うつうつひでお日記 / 吾妻ひでお

うつうつひでお日記 (単行本コミックス)

うつうつひでお日記 (単行本コミックス)

失踪日記」が空前の売れ行きを示し、奇跡のカムバックを果たした吾妻ひでお、「失踪日記」が出版されるまでに書き溜めていた漫画日記をまとめたものです。漫画日記とは言ってもただの日記ではなく、アル中治療と鬱病の狭間で仕事もなくただリハビリと同人誌出版の為に書かれていたという結構壮絶な日記です。ですが、悲壮感などは特に無く、ただ淡々と鬱と戦いながら時にはジョシコウセイの制服に妄想を膨らませる、お茶目なひでおオジサンの平凡な日々が書き綴られています。
なので吾妻ひでおファン以外には無意味な日記なのかもしれませんが、それとは別に、この日記を読みながら、オレははてななんかで見知らぬ方の日記を読んでいる時に感じる、「平凡かもしれないけれどこの人はここにいて、なんやかんやありながら生きているんだな」という奇妙な感慨を覚えました。だからねえ、毎日何も起こらず、日々図書館と家を往復して、朝も昼も大体似たようなものを食べて、漫画描いて、ちょっと鬱になって、なんだか昼寝して、…ということが延々繰り返されるにも拘らず、読んでいるこちらも淡々と読んでしまうんですよねえ。
びっくりしたのが吾妻さんの半端じゃない読書量。ジャンルはSFとミステリが多くて、小説も漫画も、多い時には一日二冊は読むとの事。短い感想しか書かれてはいませんが、吾妻さんが「これは面白い!」って言った本って、何故か読みたくなってしまう。漫画は付いていますが、短い文章で他人に読ませたくなるのって、これ書評として優れているって事じゃないですか。これ、ある種の書評本として読んでも面白いかもしれません。
ところで、「失踪日記」で好評を得た吾妻さん、出版社に続編を頼まれたらしいんだけれど、2006年6月現在、「1ページも描いてない」とのこと。ま、吾妻さんらしくていいんじゃないかな!