2020年:今年面白かった本やらコミックやら

今年はたくさん本を読んだのだ

今年はなにしろたくさん本を読んだ。実のところ数で言うと50冊ぐらいで、一日一冊は読んでいる読書家の方から見れば「それで沢山?」と思われるかもしれないが、これまで月2,3冊程度しか読んでいなかったオレにしては相当な数なのだ。週に一冊読んでいた計算かな。これは58年のオレの人生で最多の数かもしれない。

なんでこんなに読めたかというとKindle導入のお陰だろう。Kindle読み上げ機能で、あたかもラジオ番組を聴いているように本を読んでいた(聴いていた)のだ。

とはいえ「これからもこの調子でいっぱい本を読もう!」という気もあんまりなくて、それは紙の本とは別に「Kindle用の本」を毎回別途用意することが目的化してしまって、それがちょっと鬱陶しく感じて来たからなんだよな。なんだか「情報消化」のためにムキになって本読んでいたようなもんだったんだよ。来年はこの辺りをちょっと改めて、もっとのんびり本を読みたいと思ってる。

 という訳で今年読んで面白かった本とコミックをざっくりと紹介。新刊ではない作品も結構あります。

SF部門

今年も『三体』を始めとして中国SFが快進撃でしたね。そんな中珍しいイスラエルSFの傑作選『シオンズ・フィクション』が異彩を放っていました。それと、小松左京の『日本沈没』を今頃やっと読んで非常に衝撃を受けました。

三体Ⅱ 黒暗森林 (上)(下) / 劉 慈欣

三体Ⅱ 黒暗森林(下)

三体Ⅱ 黒暗森林(下)

 
三体Ⅱ 黒暗森林(上)

三体Ⅱ 黒暗森林(上)

 

時のきざはし 現代中華SF傑作選 / 立原透耶・編

荒潮/陳 楸帆(チェン・チウファン)

荒潮 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

荒潮 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

 

月の光 現代中国SFアンソロジー

シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選

日本沈没小松左京

日本沈没 決定版【文春e-Books】

日本沈没 決定版【文春e-Books】

 

ホラー/ファンタジィ部門

キング親子の新作長編はガチでしたね。キング短編集も充実していました。ニール・ゲイマンの過去作にも大いに感銘を受けました。ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストの短編集の寒々とした感触も忘れ難い。そしてなんといってもエリック・マコーマックの『雲』!これは今年読んだ本の中でも抜群の面白さでした。

眠れる美女たち(上)(下) / スティーヴン&オーウェン・キング

マイル81 (わるい夢たちのバザールI) 、夏の雷鳴 (わるい夢たちのバザールII) / スティーヴン・キング

雲/エリック・マコーマック

雲 (海外文学セレクション)

雲 (海外文学セレクション)

 

壊れやすいもの/ニール・ゲイマン

壊れやすいもの (角川文庫)

壊れやすいもの (角川文庫)

 

アメリカン・ゴッズ(上)(下)/ニール・ゲイマン

ボーダー 二つの世界/ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト

 

ミステリ部門

今年はオレにしては割とミステリを読んだほうですね。それにしてもジョン・ル・カレの訃報はとても残念でした。

スパイはいまも謀略の地に / ジョン・ル・カレ

スパイはいまも謀略の地に

スパイはいまも謀略の地に

 

影の子 / デイヴィッド・ヤング

影の子 (ハヤカワ・ミステリ1931)

影の子 (ハヤカワ・ミステリ1931)

 

拳銃使いの娘/ジョーダン・ハーパー

拳銃使いの娘 (ハヤカワ・ミステリ1939)
 

1793 / ニクラス ナット・オ・ダーグ

1793

1793

 

ブルーバード、ブルーバード / アッティカ・ロック

文学部門

文学小説ってあんまり読まない人間なんですが、この2作はオールタイムベストに入れてもいいほどに素晴らしい作品でした。いやあ文学って凄い。

グレート・ギャツビーF・スコット・フィッツジェラルド

グレート・ギャツビー

グレート・ギャツビー

 

ロリータ / ウラジミール・ナボコフ

ロリータ (新潮文庫)

ロリータ (新潮文庫)

 

コミック部門

コミック作品、こうして並べてみると結構「ガロ系」であったりオルタナ系な漫画家さんの作品であったりして、オレの好みが如実に分かりますね。

風水ペット (2)/花輪 和一

風水ペット (2) (ビッグコミックススペシャル)

風水ペット (2) (ビッグコミックススペシャル)

  • 作者:花輪 和一
  • 発売日: 2019/09/30
  • メディア: コミック
 

狂気の山脈にて(1)~(4)/田辺剛

死都調布南米紀行/斉藤潤一郎

死都調布 南米紀行 (torch comics)

死都調布 南米紀行 (torch comics)

 

そせじ (4) /山野一

そせじ(4)

そせじ(4)

 

西遊妖猿伝 西域篇 火焔山の章(1)/諸星 大二郎

西遊妖猿伝 西域篇 火焔山の章(1) (モーニング KC)

西遊妖猿伝 西域篇 火焔山の章(1) (モーニング KC)

 

