ヒストリエ1・2 / 岩明均

ヒストリエ(1) (アフタヌーンKC)

ヒストリエ(1) (アフタヌーンKC)

「エウレーカ」に続き、岩明均の古代エーゲ海文明を題材にした歴史コミック。エウメネスという、アレキサンドリア大王の側近だった男の数奇な運命を描く、ということなのだろうが、マンガの方はまだまだ序盤。結構な長編になると予想されるが、冒頭からペルシア帝国兵による拷問シーン、所変わってアリストテレスの登場、そして城砦都市カルディアを包囲するマケドニア重装歩兵の槍衾(やりぶすま)の大編隊、とこの時代の雰囲気を余す所無く伝える導入部がいい。そして物語は、豪商の息子、エウメネスの秘密の出生の物語へと語り継がれていく。
岩明均は計算された物語構成が非凡さを感じさせる優れた漫画家だ。漫画史に金字塔を打ち立てた問題作「寄生獣」の作者でもある。そして、今回の作品でも、ボロ雑巾のようにあっさりと死ぬ、“血の詰まった袋”でしかない人間の死の描写の冷徹さが凄まじい。