Oxide2x:オキサイドツーエックス / キム・ヒョンテ画集

Oxide 2x キム・ヒョンテ画集 (Beam comix)

Oxide 2x キム・ヒョンテ画集 (Beam comix)

PS2で今冬発売され、話題をさらったゲーム《マグナカルタ》のキャラクター・デザインを手がけた韓国最高峰のイラストレーター、キム・ヒョンテの最新画集が本作である。
はっきり言おう。ことゲームに関して、彼ほどの才能を持っているイラストレーターは日本に存在しない。絵の巧さ、デザインの巧みさ・バランスのよさ、もはや第一級である。恐るべし韓流である。
以前も書いたが、オレはスクエア・エニックスの、野村哲也のイラストが嫌いでしょうがない。ゴチャゴチャと装飾過剰で、コスチューム・デザインの引用はひねりも何も無いそのまんまで、どんなキャラクターも鈍重で動き辛そうな格好をしている。要するに、 だ さ い 。ださいならまだしも、あのセンスの無いイラストが日本の第一線のゲームメーカー、スクエニで売れ線ゲームの主要なキャラデザインとして使われているのが不思議でしょうがない。なんかさあ、「一生懸命頭を捻ってデザインしました」ってデザインなのよ。田舎臭いのよ。美しくないのよ。ガキにはこれでいいべさ、っていう妥協と人をバカにしたマーケティングをそのまま見せられているような気がするのよ。
まあ悪口はこの辺で、キム・ヒョンテだ。この画集は1999年から最新の2004年までの彼の作品が見られるが、彼が年を経るごとに少しづつ進化しているのが判る。
1999年の作品は才能はあるが凡庸に思う。まだ個性を探求中のように見えるし、なにより作品にシャープさがない。この程度のデザインなら日本にも幾らでも肩を並べるイラストレーターがいる。
2000年頃から才能を感じさせる絵が増えてくる。直線的なフォルムとディテールを持ったデザインの衣装が増えてくるのだ。また、色の面積の巧さを感じさせるのもこの頃からだ。白・黒・グレイ・ベージュを基本トーンとし、そこにビビッドな色の差し色がソリッドに使われるのだ。女性キャラの露出の多さ・体の線の誇張など、エロティックさが増えるのもこの頃からだ。
2001年頃にはもはやキム・ヒョンテ・スタイルが確立されてきたように思う。それ以前の直線的なデザインは影を潜め、逆に立体的なフォルムと美しく流れたなびく布の描写が増えてくる。そしてキャラクター達のこれぞゲームキャラ!って感じのキメポーズの楽しさもこの頃から増えてきている。
そしてそれ以後の活躍は言わずもがなだろう。コスチューム・デザインの装飾と省略のバランスが絶妙なんだわ。色数が多くないのもいいよね。韓国の伝統衣装・意匠にインスパイアされたデザインも多く見受けられるが、剽窃ではなくデザインの中にきちんと消化されているんだよね。だから微妙なオリエンタリズムはあるにせよ、オリエンタリズム自体が主題にされていないのよ。水墨画の影響もあると思うよ。で、もうなにより女性キャラが可愛いのよ。この有り得ないクビれた腰つき、果実のような乳房、肉感的な太股、いちオタク野郎としてもう堪りません。(いや、現実的には巨乳とか興味ないけどね、ね、←誰に言ってるんだ)
画集の中にはパソコンによるイラストの製作風景や、鉛筆による下書き原稿も掲載されています。もう、下書きの段階から、巧い。嫌になる位巧い。かつて美術をかじったことがある者としては、激しく嫉妬したくなるぐらい巧い。音楽を好きな人が、「このミュージシャンのように歌えたら・楽器が弾けたら気持ちいいだろうな」と感じるように、絵を書いた事のある者は、「このクオリティのイラストを描き上げられるのって、気持ちいいんだろうなあ」と思ってしまうんですよ。