凍れるロシアで展開する南北朝鮮の壮絶なる諜報戦 / 映画『HUMINT/ヒューミント』

HUMINT/ヒューミント (Netflix映画) (監督:リュ・スンワン 2025年韓国映画)

映画『HUMINT/ヒューミント』は、南北朝鮮のスパイたちが、熾烈な諜報戦を展開するスパイ映画だ。舞台はロシア・ウラジオストク。韓国の諜報員チョ(チョ・インソン)と北朝鮮の工作員ゴン(パク・ジョンミン)は、北の情報提供者ソンファ(シン・セギョン)をめぐり、虚々実々の駆け引きを繰り広げていた。悲痛な思いと強大な犯罪の闇とが交差し、異なる国家に属する者たちの対立と共闘が、凄まじい緊張感を生んで爆走してゆく。監督は『ベルリンファイル』『モガディシュ 脱出までの14日間』などで知られるアクションの名匠・リュ・スンワン。

優れたスパイ映画であり、優れたアクション映画だった。主要人物3人の、それぞれに交差する思いに胸が締め付けられた。母の手術代を捻出するため韓国へ情報を流す北朝鮮人女性ソンファの苦悩。派遣先のウラジオストクで、かつての恋人だったソンファと出会い、彼女を守るため国家を欺こうとする北朝鮮工作員ゴンの葛藤。かつて情報提供者を犬死にさせたことから、上層部を無視してソンファの保護に奔走する韓国諜報員チョの悔恨。それぞれが已むに已まれぬ理由を持ち、許されない造反をひた隠しにし、己の大切な存在を守ろうと命を賭ける。

だが、暴力と裏切りの渦巻くこの極寒の異郷の地で、彼ら全ての思いが満たされることなどあり得るのか。その薄氷を踏むが如き緊張感と、冷徹さのみが支配する世界で生きることの恐怖とが、物語の悲壮感をいやがうえにも高めてゆく。おまけにこれは苛烈さで名を馳せる韓国映画なのだ。一つのシーンを例に挙げるなら、国家のために、いまだ思いの残るかつての恋人ソンファを拷問しなければならないゴン——この描写だけでもう、心が張り裂けそうになった。そのせいで映画前半は、観るのが辛くて時々画面を止めてしまっていたほどだ。

しかし、この一触即発の状況は後半、遂に大きく動き出す。それまで極限状態の緊張だったものが、凄まじいアクションへと鮮やかに昇華されてゆくのだ。それはそれまでジョン・ル・カレのスパイ小説であったものが、突然ジョン・ウィック映画へとシフトチェンジするが如きだ。血と銃弾と死に満ちたハイカロリーなアクションがつるべ打ちに叩き込まれ、うねるようなカタルシスを生み出してゆく。この前半と後半の見事なコントラストが、観終わった後に強烈な余韻を残してくれた。彼らの思いは叶うのか、そして、誰が生き残るのか。壮絶極まりないクライマックスを刮目して目撃せよ。


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アレステア・レナルズのSF長編『反転領域』を読んだ

反転領域 / アレステア・レナルズ (著), 中原 尚哉 (訳)

反転領域 (創元SF文庫)

時は19世紀。イギリス人外科医師サイラス・コードが乗船する小型帆船デメテル号は、ノルウェー沿岸の極地探検にむかっていた。北緯68度線付近にある目的地のフィヨルドには、古代に建造されたとおぼしき未知の大建築物が存在するのだという。さまざまな苦難を経て、ようやく現地に到達したサイラスたち探検隊一行は、先着したライバル船のたどった運命を知る。そして目的の建築物を発見したとき、予想もしなかった事態が起こる……星雲賞作家が放つ、読者の予測を鮮やかに反転させる、超絶展開の傑作SF! ローカス賞、ドラゴン賞候補作。

アレステア・レナルズの『反転領域』は、導入部から読者を深く引き込み、最後まで静かな感動を残す、実に印象深い一冊だ。物語は19世紀の北欧沿岸から始まる。主人公の外科医サイラス・コードは、アヘンに頼りながらも船医として小型帆船デメテル号に乗り込み、ノルウェーのフィヨルドを目指す極地探検に参加する。荒々しい海、極寒の気候、船内の緊張感、そして古代に築かれたとされる謎の巨大建築物……この導入部の海洋冒険譚は実に雰囲気がよく、まるで古典的な探検小説のような没入感を与えてくれる。

