アンダーワールド・エボリューション (監督レン・ワイズマン 2006年 アメリカ映画)

家族を殺したライカンへの復讐を誓い、闇の処刑人となった女ヴァンパイア、セリーン。しかし一族の統治者ビクターが家族を虐殺していた真実を知り、セリーンはビクターへの復讐を果たす。ついに同族からも追われる身となったセリーン。そんな彼女の唯一の味方はヴァンパイアとライカンの混血種マイケルだけ。2人は追っ手から逃れながらも、やがて両種族の創世にまつわる秘密と、セリーンの中に眠る封印された記憶の謎に迫っていくのだった。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=324197

アンダーワールド』の続編です。映画が始まって暫くは前作からの物語の続きが語られ、前作を見てない人はちょっと判り辛いかも知れませんが、一向に構いません。なにしろ前作をDVDで2,3回観ている筈のオレも、ちっとも筋覚えていなかったからです(おい)。兎に角ヴァンパイアとライカンは数百年にわたって仲が悪く、さらにそこに裏切りだの陰謀術策だのが絡んでドロドロになっている、ということです。ヤクザ同士の抗争みたいなもんだと思えばヨロシイ。でもこの物語自体にはそれほど魅力はありません。じゃあ何が魅力なのかと言うと主人公セリーンを演じるケイト・”いたち顔”・ベッキンゼールのパッツンパッツンのレザースーツ姿であります。これさえあれば他はもうどうでもよろしい、という映画であります。


このテのサイバーゴシックな井出達が魅力的なヒロインは『マトリックス』のキャリー=アン・モスなんかも思い浮かびますが、要するにコスプレ・アクションの楽しさ、ということなんでしょう。そういえばこの間観た『イーオン・フラックス』も同傾向な映画だったし、ミラ・ジョボビッチ主演で公開が控えている『ウルトラヴァイオレット』も同じような匂いがします。もはやケイト・”いたち顔”・ベッキンゼールの立ち姿の美しさだけでこの映画は成功なのであり、銃を乱射しまくるサイバーゴシックな姐さんは無敵である、というセオリー通りに物語が展開していればあとは満足なのであります。


でまあ、一応物語のことも書きますが、1作目の『アンダーワールド』同様、メリハリがありません。あとなんかラブ・ストーリーも絡んでますが、結構どうでもいいです。ヴァンパイアとライカンの抗争も、勝手にやってよ、という感じで、紆余曲折があるらしいその歴史も興味が沸きません。どうせこいつらバケモンだしなあ、と思うと、悲劇性が伝わってこない。やっぱり、物語を膨らませたいなら、生身の人間も登場人物として加えなければ共感を生みづらいと思うんです。


例えば1作目で一番よかったシーンと言えば冒頭の地下鉄駅での銃撃戦です。ここで、自分らのこの世界で、自分らの知らない闇の抗争が行われている、ということが知らしめられるから、観客は引き込まれると思うんです。しかしこの後展開されるのはバケモノ同士の権力闘争で、人間の我々は置いてけぼりにされてしまうのです。例えば同じヴァンパイアアクションの『ブレイド』ではハーフヴァンパイアである主人公の出自の悲しみや、コントロールの難しい自らのモンスターとしての側面を描いて悲壮感を感じさせましたが、これは観客には共感できるものだから、この映画は面白いものになっているんです。『アンダーワールド』にはそれが欠けているのだと思う。


と、ちょっとカライことも書きましたが、ケイト・”いたち顔”・ベッキンゼールのアイドル映画だからいいんです、そんなことは。舞台を1作目以前の時代に設定した3作目も作られるそうですが、きっとまた観に行くんだと思います。