韓国映画を観まくっていた!ついでにオレ的ベスト作品も挙げてみた!

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Photo by Sava Bobov on Unsplash

去年は韓国映画開眼の年だった!

去年はオレにとって「韓国映画開眼の年」で、劇場のみならずレンタルやサブスクで山の様に韓国映画を観ていた。なぜ今韓国映画?というと、実はそれまで韓国映画を敬遠していてまるで観ていなかったからである。別に製作国に関係無く、面白ければどんな映画でも観ていたし、当然韓国映画もその中に含まれていたが、韓国映画をポツポツ観ていくようになると、段々とその過剰過ぎる陰惨さに辟易してきたのだ。

そんなオレがまた韓国映画を観るようになったのは、おそろしくエンタメ寄りの作品『神と共に』を劇場で観てとても楽しめたからだったと思う。その後に観た歴史ゾンビ映画『王宮の夜鬼』も面白かった。なんだ、韓国映画、陰惨じゃない、普通に楽しめる作品もあるじゃないか。そして、きちんと観るとやはり韓国映画のクオリティの高さがひしひしと伝わってくる。さらにこの後、マ・ドンソクを発見、うわ!韓国映画の俳優楽しい!となってきたのだ。

そんな訳で、永らく観ていなかったブランクを取り戻すべく、ネットに数多ある「お勧め韓国映画」のサイトを調べ、ファンから良作・傑作とされている作品を手当たり次第に観ることにした。もともと韓国映画には根強いファンが多いため、韓国映画に関するサイトの検索は容易極まりなく、ソフトにしろサブスクにしろ充実しており、作品の評価も定まっていて、作品を探すのはまるで苦にならなかった。以前インド映画にハマっていた時とは雲泥の差である。

韓国映画の面白さ

韓国映画の面白さ、完成度の高さは、やはり人間というものをとことん突き詰めて描く部分にあるのではないかと思う。韓国映画の基本にあるのはリアリズムだ。リアルであるからこそ苛烈にもなるし醜くもなる。そこが観る者の心をえぐる。逆にリアリズムに拘泥するばかりに華が無いのもまた韓国映画だ。同時に韓国映画には庶民的で人懐こく感じる部分、ほっとする部分も存在する。そこもまた飾り立てるのを嫌う韓国映画らしい部分だ。それと、同じアジア圏の人間として、他の国の映画よりも一番親近感を湧き易いのが韓国映画なのではないとも思う。というか、韓国も日本もたいした変わりないじゃないか、というのは映画を観ていてよく思う(もちろん、全然違う部分だってあるが)。

こうして去年から今年にかけて、100本近くの韓国映画を観る事になった。オレは一回気になると徹底的にやってしまうタチなのだが、なにしろとても充実した映画体験であった。だいたいの話題作は観たつもりだが、琴線に引っ掛かからず観なかった作品もあるので、網羅的というわけではない(例えばキム・ギドク作品はまるで観る気が起きなかった)。イヤイヤ観てもつまらないしね。

そしてここで韓国映画探訪の旅はとりあえず休止することにした。いや、他にも観たい映画が溜まってきたので。で、締めくくりとして、オレがこれまで観た中で気に入った韓国映画を幾つか挙げておこうと思う。ジャンルごとに5作前後、1位2位といったランク付けはせず挙げておく。セレクトはオレらしく非常に偏っていることをここにお断りしておく。「あの作品が入ってないぞ!?」と思われるかもしれないが、まあ、そういう観方をする人間だと思っていただきたい。また、ジャンルについてはオレが勝手に特定したものなので、異論のある方もいらっしゃるかと思うがご容赦願いたい。なお、恋愛モノは興味が無く観ていないので、ここにはセレクトされていません!

オレ的韓国映画ベスト作品!

コメディ

韓国映画もあれこれ観たが、結局オレの好きなジャンルはノワールでもアクションでもなくコメディだった。韓国コメディは良作が多いのに、ノワールに押されて目立たないのが残念に感じる。

怪しい彼女 (監督:ファン・ドンヒョク 2014年韓国映画

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LUCK-KEY ラッキー (監督:イ・ゲビョク 2016年韓国映画

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エクストリーム・ジョブ (監督:イ・ビョンホン 2019年韓国映画

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 プランマン 恋のアラームが止まらない! (監督 ソン・シフプ 2014年韓国映画

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  • 発売日: 2015/03/03
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がんばれ!チョルス (監督:イ・ゲビョク 2019年韓国映画

