴れてきたのか作風が若干変わってきている。何よりネームが多い!諸星にしては絵が描きこまれている!テーマもバラエティに富み、余裕さえ伺われる。例えば「七匹の小ヤギ」「ラプンツェル」「とりかえっ子」はまんまSFだし、「小ねずみと小鳥と焼きソーセージ」は寓話だし、「めんどりはなぜ死んだか」「藁と灰とそら豆」は動物や無生物が繰り広げるにぎやかな法廷・探偵コメディ!「カラバ公爵」はなんと「長靴を履いた猫」をホラーにしたもので、これはグリムじゃないけど諸星先生乗っちゃったんだろうなあ。その中で童話の物語を変えずにそのまま漫画にした「漁師とおかみさんの話」は、現代でも充分通じるような寓意の篭もったお話。閑散とした浜辺、暗い空、遠く響いてくる海鳴り。このまま短編映画にしても美しいイメージと苦いメッセージでいい作品になりそうな気がする。チェコあたりでアニメにしないかな。表題作「スノウホワイト」はミイラ達が立ち尽くす地下納骨堂の奥深くでまるで生きているかのような死体となって横たわる白雪姫…といった出だしからホラーの匂いが…。