”おじや風ぶよぶよ煮込みスパゲティ・薄めたトマト味レシピ”

食い物の美味い不味いにあまり文句を言わない性質ではあるが、吐き気がするほど嫌いなものが一つある。それは茹で過ぎたスパゲティである。茹で過ぎた、というより、ことことととろーりとろりと煮込んでしまった、と云うほうが正確かもしれない。
とかく麺類は伸びてしまえば不味くなるものではある。ただ、汁がある分、誤魔化して胃に流し込んでしまうこともできるのだが、ことデロデロに伸びたスパゲティは汁の無い分、口の中での滞在時間が他の麺よりも長い為、その不味さを直に味わってしまうのだ。
伸びたスパゲティ。それは、”ふやけたスパゲティ”と云うことも出来るだろう。そもそも決められた茹で時間よりも若干短めの時間で茹でた硬目のパスタが好きなオレとしては、”柔らかい”と云うだけで顔をしかめてしまうが、この”ふやけたスパゲティ”というヤツぁ、”柔らかい”を通り越し、”ぐずぐずになった”という形容詞を与えたいような状態まで茹でられてしまっているのである。
こうなると、見た目自体もパスタではない。なにかうどん的と云うには中途半端ではあるがスパゲティと呼ぶにはあまりにも悪意のある太さをしている。色までが地中に住まう何かの虫の幼虫のような、病的な白さに感じてしまう。ぶよぶよとして、潰すとちゅうっと得体の知れない液を出しそうだ。
そしてこの”ふやけたスパゲティ”、箸やフォークで抵抗感も無くボロボロと切れてしまう。プツプツ、でさえない。その柔らかさ腰のなさは、デュラムセモリナで作ったおじや、もしくは蕎麦掻きのようだ。これを口に含むと、大量に水分を含んだ麺が咀嚼するまでも無く口腔内でぐぢゃっと溶けてしまい、絡んだソースがその水分で薄まった味になり、何かソースを水で希釈して飲み込んでいるような気持ちの悪い味と化すのである。
ああああ!だんだん書いていて胃がむかむかしてきたぞ!そもそも不味い、というのは、好き嫌いではなく食べ物として間違っている状態を指すのである。食べ物ではなく食べ物もどきなんである。そんなものを食わせる料理屋や弁当屋があったら即刻店は焼き討ち、お家断絶、家財没収、料理人は市中引き回しの上、裸にして大八車の車輪に縛り付け、味付け一つ無い形が無くなるまでどろどろに煮込んだパスタをバケツで出し、顔を突っ込ませて1ヶ月間無理やり食わし続けてやるのである。食い物の恨みは恐いのである。だからオレの会社の仕出し弁当屋は覚悟するべきなんである。

参考:「Daily portal Z/スパゲティの缶詰があった」http://portal.nifty.com/koneta05/11/14/01/