「エレファント」

コロンバイン高校の銃乱射事件を題材にした映画。何名かの少年少女達を中心に据え、「彼らはこの日、どう過ごしていたのか」を淡々と描く。ただ、ドキュメンタリーではない。犯人の少年たちも描かれるが、映画からは「何故こんな事が起こったのか?」というジャーナリスティックな視点は意図的に完全に取り払われている。*1
つまりこの映画は、事件性そのものを描く事を放棄し、むしろ、「死」と隣り合わせになった青春期の輝き、翳りを描こうとしたのではないか。そういう視点から見るとこの映画は危うい美しさを持っているといえる。何より、ほとんど素人の現役高校生を使ったといわれる配役が素晴らしい。どの登場人物も実に瑞々しく新鮮なのだ。男の子も女の子も、皆、美しいとさえ言っていい。
この映画にはドラマもカタルシスも無い。エピソードじみたものさえない。登場する少年少女たちはありふれた日常会話をし、そして校舎をただただ移動するだけ。後半、事件がおこり、少年たちが校舎で人を殺し始めても、ショッキングというより虚ろな哀しさを感じた。青春期は本当は美しいというより実際暗くて惨めなものだと思うんだけど、そういったルサンチマンさえ映画からは取り除かれていたからね。
監督のガス・ヴァン・サントという人の作品は、青春期を描いたものが多いけれども、生真面目で洒落がわからなさそうな内容で、それほど食指が動かない。「グッド・ウィル・ハンティング」は名作といわれているが、なんかピンと来なかったし。この映画も、綺麗だが、面白かったというほどじゃなかったな。食い足りなかった。意図はわかるけど、この事件そのものを客観的に描いちゃまずいんじゃねえの。事件自体は具体的なモンなんだからさ。今度は誰か、「殺る側」か「殺られる側」かはっきりした視点で映画化してくんないかな。
オマケ。トレンチコート・マフィア日本支部によるコロンバイン高校の事件の真相。(洒落のわかんない奴とサブカル野郎は閲覧禁止との事)
http://home.interlink.or.jp/~i-burt/WARDEN/trenchcoat.html
そして殺された方々。
http://home.interlink.or.jp/~i-burt/WARDEN/trenchcoat2.html
「エレファント」公式HP:http://www.elephant-movie.com/elep_index.htm

*1:だから犯人の少年たちは事件前にボウリングをしたりはしない。