A君に何が起こったか?

会社のA君が防寒着を着て仕事している。
中に綿が入って襟元はふかふかのボアまで付いたやつだ。
日中26℃まで上がるという初夏のカンカンに照った日の下で。
真っ赤な顔して額の汗拭きまくり、ため息までついてるんだが…。
何だ何があったというのだ。
「どしたの?何この暑い時に厚着してんの。」
「作業着の上忘れてきてしまいましてー。」とA君。
「Tシャツで仕事してても別にかまわないよ。」とオレ。そんな社則ないんだし。
「いやー。上着着ないとまずいと思いましてー。」
A君は「○○でしてー。」というのが口癖だ。
「べつにいいよそんなの。」
「いやー。」
「暑くないの。」
「暑いっす。」
「じゃあ脱いだらいいじゃん。」
「いやー。」
オレの提言を頑なに拒むA君。これは彼の美学なのだろうか。
家訓、町内会の決まり、はたまた何かの信仰の荒行なのだろうか。
やっぱりあまり口を出してはいけないのだろうか。
それとも、自分を追い込んで極限の心理状態を楽しむ彼なりの”プレイ”なのだろうか。
うーん、あいつなら有り得る…。


そんなA君、最近どうも肌荒れ気味である。
「なんか顔ガサガサじゃねえ?」
「荒れてますかねー。」
「生活も荒れてるんじゃないのかよ。」と余計なお世話のオレ。
「実はいろいろありましてー。」
なんか訊いちゃいけないことを訊いてしまったような…。しかし面白いからさらに追い討ちをかけてみる。
「また妙なプレイに走ってるんじゃないのか。」
「してませんよ!」
「だって君、怪しいプレイ好きじゃない。」


「いや、金払ってるんだからお互い納得づくですよ!」


…Aよ、マジ答えすんなっつうの。
ってかそこまで訊いてないぞA。
それにしても、金出して納得づくでいったいどんなハードなプレイをしているんだAよ…。