露のあとさき・あるいはデスソース始末記

実は今日某所ではてなのオフ会などがあって参加するつもりであったが、体調が思わしくなくドタキャンする羽目になってしまった。
主催者ならびに関係者の皆さんには大変ご迷惑とご心配をお掛けした事をここにお詫びいたします。


体調不良の原因というのは先日に遡る。
以前買ったデスソース、”ちょい舐め”で辛さを確かめてはみたものの、まだ実際には使ってはいなかった。やはり食べ物にかけてこそペッパーソースは生きるのである。そしてペッパーソースの生きる食べ物といえばピザである。という訳で先日の夜ピザなんぞを注文したオレなのであった。
ところでピザ好きとして知られたオレであったが、最近あんまり食ってなかったのである。理由はピザ禁止令が出ているからである。ピザのような高カロリーのもんばかり食うのは成人病のもとだ、と止められているのである。そんな訳で最近はたくあんの尻尾とか一袋39円のもやしを湯掻いただけのものとか具の無い味噌汁とかナメタケの瓶に残った汁をご飯にかけて食ったりとかしてしのいでいたのだが、これはあくまでも成人病対策なのであって決してブライスやモモコなどのお人形を買いすぎてお金が無くなったから食費を切りつめているわけではないのである。今月はドール関係に2万突っ込んだオレであり、さらに昨日今日とアマゾンでモモコを二体もポチッと予約したオレであるが、人形狂いで身上潰している訳では決して無いのでその辺はご理解を願いたい。ちなみに最近買ったお人形の写真は今週三日間に渡ってUPする予定であるが、誰もそんなもの期待してないしそもそもオレの日記に何か期待している人間なぞこの日本にも世界にも宇宙にもよもや存在していないと思われるが、それでも一応告知しておくのである。


話が逸れた。
かくしてピザは届き、数週間ぶりの禁断の味覚を味わうべくオレは舌なめずりしていたと思っていただきたい。そして待ちに待ったデスソースをかける瞬間となったのである。
ペッパーソース使用の作法、それは一気呵成に勢いを付けてかけることである。一滴入魂なのである。「ぴと。ぴと。」などと女々しくちまちまかけているようでは辛い物好き、スパイシー・ハンター、ホット・マニアックスの名折れなのである。
即ちここでデスソースをピザにかけるときの掛け声は「ソイヤ!ソイヤ!ソイヤ!」でなければならないのである。男同士の汗と熱気がぶつかる喧嘩祭り、あのような勇壮な男らしさ、気風、魂、それらがペッパーソースをかけるときに求められているのである。そう、ペッパーソースとは祭り、祝祭空間、”ハレ”の場のスパイスなのである。
「どりゃああああああ!」
オレはかけた。男らしく。
いつもタバスコなら十滴はかけているであろう。だからこの時も十回ほどデス・ソースの瓶をふったのである。
そしてオレは何かが違う事に気が付いたのである。
思ったより多量にペッパーソースがかかっているのである。
どうやらデスソースの瓶の口がタバスコのそれよりも大きいらしいのである。
どう考えてもいつものタバスコの二倍はかかっている。
「…大丈夫かこれ。」
一抹の不安がオレの脳裏をよぎったが、今は”祭り”のときなのであり、躊躇などしていてはいけないのである。
「おっしゃあ!」
運を天に任せオレはデス・ソースのたっぷりかかったピザの一切れを口に運んだのである。
「……うがっ!!」
辛い。当たり前だが辛い。というか痛い。イタイことをして痛いのだからこれは当然の報いだ。
しかし予想以上の辛さである。
そこでオレはあることを思い出した。
今かけたのはデスソースの中でもかなり辛い「アフターデスソース」である。
これ、タバスコの10倍の辛さだといわれているのである。
さらに、倍の量かかったペッパーソース。
つまり、いつも使っているタバスコの20倍の辛さがオレを襲ったのである。
言ってみれば、今このピザにかかってるのは、タバスコ200滴分の辛さのペッパーソースなのである。
早くも脂汗は流れ出し、体からは血の気が引いてゆくのが判った。
しかし。ピザLサイズを食ったオレである。
この時オレは、「まあなんとかなるかも」とか言いながら、タバスコ200滴分のペッパーソースのかかったピザを食うのを続行したのである。


涙目だった、ということだけをお伝えしよう。
こんなに泣きながら食べ物を食べたのは、おねしょをしたのがばれて怒られ、泣きながら朝食を食った小学3年生のとある朝以来である。
最後の一切れは、食えなかった。いや、本当は食ったのだが、恥を忍んで白状するなら、ティッシュでデスソースを拭いてから食った。なんと食い意地の汚い男なのであろうか。
しかし、一応はやり遂げたのである。食い遂げた、と言ってもいいかもしれない。
「もう二度とすまい…」。オレはパソコン棚からオレを静かに見つめる綾波レイちゃんのフィギュアに誓いながら、一人そう呟いたのである。


そして翌朝。
思った通り腹の具合が悪い。ヤヴァイかもしれない。しかしオフ会の時間は朝の9時。取り合えず出かける。だが腹の具合は収まらない。電車には乗ったものの辛抱堪らなくなって途中の駅で降り、メールする。「すんません、行けません」。文字通り敗北宣言であった。


そしてこれが、オフ会ドタキャンの全貌だったのである。皆さん重ね重ね本当にすいませんでした…。