世界が今日滅びたってかまわない〜デイ・アフター・トゥモロー

いや、「地球が天変地異で大変だ!」って映画だというのはよく判るんですけどね、天変地異じゃどうしようもないじゃないかと。まして北半球が氷河に覆われ人類存亡の危機!って話みたいですが、氷河じゃしゃーねーじゃん。滅んでもいいじゃない人類なんて。何事も諦めが肝心ですよ。とか思ってたいして期待してなかったんですが。
そしたらこれが、結構面白かったんですよ!
極地で巨大氷塊が海に流れ出した事により海水の塩分濃度が変化し、それによって…ええと、何でだかよくわかんないんですが北半球は氷河期と同じ天候に見舞われるんですよ。大陸一個分はあろうかという巨大な低気圧の雲が出来上がり、その「目」と呼ばれる中心部分は摂氏マイナス110℃、あらゆるものが凍りつき生きる事を許さない死の領域と化すんですよ!ここに突っ込んだヘリコプターの油圧が凍り付いてヘリが次々と墜落してゆくシーンは怖かったなあ。あとロスアンジェルスだったかの巨大竜巻のVFXも凄かった。あれも怖かった。
いや、なにしろこういうお話なので、濃い人間ドラマなんて期待しちゃ駄目なんですが、それでもお話はうまく作ってたな。以前「パーフェクト・ストーム」というしょうもない映画見たときも思いましたが、物語はどうって事ないけど、あんな凄い高波のCG見れたからいいや、ああおっかなかったあ、って感じですか。ストーリーは気象学者の父が、ニューヨークに孤立した息子を救いに氷河の訪れた暴風雪のなかを強行軍してゆく、という話を父の側と息子の側から描く、という筋なんですが、これはこれでサバイバルストーリーとして悪いドラマではなかった。それに、エメリッヒの映画って配役がいいって言うか、見たことのない俳優だけどいい味出してる人を使うのがうまいと思うんだけどなあ。今回は若手俳優の顔が皆嫌味がなくて好きだった。
でもやっぱり主役は怪物じみた天変地異で文明が崩壊してゆく様を描くVFXですね。ニューヨークが高波に飲み込まれるシーンは楽しくて笑いそうになっちゃったもんなあ。圧倒的に絶望的な状況ってなんだか笑っちゃいたくなったりしませんか。多分思考停止しちゃうんだろうなあ。
あと好きだったシーンは、アメリカ政府がいよいよ国民に避難勧告を出す時に、北アメリカ大陸地図に真ん中ぐらいから線を引き、「ここから下の市民に避難勧告を」って言うシーン。「この上の市民はどうするんですか?」と問いかけるどこかのオブザーバーに、「もう手遅れです」という言葉が。要するに線から上は既に皆死んでます、ってことなんですね。カナダも入れりゃ1億人もいるのかな。その人数がたった一言で死の宣告されたんで何故かゾクゾクしました。というかこの映画世界では多分2、30億人ぐらいは簡単に死んでると思うんだけど。大虐殺だなあ。
もともとこの手のディザスタームービーとか人類滅亡テーマのSF小説とか好きでしたね。小松や筒井のSFなんてしょっちゅう人類滅亡してたもんなあ。「復活の日」とか「霊長類南へ」とか大好きでした。海外SFで好きな滅亡テーマSFはトマス・ディッシュの「人類皆殺し」。異星人が地球を家庭菜園にして自分等の好物の巨大植物を植えたために人間の文明が崩壊する、って話。最後は人間はアブラムシみたいに巨大植物の幹の中で樹液をチュウチュウ吸って生き延びるだけの存在になるの。この尊厳も何も無い無意味な絶滅のしかた、サイコーでした。
ローランド・エメリッヒ出世作インデペンデンス・デイ」が好きですね。というか大好きな映画ですね。なんですか、ラストの、敵の宇宙船に地球人の作ったコンピューターウィルスを流して敵宇宙人を混乱させる、というインチキすぎるオチは。あと、大統領自ら戦闘機乗ってUFO撃墜したりとかね。ホント馬鹿だよなあ。あの滅茶苦茶さが好きだなあ。なにしろ前半のクライマックスの巨大UFOの大虐殺シーンが好きですね。「私もUFOに乗せてって!」とかプラカード出してる頭の悪いオプティミストをまず形残らないぐらい焼き尽くす事から大破壊が始まるわけなんですよね。いいなあ。あの瞬間だけオレは宇宙人の味方だったなあ。って言うか地球なんて完膚無きまで滅ぼしてそれで終わり!っていうラストでも良かったかも!グレッグ・ベアの「天空の劫火」のラストの大破滅みたくね。
映画GODZILLAも、オレそれほど嫌いじゃなかったですよ。