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  • 発売日: 2020/11/06
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アクション

いやー、本当は『アジョシ』が入るべきなんだが、随分前に観てお話すっかり忘れちゃってるんだよな。ファンの方、許して下され。

泣く男 (監督:イ・ジョンボム 2014年韓国映画

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  • 発売日: 2015/04/02
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The Witch/魔女 (監督:パク・フンジョン 2018年韓国映画

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  • 発売日: 2019/03/08
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EXIT イグジット (監督:イ・サングン 2019年韓国映画

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  • 発売日: 2020/05/02
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鬼手(きしゅ)(監督:リ・ゴン 2019年韓国映画

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サスペクト 哀しき容疑者 (監督:ウォン・シニョン 2013年韓国映画

人間ドラマ

何をもって「人間ドラマ」とするか?というのは悩ましい所なのだが、人間存在の本質やその生活に迫った作品ということになるかな。

バーニング 劇場版 (監督:イ・チャンドン 2018年韓国映画

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  • 発売日: 2019/08/07
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ほえる犬は噛まない (監督:ポン・ジュノ 2000年韓国映画

ほえる犬は噛まない [Blu-ray]

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  • 発売日: 2020/07/22
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サイボーグでも大丈夫 (監督:パク・チャヌク 2006年韓国映画) 

サイボーグでも大丈夫 デラックス版 [DVD]

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  • 発売日: 2008/03/21
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お嬢さん (監督:パク・チャヌク 2016年韓国映画

国際市場で逢いましょう (監督:ユン・ジェギュン 2014年韓国映画

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  • 発売日: 2020/04/29
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ノワール

韓国映画といえば兎角ノワールが取り沙汰されるし、確かに良作も多い。ただノワールばかりクローズアップするのは偏っていると思う。オレはただ陰鬱なだけの作品は嫌いなんだ。

毒戦 BELIEVER (監督:イ・ヘヨン 2018年韓国映画

毒戦 BELIEVER [Blu-ray]

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  • 発売日: 2021/02/03
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殺人の追憶 (監督:ポン・ジュノ 2003年韓国映画

オールド・ボーイ (監督:パク・チャヌク 2003年韓国映画

アシュラ (監督:キム・ソンス 2016年韓国映画

アシュラ [Blu-ray]

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  • 発売日: 2017/07/21
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悪人伝 (監督:イ・ウォンテ 2019年韓国映画

悪人伝 [Blu-ray]

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  • 発売日: 2020/12/02
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戦争

「戦争」「政治」「歴史」からはそれぞれ3作づつセレクトした。

シルミド SILMIDO(監督:カン・ウソク 2003年韓国映画

シルミド / SILMIDO [DVD]

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  • 発売日: 2004/10/22
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高地戦 (監督:チャン・フン 2011年韓国映画

トンマッコルへようこそ (監督:パク・クァンヒョン 2005年韓国映画

トンマッコルへようこそ [DVD]

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  • 発売日: 2007/03/02
  • メディア: DVD
 
政治

『タクシー運転手』は人間ドラマのカテゴリーともとれるが、光州事件を背景にしていることから政治ジャンルに入れてみた。

1987、ある闘いの真実 (監督:チャン・ジュナン 2017年韓国映画)

1987、ある闘いの真実 [Blu-ray]

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  • 発売日: 2019/02/06
  • メディア: Blu-ray
 

国家が破産する日 (監督:チェ・グクヒ 2018年韓国映画

国家が破産する日 [DVD]

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  • 発売日: 2020/04/08
  • メディア: DVD
 

タクシー運転手 約束は海を越えて (監督:チャン・フン 2017年韓国映画

タクシー運転手 約束は海を越えて [Blu-ray]
 
歴史

韓国の歴史映画は「王」が好きなんだなあ、となんとなく思った。

王になった男 (監督:チュ・チャンミン 2012年韓国映画

王になった男 Blu-ray

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  • 発売日: 2016/03/16
  • メディア: Blu-ray
 

王の男 (監督:イ・ジュンイク 2005年韓国映画

王の男 デジタルリマスター版 [Blu-ray]

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  • 発売日: 2019/11/08
  • メディア: Blu-ray
 

王と道化師たち (監督:キム・ジュホ 2019年韓国映画

王と道化師たち [DVD]

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  • 発売日: 2020/04/24
  • メディア: DVD
 

 

