ROXY MUSIC LIVE/ROXY MUSIC ASIN:B00009EIO7

ROXY MUSIC LIVE”はロキシー再結成後、2001年ワールドツアーの様子をまとめたもの。ちなみにエンハンストでビデオが見られます。再結成ロキシーにはあまり興味がなかったのですが、こうして聴いてみるとやはりいいものですね。演奏はソツなく職人技だし、選曲はロキシー・ミュージックのまさにベストといっていい選曲で、ファンにも初めて聴く方にも、お勧めできると思います。ある意味録音と演奏力に相当ばらつきのあるベスト盤を聴くよりも、安心して聴けるし。ただ、オールドファンとしては、再結成したことの明確なモチベーションが理解できないって事があって、“ロックスターとしてのロキシー”としては素晴らしいけれども、“アーチストとしてのロキシー”は期待できないんだろうなあと思ってみたり。ロキシーに限らず古いバンドの宿命みたいなもんで、同窓会になっちゃうんだよね、どうしても。あとロキシー現役の頃と比べたらやっぱりボーカルのブライアン・フェリーの声が衰えたなぁ。
アルバムでのハイライトといえるのはCD-1のM-6 "A Song For Europe", M-7 "My Only Love", M-8 "In Every Dream Home A Heartache" , M-9 "Oh Yeah!"、このあまりにもドラマチックな曲順でのパフォーマンスでしょう。ヨーロッパの没落を歌った "A Song For Europe"はロキシー初期の大傑作。「今日もない 明日もない 僕らに残されているのは 昨日だけ」と歌われる寂寞感溢れる歌詞の後、ラテン語とフランス語で再びフェリーさん悲痛に歌い上げます。そして暗く切ない恋の歌"My Only Love"に続き、やはりこれもロキシー初期の傑作であり問題作である"In Every Dream Home A Heartache"が美しいピアノの旋律とともに幕を開きます。この曲については後述します。さて重苦しい曲が続いた後に落ち着いた曲調の"Oh Yeah!"がはじまり、全てを夢だったみたい現実に戻してくれます。でもこれも「君とあの頃よく聴いていた曲がラジオから流れてきたよ」という歌詞の、切ない破れた恋の歌です。
CD-2はアップテンポの曲を中心に、ロキシー後期のHit曲が目白押しで、“ノリノリ”のロキシーが楽しめます。
M-2で ”Mother Of Pearl"が聴けるのが嬉しいですね。この曲は曲構成がちょっとドラマ仕立てっぽくて、前半の狂騒的なロックンロールがパーティ会場の喧騒、そして後半のしっとり歌われる愛する女性への賛美は、パーティが終わったあと、夜明けの街をとぼとぼ歩きながら、その女性のことを思い浮かべているフェリーさん、という情景が何故か眼に浮かんでくるんですよ。曲調も面白く、後半のまさにロキシー的マニエリズムとでも言いたくなるような延々と繰り返される同じ旋律、同じフレーズは、どこまでも終わることの無いような至福の高みへと誘ってくれます。そしてその至福の高みへと誘うのは、もちろん何度も繰り返される「あなたと取り替えられる女なんて何処にもいない」という歌詞のその愛する女性その人なのです。これ、考えようによっては前半が人生の”刹那”を表現していて後半が”永遠”を表現している、とも取れるんですよ。
破れた恋の歌が多い中で実に幸福感に満ちたこの曲は、ロキシー初期の曲の中でも白眉といっていい曲でしょう。この曲はロキシーの3rdアルバム「ストランデッド!」に収められていますが、ライブでの演奏が決して悪くは無いのですが、やはり変な効果音とかが入っていて音処理の面白い原曲を聴いてもらいたいです!