VIVA!/ROXY MUSIC ASIN:B0000256VW

“VIVA!”はロキシー中期に発表された、1973〜1975年のコンサート音源を編集したライブアルバム。発表当時はロキシーのラストアルバムと公言されていた。演奏はスタジオアルバムよりもハードでアグレッシブ。何よりこの頃在籍していたエディ・ジョブソンのスピード感溢れるエレクトリックバイオリンの音色がスリリングで美しい!!オレ自身、数あるロキシーのアルバムの中でこのVIVA!はかなり好きだし、聴きこんだ1枚です。(う〜ん、1番好きなのはどれだろ、やっぱり´80年代的POPさと軽さが楽しいFresh+Bloodかな。Avalonって意外と好きじゃないんです)
やはりここでもハイライトは、ビニール盤ではB面1,2曲目にあたるM-6 "If There Is Something" ,M-7 "In Every Dream Home A Heartache"ですね。 "If There Is Something" はカントリー調に始まりながら突然転調して重く暗い曲調に変わりますが、この演奏はなんと10分以上も続けられます。「あなたのポニーテールの髪をサッと振って あなたがまだ若かった頃に 私を連れて行ってください」「丘はより高かった 木はより緑だった いつもあなたは歩き続けましたよね あなたが若かった頃に」。自分の愛する人の、より無垢だった時代を想像して、いっそう相手のことを愛しんでしまう、という内容なんでしょうか。でもこの曲はあまりにシリアスな演奏です。
そして"In Every Dream Home A Heartache"。このタイトルはなんと訳せばいいんでしょう、「全ての心の痛みの家」なのかな。
プールも付いた瀟洒な高級住宅。スイート・ドリーム・ホーム。しかし何故天国のように感じない?ここでできることといえば、ただ、祈ることだけ。歌詞は高級有産階級の虚無と孤独と絶望について歌います。
そして、この「夢の家に住む孤独な男」はある日、通信販売で『ビニール製の彼女』を買います。


私はあなたを通信販売で買いました
私のラッッピングされたベイビー
あなたの皮膚は塩化ビニール
完璧な伴侶
あなたは私の新しいプールに浮かびます
贅沢でそして、楽しい
膨らませて使う人形
私の役割は、あなたに役立つことです
使い捨てのダーリン
今あなたを投げ捨てることなんてできない
不死で実物大
私の息があなたの中に入る
私は毎日あなたに服を着せます
空気が抜けるまでそのままでいて
膨らませて使う人形
恩知らずの恋人
私はあなたを破裂させた
しかし、私は興奮しました

In Every Dream Home A Heartache(…訳詩あってんのかなあ)

変態性とフェティシズム!「今日も明日も無く、昨日しか残されていない」ヨーロッパ上流階級人たちの退廃と孤独。ルキノ・ヴィスコンティの映像を想起させるその歌詞。(でもフェリーはアラン・レネの『去年マリエンバートで』が好きだといっていた)日本人には縁が薄い世界ではありますが、オレはこの曲を聴いたとき、そのマニエリスティックな演奏と相まって、そのあまりに深いヨーロッパ的な絶望感の在り方に驚きました。
このロキシー版ゴスとでも名付けたくなるような曲はしかし、実は「プールに浮かぶビニール製のダッチワイフ」のことを歌ったのではなく、「ダッチワイフ並みに空っぽな(現実の)女」の暗喩ではないかという見方も出来ます。高級住宅で、愛も心も持たない女に奉仕するだけの生活。そしてそれはそれで恐ろしく虚無的な曲なのではないでしょうか。愛に悩み愛を欲するブライアン・フェリーの音楽。そんな彼だからこそ、およそ愛と呼ばれるものの対極であるような感情でさえも、このように鋭敏に表現することが出来るのではないかと思います。