センサイ

よってたかって「フモさん、繊細だから」などと言われ当惑する。あのな、オレは下品な話しかできねえ酔っ払いの現場作業員なんだからな。キャラ違うっつーの。そもそも繊細なんざ刺身のツマにもならねえ。現実には何の力も持たない書生の戯言みたいなもんさ。
かつて詩人のアルチュール・ランボーは『地獄の季節』を初めとする天才的な詩篇を幾つもものしていたが、青年期を過ぎると武器商人となり現在のエチオピアへ渡り、本国へ送る手紙は「もっと資金をくれ」程度の味気ない電報文みたいな文章ばかりしかなかったという。オレはランボーのケツの毛ほどの存在でもないが、彼にもわかったのだろう、繊細で鋭敏な感性などしていても、現実には糞の役にも立たないということを。現実にまみれる事は、それは、生きて行く為にどうしようもないのだということを。