ところが、物語はここから予想を裏切り続ける。帆船から蒸気船へ、蒸気船から飛行船へ、そしてさらに……と、時代と技術が「反転」しながら繰り返しループしていく。探検隊が直面する事故、死、そして再びの旅立ち。同じような出来事が異なる時代・異なる乗り物で繰り返されるたび、世界観が少しずつ歪み、ミステリアスな不気味さが募る。中盤を過ぎて遂に広大なSF世界が広がった時には、十分なカタルシスを得ることができた。それは、時空を超え、現実と非現実の領域を超え、人間と機械の狭間を超える、まさにSFでしか味わえない面白さと興奮だ。SFアイデアとしては派手なものではないし、アクションが多いわけでもないが、主人公の真摯なキャラクターが物語全体に静かな熱量を注ぎ込み、読む側にじわじわと染み込んでくる。

全篇を覆う奇妙な物憂げさが、ある種の魅力となった物語でもある。サイラスの痛みや喪失を繰り返しながらも諦めずに探求し続ける姿勢、エイダをはじめとする登場人物への共感や洞察も深く、文章は十分に読ませるものがある。「どんでん返し」の鮮やかさと、ラスト近くの静かな締めくくりが胸に突き刺さる。エピローグを経た余韻は、永遠のループから抜け出す意味、人間性の境界、意識の儚さを優しく、しかし切なく問いかけてくる。読後しばらく、儚い夢を見せられたような感覚が残り、こういったタイプの作品があれば他にも読んでみたいと思わされた。

レナルズの名は知っていたが、実は読むのがこれが始めて。しかし、彼の描く「時間」「意識」「宇宙の冷徹さ」といったテーマが、こんなにも静かで美しい形で結実するとは想像以上だった。完成度の高い一冊で、SF初心者でも楽しめるミステリ要素の強さと、深いテーマのバランスが絶妙だ。導入の冒険からループの不気味さ、中盤のカタルシス、さらなるひねり、そしてラストの締めくくりまで、すべてが噛み合ってゆく楽しさをぜひ味わってほしい。

 

efdemin、Klubnacht 01、On Borrd 10など最近聴いたエレクトロニカ界隈

efdemin(Phillip Sollmann)
Poly / efdemin【今日の1枚】

2025年10月17日にOstgut Tonからリリースされたefdemin(Phillip Sollmann)の5thスタジオアルバム『Poly』は、6年ぶりの待望作としてテクノシーンに衝撃を与えた一枚。11曲・約59分の構成で、ミニマルテクノの枠を超えたポリリズミックで微分音的な探求が全編に息づく。オープニング「Drift」のヘイジーでヴェールのような浮遊感から、タイトルトラック「Poly」の密やかなレイヤリングとパワフルなキックへ移行する流れが秀逸。Rauris、Trophic Cascade、Aachenなどのトラックは、モジュラーシンセの複雑なテクスチャーと催眠的なリズムが融合し、クラブでの没入感とホームリスニングの深みを両立。「Radical Hope」や「Irrlicht」の抽象的な展開、「Below the Surface」のクロージングまで、ダンスフロアの記憶と内省的な余韻が交錯するafterglowのような情感が漂う。BerghainのDNAを継ぎつつ、現代的な洗練を加えた音世界は「2025年のベストテクノアルバム」の呼び声が高い。ミニマル/アンビエントテクノを愛する人にとって、繰り返し聴きたくなる没入型マスターピース。efdeminの進化が鮮やかに刻まれた、タイムレスな名盤だ。

Klubnacht 01 / Various Artists【今日の1枚】

2025年5月30日にOstgut Tonからリリースされた『Klubnacht 01』は、約121分の18曲構成コンピレーションで、4年ぶりのレーベル復活作としてBerghainの精神を凝縮した記念碑的一枚だ。Berghain20周年を祝うこのVAは、地下の硬質テクノからグルーヴィーなハウス、実験的なエッジまでを網羅し、現在のベルリンシーンを象徴する多様性を示す。オープニングEfdemin「a thousand shades of green」のミニマルでグリーンな浮遊感から、Quelza「Afternoon Calcium」の長尺催眠トラック、Azu Tiwaline & Cinna Peyghamy「Chrome Fever」のbouncyでexoticなリズムへ移行する流れが秀逸。Altinbas「Seele」、GiGi FM「Overseas」、Verraco、Steffi、Fadi Mohemらの貢献が光り、dubby techno、groovy house、experimental cutsが絶妙にブレンド。後半のIdiome feat. Yolanda Wynsなど、感情的なレイヤーを加えながらクラブの耐久性を保つ。Ostgut Tonの伝統である「upstairs/downstairs」の対比を現代的にアップデートした選曲は、 BerghainのKlubnacht(徹夜パーティー)を音で再現したような没入感。PitchforkやRAで高評価を受け、2025年のbest compilation候補。テクノ/ハウス/エクスペリメンタルファンに刺さる、力強く多層的な名盤。レーベルの再起動を告げる、タイムレスな一枚だ。

