Independant Intavenshan :The Island Anthology /Linton Kwesi Johnson ASIN:B00000DC4T

世の中には、夏になるとレゲエが聴きたくなる、というどうしようもなく単細胞な人間がいる。このオレである。ただ今風のダンスホール物は音が若すぎて付いて行けず、ルーツ・レゲエも明朗さが気恥ずかしくて、もっぱらダブ・ミュージックを聴いている。
ダブ・ミュージック。レゲエの歌を抜いたトラックに思いっきりリヴァーブかけたり、幾つかの音を抜いたり強調したり、妙なSEを入れたり、バランスを崩しまくってアシッドでドラッギーな音空間を作るというレゲエのスタイルの一つである。銭湯にアンプとスピーカーを持ち込んで、氷川きよし*1あたりを大音量で流したと想像してもらいたい。ウワンウワン唸るきよしのコブシ。反響しまくる純日本風演歌オケ。不気味じゃないですか。狂ってるじゃないですか。ダブとはこの狂った音空間を楽しむジャンルなんですよ。そもそも、今よくある“リミックス・バージョン”とかいうヤツはこのダブのスタイルを踏襲したもんなんですよ。
このアルバムはUKのレゲエ・アーティスト、リントン・クェシ・ジョンソンの何枚かのアルバムをコンピレーションしたもの。アルバム曲の普通のミックスの後にその曲のダブが聴ける様に編集してあるのが面白い。
リントン・クェシ・ジョンソンはダブ・ポエットとも呼ばれ、ダブの演奏に乗せてラップとはまた一つ違う唱法で詩の朗読をする。このスタイルはDJスタイルとかトースティングとか呼ばれ、ジャマイカのレゲエ・ディスコでダブをかけながら、DJがリズムに合わせて客を煽ってわめいていたのがはしりらしい。これも実はラップの原型なんですよ。
UKレゲエは80年代ニューウェーブの頃に開花したと言っていいでしょう。前後してスカ・ブームもあったしね。この頃だとマトゥンビとかスティール・パルスとかUB40とかアスワドとかが活躍してた。ジャマイカのレゲエと違い、UKレゲエはどこか暗くスモーキーなメロディーが特徴で、オレはジャマイカ物よりもこっちを愛聴していた。
リントン・クェシ・ジョンソンのポエト・リーディングもバックの演奏もどこまでもひたすらタイトでクール。このコンピレーションにも納められている彼のアルバム「Bass Culture」は演奏の巧さも含めレゲエ史に残る傑作のひとつです。

*1:こいつと誕生日3日違いなのが気になるんだが