パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト (監督: ゴア・ヴァービンスキー 2006年 アメリカ)

観てきました『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』。タイトル長いからP.O.T.C:D.M.Cと訳そう…ってやっぱり長いじゃねーか!んじゃ「パイ2」もしくは「パイパイ」ということで。


実は前作の『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』はそんなに好きな作品じゃなかった。いかにもディズニーランドのアトラクションを映画化しました!といった感じのファミリー向けなお行儀のよさがどうにも鼻に付き、観ていて少しも盛り上がらなかった。確かにシナリオはよく出来てたし演出も拙くはないし俳優も良かった、でももっと血と臓物と禍々しさが欲しいんだよ!などとディズニー映画に言っても仕方ないか。丁寧に作られてて破綻がないのが逆に詰まらなかったんだろう。そして何より長い。上映時間143分。ただ月光で骸骨/人間が切り替わるVFXはアイディアよかったし良く出来てたなあ。


そんなわけで続編のこの「パイ2」、実は全然期待していなかったのだが、なんかね、予告編がいい感じだったのですよ。ひょっとしてこれは、と勇んで観に行きましたが、ええと…いやあ、すんごい面白かったです!今回は上映時間が前作を超える151分、どうなる事かと思いましたが、なんだかあっという間でした!


1作目はれっきとした冒険活劇だったけれど、この「パイ2」は1作目よりファンタジーホラーの要素が強いんだよね。なによりもあのタコイカ船長と魚介類船員&カニ道楽風海賊船!そして真打ち、大海獣クラーケン!切り株みたいな巨大なゲソが海からわらわら現れる所なんざ、やんややんやの大喝采!しかも醜悪さも破壊力も抜群!ピージャクのキングコングなんて目じゃないっすよ!怪獣名鑑に殿堂入りさせたい王道の怪獣ぶり!おまえホントはクトゥルーの眷属だろ、と言いたくなるようなディズニー・ミーツ・ラブクラフトな邪悪さ!あわせてタコイカ船長とその海賊船を海の恐怖たらしめている”呪い”の在り方も実に練りこまれていて、結局この”呪い”の存在とその契約のルールが映画全体に派生しキーとなっていて実に面白いんだあ。そして物語がこの”呪い”の力を巡る三つ巴四つ巴の戦いになっていくところが話を大きく膨らませているんだよね。


それと前作からパワーアップしているのはスラップスティックな活劇の面白さとコミカルさの大盤振る舞い、というところかな。バスター・キートンもかくや、と思わせるような「おおっと!」と言いたくなるアクションが目白押し、よくもまあこんなに沢山のアイディアを、しかもこんなふざけたシチュエーションで、と思わせるようなシーンの連続です。人によってはお腹いっぱい、なんて演出だったりするかもしれませんが、オレはこういうノリの良さは好きです。


そしてやっぱりジョニー・デップ演じるジャック・スパロウ船長のユニーク過ぎる立ち振る舞い。あのクネクネした動作っていったいどこからきたんでしょ。あんなのが日常生活で隣にいたらちょっとイヤだが(…いや、案外面白いかも…)、映画世界ではきっちり存在感アピールしているもんなあ。一応スパロウ船長は主人公なんだろうが、映画では出ずっぱりって訳でもないんだよね。今作では半分はオーランド・ブルームの物語だし、彼が活躍しているようなもんだし。でもやっぱり作品のカラーはスパロウ船長がいてナンボなんだよな。冒険ありアクションありホラーあり怪獣あり、だけど、ジャック・スパロウ船長の物語である、というところで世界がきれいにまとまってしまう。キャラ立ちしてますねえ。


さて注意としてはこれは3作目への布石となる物語という事だな。まさかこの映画がトリロジーとして化けるとは思わなかったが、タコイカ船長、クラーケンとボスキャラ出した後で3作目では何を出してあっといわせてくれるのかが気になる。だってさらにもっと風呂敷広げなきゃ、3作目の意味が無いでしょ?タコイカ船長とカニ道楽海賊船とクラーケンが合体して巨大ロボ化するのか?宇宙からオグドル・ヤハドの神*1が召喚されて降りてくるのか?やっぱりラストに登場したあの人か?女呪術師が言っていた「探索の旅」が次作の新たな冒険の舞台を示唆しているのか?チョウ・ユンファキース・リチャーズの出演もあるみたいですね。3作目公開は来年の5月とか言っていたが、早く観たいもんです。


なお前作からの登場人物が端役まで含めてかなり被ってます。前作公開から3年経っているので、DVDで一回予習復習してから観られたほうが断然楽しさがアップするので是非観直されてから映画館に行くことをお薦めします。なにしろ、1作目で「北を指さない壊れたコンパス」としか紹介されていないコンパスが、今回はこんな重要なアイテムになるとは!あとキーラ・ナイトレイは『ドミノ』の時のショートヘアが一番綺麗だと思ったなあ。美人ちゃん過ぎると逆に個性がなくなっちゃうものなのかも。オーランド君は珍しく男らしく振舞ってました。(実はオーランド好き。LOTRでも断然オーランド君だった…。)

*1:ヘルボーイに出てきた邪神。大ボス。なんでヘルボーイかというと、まあ、軟体系のボスキャラ繋がりということで。