On Borrd 10 / Various Artists【今日の1枚】

2025年4月4日にRotterdam拠点のOn Board Musicからリリースされた10周年記念コンピレーション『On Board 10』(OB.M014)は、2x12" vinyl + digital bonus 5曲の豪華構成で、約80分の14トラックが織りなす深遠な電子音楽の旅だ。Altinbasのimmersiveな「Submersion」からGiGi FMのhypnotic「Maova」、Psykのdriving「Cascade」、Dorisburgのtextural「Sensorik」へと続くvinylサイドは、deep technoとambientの境界を優雅に探求。Luigi Tozziのethereal「Light Touch」、Steffiのgroovy「MG2」、Efdeminのsignature modular「Aachen」、Polygoniaのbroken「Broken Temptation」、Massimiliano Pagliaraのmelodic「The Sea」など、多彩なラインナップがlabelの10年間の美学を凝縮している。digital bonusのIna Kacz、Jin Synth、Justine Perry、Laura BCRらのexclusive tracksは、よりexperimentalでfuture-orientedな拡張を加え、全体としてsubmersionからupliftへの緩やかな上昇を描く。クラブでの耐久性とホームでの没入感を両立した選曲とクオリティは、On Board Musicの成熟を象徴。2025年のbest compilation候補に挙がる、deep techno/ambientファン必聴のタイムカプセル的傑作。labelの未来を予感させる、静かに力強い一枚だ。

Evidence Based Vol.3 / Various Artists

2019年4月22日にTriple Vision Music Groupからリリースされた『Evidence Based Vol.3』は、約119分の18曲構成デジタルコンピレーションで、現代テクノの多様な顔を凝縮した強力な一枚だ。オランダ拠点のレーベルらしい硬質で推進力のあるサウンドが基調で、Memorial Home「Somewhere (Kas:st Remix)」のmelodicでupliftingなオープニングから、dotwav「Vilnius (Introversion Remix)」のdarkでindustrialな緊張感へスムーズに移行する流れが秀逸。Stephanie Sykes「Walking Alone (Ansome Remix)」のrawなindustrial techno、Conforce「Suspense」のhypnotic deepness、Yan Cook「Mars Orbiter」のcosmic drive、Setaoc Mass「Destruction」のpummeling rhythm、Wrong Assessment「False Flag」のmenacing energyなど、Kas:st、Introversion、Ansome、Eric Cloutier、Artefaktらリミキサー陣の貢献が光る。Eduardo De La Calle「Chaitanya (Over Mix)」のacidic twistやArchivist「Pathfinder (Eric Cloutier Remix)」のatmospheric shiftまで、クラブ耐久性と多層的な深みを両立。Evidence Basedシリーズの第3弾として、厳選されたリミックスとオリジナルが織りなす「evidence-based」なテクノの現在地を示す。dark technoからmelodicまでを網羅したバランスが絶妙で、2019年のbest compilationの一つ。テクノ・レイヴ好きに刺さる、推進力と没入感の塊のような名作だ。

