クリオの男 / 木場功一

クリオの男 (イブニングKC)

クリオの男 (イブニングKC)

《クリオダイバー》。それは骨董品や美術品など物の中に蓄えられている過去の情報世界に潜る事のできる人の事を言う。
同じように《人の内面に隠されたもの》を描いたものなら、木場功一の『クリオの男』のほうが断然面白い。少なくとも木場の描く漫画には激情と煽情、そしてロマンとドラマがある。漫画の最終話、呪われた拳銃にまつわる大量殺戮と分裂し発狂してゆく魂の物語は、全てを血溜まりと瓦礫へと破壊しつくすが、最後は一筋の穢れない涙と共に爽やかにハッピーエンドを迎えるのだ。
なにより木場の漫画はどんなシチュエーションの漫画であっても幻想味強く描いてしまうから不思議だ。ある超絶的な腕を持つ殺し屋の少女とはぐれ者の警官とを描いた長編作品《キリコ》も、ハードボイルドアクションであるはずの物語がいつしか幻想的なマジックリアリズムな世界へと展開してゆくという奇妙な作品で、これはどう考えても作者が狙っている、というよりもこの作者の資質なんだろうな。それほど名前の聴かない漫画家ではあるが、オレのお気に入りの漫画家でもある。