凶鳥《フッケバイン》〜ヒトラー最終指令〜 / 佐藤大輔

凶鳥“フッケバイン”―ヒトラー最終指令 (角川文庫)

凶鳥“フッケバイン”―ヒトラー最終指令 (角川文庫)

あおれんぢゃさん経由で。最初は「戦記物かあ」と思って食指が動かなかったのだけれど、あらすじを読んだら帝国ドイツ末期を舞台に「墜落したUFO」だの「ゾンビ兵士」だの「架空兵器」だの、あげくにツングースカ隕石とエイリアン・テクノロジーだのとB級の匂いをぷんぷんさせた言葉が出て来て読んでみる事に。いやあ、面白かったっす。軽く読み飛ばしてあとはすっきり忘れるってぇ類のお話しではありますが、いわゆる『痛快アクション物』ってことなんだからいいんじゃない?
作者は架空戦記物を多く書いている人なのかな。軍事、兵器関係の書き込みが緻密で、オレは興味ないしよく判らないんだけれど、逆にその過剰なデータ量がB級SFなお話しに奇妙な幻惑感を味付けしてるんだね。お話しはアメリカ60年代SFホラーの焼き直しみたいな感も無きにしも非ずだけれど、この奇妙なレトロテイストが第二次世界大戦の時代背景にうまくマッチしているのよ。あと騎士道精神とか勇気や献身とかが物語と登場人物の性格付けの主軸なんだが、この馬鹿馬鹿しいぐらいな単純さが独特の世界観を作っているよね。クライマックスの、聖剣を背に背負った主人公とそれを見送る修道院長とヒロインを、勇者を見送る枢機卿と王女というRPGのお決まりのシーンになぞらえた箇所では思わずニヤリとしてしまいました。また、架空兵器・全長10メートルはあるという『試作超重量戦車E-100・マウス』とロシア戦車旅団との攻防なんかも楽しかったですぜ。全体的なイメージは円谷プロ製作の特撮戦争映画ってところかな。