Etum / Jeigo

2025年11月7日に自身のレーベルFleurella RecordsからリリースされたJeigoの2ndアルバム『Etum』は、約48分の11曲構成で、breakbeatとmicrohouseを軸に深いメランコリーを湛えた傑作だ。ロンドン拠点の彼がイタリアのオリーブオイル農場で3ヶ月過ごしたサバティカル中に生まれた作品らしく、hazyなambient texturesからleftfield club cuts、off-kilter breaksまでを織り交ぜ、solitudeの静けさと微かな変容の予感を捉えている。オープニング「Youth」の穏やかなbreakとlushなメロディから「Bring the Heart」「Echoes」への流れは、etherealでhypnotic。スタンドアウトの「Diye」はchopped breaksとmelancholic chords/vocalsが絡み合い、感情を揺さぶる。「Emptiness 4 U」のintrospectiveな空虚感、「Tape Flutter」のlo-fi揺らぎ、「Groundwater」の締めくくりまで、rhythmicかつatmosphericなサウンドスケープが一貫。samplingを巧みに使い、instrumental中心ながら心に残るemotional impactが強い。RateYourMusicで3.83/5の高評価を受け、2025年のelectronicシーンで「best of the year」候補に挙がるのも納得。Seedsからの進化を感じさせる、chillでimmersiveな一枚。breakbeatやmelancholic houseを愛する人にこそ刺さる、静かに輝く名盤だ。

(※この記事はLLMで作成しています)

上野にぶらっと北斎/チュルリョーニス展を見に行った

この間の日曜日は相方さんと一緒に上野の国立西洋美術館へ展覧会「チュルリョーニス展 内なる星図/北斎 冨嶽三十六景 井内コレクションより」を見に行きました。

混むのが嫌だったので朝早く出て9時半ごろに上野駅に着き、駅そばで軽く腹ごしらえをして国立西洋美術館へ。ちなみに上野駅の駅そば、コロッケ蕎麦を食べましたがこれが割と美味しかった。

以前は結構美術館通いをしていましたが最近はめっきり行くことが無くなり、国立西洋美術館は久しぶりです。この日は気温が高めになるらしかったので軽装で行きましたが、確かに過ごしやすい日でしたね。

国立西洋美術館、懐かしいなあ!なんて言いながらまずは「北斎 冨嶽三十六景 井内コレクションより」。会場は小振りでしたが、シリーズ全46図に、「神奈川沖浪裏」と「凱風快晴」を加えた全48図が公開されていました。

まずはお馴染み、「神奈川沖浪裏」。全46図ある『富嶽三十六景』の中で最も有名な作品でしょう。1831年頃、天保の改革時期に制作され、房総から江戸へ向かう「押送船(おしおくりぶね)」と、その背後に聳える富士山がダイナミックな構図で描かれています。

そしてこれも有名な「赤富士」こと「凱風快晴」。朝日を浴びて赤く染まる富士の姿が大きく描かれています。画面下には樹海、空にはいわし雲、富士の山頂には雪渓が残り、これらが混然一体となって雄大な自然の情景を映し出しているんですね。

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お次は「チュルリョーニス展 内なる星図」。チュルリョーニス、実は初めて知った名前なんですが、リトアニアの国民的芸術家であり、作曲家と画家の両分野で類いまれな才能を発揮した人物なんだとか。ロシア帝国の支配下にあった当時、リトアニア固有の文化やアイデンティティを重んじ、リトアニア音楽の発展にも大きく貢献したのだそうです。

《祭壇》1909年。階段状のピラミッド状構造に塔や騎士などのモチーフを重ね、人間精神の上昇と宇宙的な広がりを象徴が凝縮され、神秘的で荘厳な雰囲気を醸し出しています。

《リトアニアの墓地》1909年。作者の故郷リトアニアの伝統的な墓地を題材に、木製の十字架や墓標を幻想的に抽象化して描いています。緑がかった神秘的な空間に星々が散りばめられ、民族の記憶・祈り・死生観を静かに表現した作品です。

《レックス(王)》1909年。作者最大の作品で、宇宙の支配者「Rex」を玉座に描き、異なる宗教の神概念を融合させた象徴主義の集大成です。火の祭壇、水・大地・空の四大元素、多世界の層構造を神秘的に構成し、光と闇の二元性を交え、精神的上昇と宇宙の調和を荘厳に表現しています。

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美術館を出ると上野公園はお花見に訪れた人たちで賑わっていました。結構いろんな国籍の方がいて、実は上野公園って東京でも沢山の外国の方が訪れる場所なのかもしれません。

最後に上野駅で甘味を軽く頂いて帰りました。そういえば最近、花粉のせいで鼻炎がひどくて、この日も鼻炎薬を飲んでから出掛けたんですが、薬のせいで帰りはひどく眠たくて、帰ってからもしばらく昼寝していましたね。

(おしまい)

ジャック・ブラックとポール・ラッドがアナコンダと大格闘!?/映画『俺たちのアナコンダ』

俺たちのアナコンダ (監督:トム・ゴーミカン 2025年アメリカ映画)

往年のアニマルパニック映画『アナコンダ』が大好きな中年コンビが、はるばるアマゾンまで自主製作リメイク映画を撮りに行ったら、本物の巨大アナコンダが現れて大騒ぎ!というコメディ作品『俺たちのアナコンダ』です。主演はジャック・ブラック&ポール・ラッド!