ピーター・ワッツのSF中編『6600万年の革命』を読んだ

6600万年の革命/ピーター・ワッツ (著)、緒賀 岳志 (イラスト)、渡邊 利道 (その他)、嶋田 洋一 (翻訳)

6600万年の革命 (創元SF文庫)

地球を出発してから6500万年。恒星船〈エリオフォラ〉はもはや故郷の存続も定かではないまま、銀河系にワームホールゲート網を構築する任務を続けていた。乗組員サンデイは任務に忠実だったが、あるきっかけで極秘の叛乱計画に加わることを決意する。それは数千年に一度だけしか冷凍睡眠から目覚めない彼女たちと、船の全機能を制御するAIの、百万年にも及ぶ攻防だった。星雲賞受賞『ブラインドサイト』の著者が放つ傑作ハードSF。

『6600万年の革命』は『巨星 ピータ・ワッツ傑作集』に収められた「島」「ホットショット」「巨星」と同じ世界観に属する「サンフラワー・サイクル」というシリーズの1作となる中編だ。

「サンフラワー・サイクル」の物語は大枠はこうだ。22世紀、銀河系全体にワームホール網を構築する「ディアスポラ計画」が発動、複数の恒星間宇宙船が打ち上げられる。そのうちの一隻であり物語の舞台となる〈エリオフォア〉は低レベルAI「チンプ」が管理する。低レベルなのはシンギュラリティを起こさないためだ。これを補う形で3万人の人間が乗り込み、冷凍睡眠しながら複雑な問題が起こった時のみ交代で覚醒させられる。こうして〈エリオフォア〉は膨大な時間を掛けながら銀河を経巡り、いつしか地球との連絡も途絶えていた。

『6600万年の革命』は〈エリオフォア〉打ち上げから6500万年経った時期の物語だ。この間乗組員たちは千年に一度交代で覚醒し、6500万年のうち一人一人は10年足らずしか歳を取っていない。しかし意義も目的も見失われた事業に乗組員たちは疑問を持ち、遂に反旗を翻した、というのがこの物語となる。6500万年経た後から始まる物語のタイトルに「6600万年の革命」と付けられているのかというと、この叛乱自体が100万年のスパンを持ったものだからなのだ。この辺りの時間のすっ飛ばし方が異様さを生んでいる物語でもある。

設定が独特なので長々と説明してしまったが、この小説自体が280ページ程度の中編でありつつ、物語が「AIへの叛乱」というシンプルなものである事から、「テーマの割にはちょっと長いし、ちょっと長い割にはカタルシスが薄く、結果的に間延びしたような印象の作品」として読めてしまった。その設定やテクノロジーの書き込みはさすがハードSFといった面白さがあるが、人間描写とそのドラマが弱く、ピーター・ワッツが中心的テーマとする「自意識と自由意志」に肉薄するのには密度が希釈されてしまっている。この作品自体を3分の2ぐらいの長さにするか、または「サンフラワー・サイクル・シリーズ」として1冊にまとめて一気に読ませた方が説得力があったのではないか。

とは言いつつ、この『6600万年の革命』にはもう一篇、同じ〈エリオフォア〉が登場する短編『ヒッチハイカー』が収録されている。時制は『6600万年の革命』のさらに数百万年後だろう。こちらは短いながらピリッと締まったSFスリラーだが、『6600万年の革命』と相補的であるからこそさらに味わい深く、不気味な余韻を残した作品となっている。

6600万年の革命 (創元SF文庫)
 
巨星 ピーター・ワッツ傑作選 (創元SF文庫)
 

カレル・チャペックの『山椒魚戦争』を読んだ

山椒魚戦争/カレル・チャペック(著)、樹下節(翻訳)

山椒魚戦争

一商船の船長が、インドネシア方面の海中で、山椒魚に似た奇妙な動物を発見する。彼は、この動物が人になれるうえに利口なことを知って、真珠採取に利用することを思いつく。そして、この仕事の企業化を、ある実業家にもちかける。山椒魚は、まず単純な海中作業に利用されるが、やがて、人間はさまざまな技術を教え、言葉までさずけて、彼らを高度な仕事につけはじめる。知識と技術を獲得した山椒魚はいろいろな権利を主張しはじめる。そして……。痛烈なSF的諷刺によって、政治的・経済的・技術的・文化的な激動の時代を皮肉ってみせたチェコの奇才チャペックの代表作。

