刑務所の前(2) / 花輪和一

刑務所の前 (第2集) (Big comics special)

刑務所の前 (第2集) (Big comics special)

作者がかつて銃剣等不法所持で逮捕投獄された経験を描いた「刑務所の中」はベストセラーになったが、その逮捕されるまでの経緯を漫画にしたものが本書。…なのだが、どうも構成が変わっている。まず作者がどのようにして銃を手に入れたか、の一部始終。そして刑務所の中での瑣末な日常のあれこれ。そこまでは判るが、さらに、中世日本の、少女・成年女性・老婆3世代の女性達の宗教的精神的体験と、現実との相克を描いているのだ。この宗教説話とも取れるような物語がなぜこの漫画の中に取り込まれているのだろうか。善悪の彼岸についての物語であるからなのだろうか。恐るべきディテールと情報量(刑務所の部屋の構造、受刑者の日常、食事の様子などが全て再現されている!)に満ちた前者の描写には機械的で男性的な冷徹さが感じるけれども、中世日本の女たちの群像はとてもスピリチュアルかつファンタジックな表現が為されている。特に前半、病気になった少女を救う為に、登場人物の一人の女が神々の名を唱えながら山野を駆け回り加持祈祷するシーンは、素晴らしい精神の高みを感じた。とかいいつつオレ宗教興味ないけど。