マイアミ・バイス (マイケル・マン監督 2006年 アメリカ)

往年の人気TVシリーズの映画化…ということなのだが、このシリーズは観ていないので特に思い入れもないのである。にも拘らず観てしまったのが何故だか未だにわからない。実は『リーサル・ウェポン』みたいなベタな警察アクションは結構好きで、なんだかそういう男汁溢れるドラマを期待したのかもしれない。


物語は南米の麻薬組織への潜入捜査を描いたもの。
冒頭ではマイアミのどこまでも続く平地にきらめく夜景、最新小火器に身を包んでヘリコプターで空を飛ぶ捜査官達の姿、そして人工的でオレにとっては非現実的なマイアミの街並み、さらには司法当局同士の疑心暗鬼など、何故か士郎正宗の「攻殻機動隊」と被り、逆にアメリカの官憲の持つ武力は近未来的でサイバーな領域に達しているのだなあ、と妙なことを思ってしまった。
あとマイアミは有名なクラブが多くて、そんなクラブの名前を冠したハウスMIXのCDなんぞもよく聴いていたから、行きたいわけではないが(ってかオレなんぞはドレス・コードではじかれるわな、こういう場所は)なんとなく興味深く眺めていた。


さてこれから面白くなるのかなあ、と思っていると潜入した麻薬組織の女幹部と主人公がラブラブになってしまい、暫く温くて甘ったるい描写に我慢しなければならない。さらにそれを知った組織の男幹部が嫉妬に狂ってどうのこうの…とドラマが急に生臭くなってくる。この辺もう少し割愛してくれたほうがテンポよかったのに、とオレなんかは思うが、逆に金!女!権力!これが男の野望!男の星座!なギンギラギンな男の生き様とかを描きたかったのかもしれない。


それにしても車、飛行機、船舶となんだかやたら金が掛かった車両がポンポン出てくるが、これも男の権力志向を垣間見せられているようなギンギラ度だな。だいたいマイアミ富裕層の豪奢なアパートだの街並みじたいがもうギンギラギンだからなあ。
後半は人質救出劇とさらにど派手な銃撃戦で見せ場を作ってくれている。この銃撃戦の射出音がたいへんリアルでよろしい。もはや戦争状態である。


でまあ、非情な別れと哀愁に満ちた男の背中がクライマックスで盛り上げてくれる…んだが、なんかなあ、これって豪華なVシネ?いや、劇場公開だからVシネじゃないんだが、そういう匂いのする映画ではあったなあ。なにしろ眩しいぐらいにギンギンのギンギラギンでしたからねえ。
コリン・ファレルは眉間に皺寄せまくって男臭さを強調しているがなんかパンツまで臭そうだし、コン・リーは悪くない女優だが何故東洋系の女性がこのキャラに抜擢されたのか最後まで良くわからなかった。(どうもデビュー当時から監督が惚れ込んでいた女優だったからと言うことらしいが)