カレル・チャペックといえば1920年に書かれた戯曲『ロボット』(R.U.R.)において、 世界で初めて「ロボット」という言葉を使ったチェコの作家である。そのチャペックの、『ロボット』と並ぶ古典SFの傑作『山椒魚戦争』を読んでみた。1936年に書かれた『山椒魚戦争』は、南洋で知能のある山椒魚そっくりの生物が発見されることから始まる。その生物は従順な上に人間の言葉を容易く覚え、人間たちは彼らを様々な仕事に就かせて使役してゆくが、やがて数の増えてきた彼らは権利を主張し始める、といった物語だ。なおこの物語に登場する新生物は山椒魚ではないが、とりあえず「山椒魚」と表記しておく。

粗筋からの印象ではいわゆる黒人奴隷や人種間差別を暗喩した社会風刺的な寓話という括り方も出来るだろう。また、カレル・チャペックの『ロボット』と同様、「使役される側の逆襲」をアイロニカルに描いた文明批判的な作品だという見方もできる。とは言いつつ『ロボット』読んでないんですけど!読んでなくて知った口訊くのはよくありませんね!しかしこの『山椒魚戦争』、実際読んでみると、「山椒魚」の生態が細部にわたって非常に詳しく書かれており、それはやはり人間とは違う別の生き物、でしかない。そういった部分から、この物語が社会風刺や文明批判的な作品というよりは「人類とは別の知的生命体とのファーストコンタクト」と単純にとらえて読んでもいいのではないかとも思えた。

クライマックスでは人類と人類に好き放題にされていた「山椒魚」との間で戦闘が起こるのだが、「山椒魚」は海生であることを生かし海の側から人類を追いこんでゆく。この辺の「異種間戦争」の在り方もエキサイティングだったし、「山椒魚」にとっての領土拡大は即ち海の面積を大きくすることなので、次第に陸地が削られていく地球といった展開も斬新に感じた。例えばこの物語を現代にリライトするとするなら「海に住む知的生命とのファーストコンタクト」としてどういった形になるだろうか、と想像してみるのも楽しかった。なお翻訳は数多く出ているが「グーテンベルク21」という出版社のKindle版で読んだ。

山椒魚戦争 (岩波文庫)

山椒魚戦争 (岩波文庫)

 
山椒魚戦争

山椒魚戦争

 
サンショウウオ戦争

サンショウウオ戦争

 
山椒魚戦争 (地球人ライブラリー)

山椒魚戦争 (地球人ライブラリー)

 

 

奥様は元特殊工作員!?/映画『ノンストップ』

ノンストップ (監督:イ・チョルハ 2020年韓国映画

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「ただのおばちゃんや思うとったら、ほんまは元特殊工作員やった!?」という韓国映画、『ノンストップ』でございます。なぜ大阪弁で紹介したかというと、コテコテだったからであります!

《物語》揚げパン屋を営むミヨンは夫ソクファンと娘と暮らす平凡な主婦……だった。ある日ミヨン一家は懸賞でハワイ旅行が当選し、大喜びで旅立つ。しかし彼らの乗った飛行機がハイジャックに遭い、絶体絶命の危機に!?その時、ミヨンの秘められた能力が覚醒した!?ハイジャック犯を次々にぶちのめすミヨン!なんと彼女は元北朝鮮特殊工作員であり、脱北して韓国で暮らしていた女だったのだ!?

えー、「怒らせた奴は実は殺人マシーンだった!?」という、『96時間』や『イコライザー』あたりでもお馴染みの「元特殊工作員無双系アクション」映画であります。韓国映画でも「平凡な女子高生は実は記憶喪失の殺し屋だった!?」という『The Witch/魔女』や「売れない漫画家は実は死んだはずの特殊工作員だった!?」という『ヒットマン エージェント・ジュン』なんてェ作品がありましたな。全く「元特殊工作員無双系」の種は尽きまじ、といったところでありましょうか。

とはいえ、「元特殊工作員無双系」として新しい部分は元工作員が「おばちゃん」であるという部分でありましょう。こういった設定自体は「普通の主婦だと思ってたら元ギャングの用心棒だった!?」というベトナム映画『ハイ・フォン:ママは元ギャング』という作品がありましたが、『ハイ・フォン』がシリアス路線だった部分をこの『ノンストップ』ではアクション・コメディといった形で製作されているんですな。

なにしろ登場時のミヨン、コッテコテにおばちゃんしまくっています。髪型も化粧も服装も行動様式も、「絶対こんなおばちゃん近所にいるよな!」という生活感あふれまくった庶民派おばちゃんなんですよ。しかーし!ハイジャックにより家族に身に危機が及んだ時、元特殊工作員の血が目覚め、ハイジャック犯制圧に乗り出すのです!この突如ガラリと表情を変える瞬間がなにしろカッコイイ!ええでおばちゃん!悪いヤツらをいてこましてまえ!