【STORY】映画オタクの幼なじみ、ダグ(ジャック・ブラック)とグリフ(ポール・ラッド)は、1997年のパニック映画『アナコンダ』をバイブルに崇めていた。40代になり、ダグは結婚式カメラマン、グリフは売れない俳優という現実を前に、再会を機に長年の夢を実現。友人たちを引き連れ、低予算で南米アマゾンへ撮影へ向かう。しかし主役のヘビを誤って殺してしまい、代役を探す奥地で本物の巨大アナコンダに遭遇!夢の映画作りは命がけのサバイバルへと変わっていく。

【CAST】主演に『マインクラフト』のジャック・ブラックと『アントマン』のポール・ラッド。共演にスティーヴ・ザーン、タンディウェ・ニュートン、ダニエラ・メルキオール。監督は『マッシブ・タレント』のトム・ゴーミカン。カメオ出演もあるのでお楽しみに!

とても楽しめる一本でした。ジャック・ブラック&ポール・ラッドの限界中年コンビも◎でしたが、コメディ作だと思って気楽に見ていたら割と怖いし、思った以上に派手なアクションも盛り込まれていて、おまけに思わぬカメオ出演にも驚かされ、なかなかに豪華な作品でしたよ。

映画愛に溢れた子供時代を過ごし、映画の世界に憧れつつも、いざ大人になってみたら方やしがない結婚式カメラマン、方や売れない三文俳優──そんな二人が「やっぱり夢を追いかけたい!」と自主製作リメイク映画を作っちゃう!という映画です。ただそのリメイク作というのが他でもない『アナコンダ』って、お前ら他になんかなかったのか……と思わせる時点で、既に本作の雲行きは怪しい。

おまけに限界中年のくせして有給2週間取って銀行に資金融資してもらってアマゾンでロケとか、「なんだよ意外と余裕ぶっこいた人生じゃないか!?」と思わずツッコんでしまうんですね。まあ単に後先を考えていないだけかもしれませんが。ロケには親しい友人たちまで同行してくれたりと、いや、それって結構豊かな人生なんじゃありません?

そんなお気楽アマゾンロケ御一行様に、キナ臭い連中が絡んでくることでいい具合に緊張感が生まれます。アマゾンで何らかの犯罪行為が進行しており、そこから逃走してきた女性が御一行様の乗る船の船長を偽って乗り込んでくる。怪しげな男たちが彼女を追い回し、船へ迫ってくる──そこへさらに巨大アナコンダが現れて!?という具合にお話がどんどん盛り上がっていくんですよ。

全体的にはギャグがドタバタしていて泥臭く、シナリオ的にも「なんじゃそりゃ?」と思わせる部分が無きにしもあらず。ジャック・ブラックは相変わらず暑苦しいし、ポール・ラッドは疲れた顔してるし、アマゾンロケ御一行様も華がない。そういった点を挙げていけばキリがありませんが、「アマゾンに『アナコンダ』の自主製作リメイクを撮りに行く」という馬鹿馬鹿しさで既に一点突破しているんですよ、この映画。

出演者の顔ぶれからしても、そもそもミドルクラスの中年層にアピールしたい映画という印象を受けます。そういった部分では間違いのない映画だし、そういやこれを観ているオレ自身もそういった層だし、おまけに楽しく観られてもいるから、「じゃあ結局オールオッケーじゃないっすか?」となってしまうんですよね。ドタバタしていたギャグも後半から次第にキレが出てきて、「小便恐怖症」とか「映画の権利」とか「口にネズミ」とか、普通に大笑いして観てましたよ!

おまけにクライマックスが、詳細は伏せますが「え?結構金かかってんじゃんこの映画?」という盛り上がり方で、正直ここまで期待していなかっただけに、これまたいい具合に満足させてくれます。アナコンダがきちんと怖かったのもよかった。ジャック・ブラックもこれまで以上に暑苦しかったですけどね!?……とはいえ、映画少年だった自分の気持ちを今でも捨てられない中年には、この馬鹿馬鹿しさが妙に刺さる一本でした。


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