DIRECTORS LABEL スパイク・ジョーンズ BEST SELECTION

DIRECTORS LABEL スパイク・ジョーンズ BEST SELECTION [DVD]
この中で一番取っ付き辛かったけど、これは監督の目指す”ストリートなライブ感覚”をオレが理解するスキルを持ってなかったから、ってことなのだと思う。ただ逆にPVよりも同時収録されているドキュメンタリーが面白かった。落ち目になったラッパーの独白(What's Up FATLIP)、ロデオ大会に懸ける2人の少年(Amarillo by Morning)、そして妙に感動したのが、あるダンス・パフォーマンス・グループを描いた”Torrance Rises”。
Torrance=トーランスというのはこのDVDにも収録されているファットボーイ・スリムのPVに出演していたダンス・パフォーマンス・グループなんですが、これが知る人ぞ知る、というような人達では全然なくて、単に地方の創作ダンス教室の、本当に素人同然の市井の人たちなんですね。PVでは彼らがショッピング・モールみたいなところで警備員に注意されながら、彼らが作ったファットボーイ・スリムの曲のダンスを踊る場面をそれこそゲリラ的に撮影したものなんです。で、なんか才能とかあるのかと思ったら、これが本当にヘボいんです。ニューエイジ幻想から脱落したみたいな実に田舎モノな雰囲気の先生がまたイタいんです。振り付けなんかもう小学校の学芸会並みなんです。しかし。しかしなんですよ、ここがマジックなんですよ!PVが終盤になるほど、イタい先生とヘボい生徒たちの、そしてオレらと同じ何も特別でない人たちの、踊ってることの楽しさ、表現してることの楽しさが伝わってくるんですよ。見終わった後、妙に爽やかなんですよ。ヤラレタ!と思いましたね。監督はこれを描きたかったんですよ。
そして”Torrance Rises”ではこのヘボヘボ・ダンス・パフォーマンス・グループの出演したPVがMTVベスト・ミュージック・アワードで、な、なんと最優秀ブレイクスルービデオ賞、最優秀振り付け賞、最優秀ビデオディレクター賞の3冠を取ってしまう!という物凄いドキュメンタリーです!もちろんパフォーマンスあり!イタい先生、このハレの舞台でもダメダメで、何度もコケるわ、先生のクセして一人だけ振り合ってないわ、もうやってくれてます!でもやっぱり、なぜか感動するんです!
これって、なんだろうなあ、と思ったんですが、考えるに、これ、日本人の大好きな”けれん”なんですね。例えば高校野球みたいな。本当はこういうの大嫌いなんですが、今回は完全にハメられてしまいました。