ロマンスの無い

誕生日のプレゼントを渡す。「FUMOさんの言ってる事って面白いくらい照れ隠しばっかりで」と彼女。「でもあえてそこには触れず素直によろこんであげましょう」。馬鹿野郎。オレから照れ隠しをとったら何が残るって言うんだ。そもそも小娘が何言ってやがる。
何がいいのかよく判んないから、その辺のデパートで売ってるチョコレートを買ってあげた。昔彼女から何かのお礼で山ほどハーシーズを貰った事があったから、チョコぐらいなら食うだろう、と思った。他愛の無いもので形にも記憶にも残らないものを選んだ。3日もしたら忘れられているようなものを。
でも買い物した後書店に入ったら、ハップル天文台が撮った銀河系の写真集が目に飛び込んできた。衝突する銀河。爆発する超新星。湧き上がる暗黒星雲。そして、ブラックホールに飲み込まれ消滅してゆく星々。灼熱と絶対零度の狭間の映像。眺めていると魂を持っていかれそうなぐらい危険なほど美しい、数億光年も彼方の宇宙の果ての映像。「コリャ凄え」とか思い、これもプレゼントに追加する事にする。以前二人で酒飲んでた時に、太陽の直径の1万倍の大きさの恒星が宇宙に存在すんだぜ、訳わかんない大きさだよな、すげーよなーとか盛り上がってた事があったのを思い出したんだったのだった。(その後UFOとか臨死体験とかプラスティネーションとか、もうホント、ロマンチックさのかけらも無い会話で盛り上がった)あいつ、こんなの貰って嬉しかったのかなあ。