舞台となるのはジャンボジェット、その細長く狭い通路を活かしたアクションが実に楽しい。ここでミヨンは鬼神の如く技を繰り出し、電光石火で敵どもをなぎ倒します!とはいえ敵もさるもの、ただやられてばかりいるわけではありません。隙を突かれたミヨンに危機が!?と思っていたら実は機内には力強い味方がいた!?その正体は!?という部分でまた面白さが倍加するんですね。旅客機の構造を活かしたハイジャック犯撃退の方法もこのテのハイジャックモノでは斬新なことをやっていたんじゃないかな。

ただ映画的に見るなら飛行機に乗るまでの展開が少々長く感じたのと、ハイジャック犯が普通に銃やナイフを飛行機に持ち込んでるのはどうなのソレ?と思ってしまいました。ハイジャックの理由も「なんも飛行機の中でやんなくてもええやん」と思わせるものだったな。コメディシーンは豊富に盛り込まれ、大いに笑わせてくれる反面、物語のテンポの妨げとなっている部分もあり、全体的に散漫に感じさせてしまったのも難でした。とはいえ、カッコイイおばちゃんをひたすら応援できて、所々クスクス笑いの挟まる娯楽作として観るならば及第点の作品だと言えるでしょう。

チョコレート・ボンボン。

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バレンタインデーということで今年も相方さんからチョコレートを貰ったオレである。相方さんいつもありがとう。ところで今回、なぜか相方さんはオレにチョコを二つくれたのだ。愛情2倍という事か。付き合ってからもう10数年、こんなに経っても愛情は薄れるどころか2倍増しになっているという事なのか。なんと素晴らしい。

……というのは冗談で、相方さん、食料品はいつもネットスーパーでまとめ買いするのだが、この時既に1個注文していたのを忘れてもう1度チョコを買ってしまったという事だったらしい。というわけで今回都合2個のチョコがオレに届けられたという訳なのである。幾つになってもドヂっ子の相方さんである。チョコは上の写真のチョコレートボンボンと下の写真の「Galler」というメーカーのものであった。

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ところで今回書きたかったのはお惚気でも自慢でもなく、チョコレートボンボンの話であった。ボンボンとはウイスキーやブランデーなどの洋酒をチョコレートないし砂糖でコーティングしたお菓子である。ボンボン・ア・ラ・リキュールというのがちゃんとした呼び方なのらしい。で、このボンボンというのが、オレは子供の頃から好きだったのだ。

子供の頃、というのは10歳にも満たない年齢の頃の話である。オレは御多分に漏れずお菓子の好きな子供で、チョコレートも大好物だったが、特にこの洋酒入りのボンボンというのに目が無かったのだ。親戚や両親の友人が子供のオレに「なにかお菓子買ってあげようか」と聞いてきたらオレはすかさず「チョコレートボンボンがいい!」と答えていたほどだ。子供のオレにとって「お酒」というのは禁断の領域であったが、ボンボンであれば限りなくグレイであり、大人たちは割と買い与えてくれたのだ。

子供のオレにとってチョコレートボンボンはそういった「禁断の領域」をちょっとばかりイタズラできる楽しみがあったのと同時に、子供ながらに洋酒の味や香りがとても芳醇なものに感じていたのだ。洋酒とは言ってもボンボンに使われているのはシロップがたっぷり入った、アルコール度数もあってないようなものであろうが、それでもこれの味と香りは格別のものだったのだ。多分ほんのちょっと酔っぱらえるのも楽しかったのだろう。ボンボンに限らず、バッカスやらレミーやらの洋酒入りチョコもあの頃から好きだった。

という訳で10歳にも満たない年齢で既にアルコールの魔力に憑りつかれ始めたガキだったという、空恐ろしいお話なのであった。そしてその後のオレがどのような酒飲みの成人になったかは推して知るべしである。そうは言いつつ、甘酒とかには全然惹かれなかったけどね。今でもまともに飲んだこと無いし。やっぱり酒は洋モノに限る、と子供の頃から思っていたのらしい。返す返すイヤッタらしいガキだったという訳である。