ワールド・トレード・センターの瓦礫を写す写真集:Aftermath: World Trade Center Archive

Aftermath: World Trade Center Archive

Aftermath: World Trade Center Archive

2001年9月11日。マンハッタンにそびえるワールド・トレード・センターにテロリストがハイジャックした2機のジェット旅客機が乗客もろとも突っ込み、数時間後、アメリカ経済を象徴するこの高層ビルは跡形も無く崩壊した。誰もが知る「同時多発テロ事件」である。
この写真集は、瓦礫と化したWTCの残骸撤去作業の様子を数ヶ月に渡って撮影したドキュメンタリーである。


政治的なことや人道的なことをここで書くつもりは無い。ただただひたすらおびただしい量の瓦礫が積み重なる光景と、破壊の持つ恐るべきパワーに圧倒されればいいのだと思う。破壊というものはそれを望む人間のある無しに関わらず、このようにいとも簡単に成されてしまうものであり、そして人間が形作ってきた文明というものの”カタチ”が、これほどまでに脆くあっけなく無価値な灰燼に帰してしまうその空虚さを、その無常さを、この写真から読み取れればそれでいいのだと思う。永劫に形の残るものなど無い。この廃墟は、我々の生活の裏側に横たわるもう一つの顔であると思うし、明日の我々の街では無い保証は無いし、そして世界のどこかで今起こっていることでも有りうるのだ。


ここに収められた写真は厳しい報道管制の中で許可を得て行われた唯一のものであるらしい。撤収作業に尽力する作業員達の姿にヒューマニズムの言葉をあてがうのは簡単だが、むしろ瓦礫から発見された、どういう意図の下に存在したか判らない大量の武器弾薬の数や、掘り起こされた1千万ドルの現金を抱えて記念写真を撮る作業員達のどうにも滑稽な映像や、どこかの町のスクラップ工場かと見間違えるほどの膨大なひしゃげて潰された車両の数などに、悲劇の中心点といった意味とは別の奇妙な非現実さを感じないだろうか。


■オフィシャルHP:http://www.phaidon.com/aftermath/index.html





■瓦礫から見つかった1100万ドルと一緒に記念撮影 ■残骸から掘り起こされた夥しい数の武器