ホステル (イーライ・ロス監督 2005年アメリカ)

良い子の皆さんコンニチハ!いつも愉快・明朗・健全・潔癖なボクが今日紹介する映画は、不愉快・陰惨・不健全・不潔なグチャグチャホラー映画『ホステル』だよ!アメリカからやってきて東欧をオンナ漁りして旅するゲロバカ外人たちが血糊と吐瀉物に塗れた廃ビルに拉致監禁され、日曜大工用品を上手に使ったおぞましい拷問プレイの道具にされちゃう、という、「♪世の中には ハッピーや ラッキーが いっぱいあるよね」というふざけた唄と真逆の絶望と死と苦痛に満ちた愉快痛快奇奇怪怪な絶叫ホラーだよ!ピチカート好きのオシャレな君にもお薦めしたいな!でも当日はゲロぶっ掛けても大丈夫な洋服を着ていったほうがいいかもね!ちなみに劇場では、上映から46分以内に退場すれば全額返金、その名も『嘔吐バックキャンペーン』を実施しているよ!(マジ)


…という訳で『ホステル』であるが。最初に言っておこう。


滅茶苦茶面白いぞおおおおッ!!!


…という事である。
いや実際、前評判はかなり高かったので期待はしていたけれども、残酷さ、グロテスクさの濃度の高さが強調されていたから、「とってもよく作られたスプラッターホラー」ぐらいの認識で観に行ったんである。確かに中盤まではおどろおどろしく展開してゆき、よくあるように「で、みんなブチ殺されちゃいましたとさ、メデタシメデタシ(はーと)」で御仕舞になるのかな、と普通に予想してたのね。ところが!終わってみると、これがなんと!近年稀に見る非常に良質のホラーサスペンスだった!いや、グロいことはグロいんだが。ただね、ホラー映画にありがちな「恐怖演出を徹底させたいばかりにストーリーが破綻していて」、「だらだらと恐怖演出をエスカレートさせているだけ」という部分が見られず(その破綻している所がまたホラーの面白さでもあるのだが)、特に後半はジェットコースターのように物語が爆走してゆく。


取り合えず前半は欧州買春旅行としけこむスケベしか頭に無いバカ白人たちが「うほっ!いい東欧」とばかりに女の子とウハウハしまくり、「いいなあー徹底的にサイテーな連中だなあ!こいつらが八つ裂きにされるのかあ、シメシメ!でもオレも東欧行ってみたい…」と楽しく観ていたが、中盤からスロバキアの陰鬱な情景が次第に物語をミステリアスな空気に包み込んで行き、それまでのお馬鹿な雰囲気から一転、緊張感がどんどん張り詰めてゆくんだよね。最初はタイを舞台に考えていたらしいんだが、スロバキアに変更したのは正解のようだね。荒廃した冷たい情景とヨーロッパの暗く重い歴史を感じさせる倦み疲れた町の様子が絶品。アメリカの片田舎がよく舞台にされるスラッシャームービーだが、ヨーロッパに舞台を移しただけでこれだけ意味的質的転換ができる所が面白い。


ここからのストーリーについては触れないが、なにしろ高まりきった緊張感を孕んだまま加速する後半の瞬発力が物凄い。ただブチ殺すだけのホラーなんではなく、伏線はきちんと張られ、定石を外した思わぬ展開に驚嘆させられ、ハラハラドキドキしながら怒涛のラストへと雪崩れ込む。しかしこのテンションの高さと展開の速さは絶対タランティーノの仕業だと思う。タランティーノのお陰で監督のイーライ・ロスは結構美味しい思いをさせてもらったんじゃないかな。監督作品として「キャビン・フィーバー」、製作として「2001人の狂宴」を観たが、変わったセンスをしている面白い監督だとは思ったけれど、こと緊張感ということになるとまるで感じなかったもんなあ。ま、それはそれとしても大傑作であることには変わりありません。こういった新しい監督でホラー映画が新しい地平を切り開いてくれるのは喜ばしい事です。


ちなみに劇場はシアターN渋谷、ここ前に「ホテル・ルワンダ」観た所なんだよなあ…。あ、虐殺という意味ではいっしょなのね…。


映画『ホステル』公式サイトhttp://www.hostelfilm.jp/