水木先生とぼく/水木プロダクション

小犬のこいぬ/うかうか

小犬のこいぬ【電子限定特典付き】

小犬のこいぬ【電子限定特典付き】

 

2020年:今年面白かった音楽

あれこれ幅広く聴いたのだ

今年もあれこれと沢山音楽を聴きました。実は去年、唐突にそれまで聴いていたEDMに飽きてしまい、1年の前半をリー・ペリー作品探索の旅に費やし、後半をプリンス作品コンプリートに血道を上げていたりしていましたが、それが終わってしばらくあれやこれやのジャンルをつまみ食いし、殆どカオス状態だったんですよね。それが今年の3月になって再びEDMの世界に戻ってきて、以来またぞろEDMばかり聴いています(……とはいえここ最近ちょっとピンク・フロイドを聴き直すようになってきたが)。 

そんな訳でEDMを中心に、今年聴いて面白かった作品を紹介してみたいと思います。 

EDM部門

Fabric 100/Craig Richards, Terry Francis & Keith Reilly  

Fabric 100

Fabric 100

 

テクノ/ハウス中心にリリースされてきた「Fabric」シリーズの栄えある100番目はCraig Richards、Terry Francis、Keith Reillyという3人のDJがそれぞれアルバム1枚づつを担当する豪華3枚組!やはりお祭はこうじゃなきゃ!3者ともオーソドクスな選曲とDJプレイで特別新規なものはないにせよ、むしろ安心して聴ける(踊れる)スムースなテクノ/ハウスを展開していると言える。


Craig, Terry & Keith's Meshy Meander with fabric 100

Fabric Presents Amelie Lens

Fabric Presents Amelie..

Fabric Presents Amelie..

  • アーティスト:Amelie Lens
  • 出版社/メーカー: Fabric
  • 発売日: 2019/11/22
  • メディア: CD
 

ナンバリング100以降にリリースされたAmelie LensのMixはバッキバキにダーク&ハードコアなテクノ・チューンがゴリゴリ唸りガッツンガッツン刺さりまくる、これはもう相当の歯応えのDJ Mix。


Amelie Lens - Solitude Tool (Fabric presents)

Fabric 99/Sasha

fabric 99: Sasha

fabric 99: Sasha

  • 発売日: 2018/06/22
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

80年代後半から活躍するUKのレジェンドDJ、Sashaが満を持してのFabric参戦だが、今まで参加してなかったんだ?と思ったほど。ミステリアスなアンビエント・ハウスから始まりその後も静謐さを湛えながらメランコリックなメロディが揺らぐ美しいMix。


Baile-Amae Feat. Felicia Douglass (Sasha Fabric1999 Mix)

■Tunes 2011-2019/Burial

TUNES 2011-2019 [輸入盤 / 2CD] (HDBCD048)_873

TUNES 2011-2019 [輸入盤 / 2CD] (HDBCD048)_873

  • アーティスト:BURIAL,ブリアル
  • 出版社/メーカー: HYPERDUB
  • 発売日: 2019/12/06
  • メディア: CD
 

UKダブステップ界の鬼才中の鬼才、burialがテン年代にリリースしたシングル全17曲を網羅した150分にわたる2枚組アルバム。葬送曲のようなアンビエントトラックから鬼火の様に仄暗く燃え上がるメランコリックなダンスナンバーまでが並ぶ陰鬱な名作。

 
Rival Dealer - Burial

■Anjunadeep 11 / Jody Wisternoff & James Grant 

Anjunadeep 11 - Mixed By Jody Wisternoff & James Grant

Anjunadeep 11 - Mixed By Jody Wisternoff & James Grant

 

最初に聴いたAnjunadeepのMixアルバムはこの作品だった。憂いを帯びたメロディはどこまでも美しく包み込むようなエモーショナルさに満ち、一曲一曲が単にDJ Mixのパーツではなくそれぞれに完成度の高い楽曲なのである。まるでよく出来たエレクトリック・ミュージックのコンピレーションを聴かされているようだ。BPMも抑え気味で、リスニングに非常に適している。この曲なんか実にいいじゃないか。


Leaving Laurel - Through And Through

■Kern Vol. 5  / Helena Hauff

Kern, Vol. 5: Mixed by Helena Hauff

Kern, Vol. 5: Mixed by Helena Hauff

  • 発売日: 2020/06/18
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

ドイツの名門テクノ・レーベルTresorの人気DJ Mixシリーズ最新作はマシン・ファンクの女王Helena Hauff!これぞTresorと思わせる凶悪にゴリゴリの重量級テクノサウンド! いやこういうの聴くとフロアで踊りたくなってきちゃうよね。CDだと2枚組全31曲132分というロングミックス、D/L版ではさらにUnmixのトラック31曲が追加されこれを含めると5時間22分という長大なボリュームだ。クオリティもコスパも高くてこれは買いだろう。試聴はこちら

soundcloud.com

■Help / Duval Timothy

Help [日本限定CD]

Help [日本限定CD]

  • アーティスト:Duval Timothy
  • 発売日: 2020/08/07
  • メディア: CD
 

Duval TimothyはUK/シエラレオネを拠点に活動するマルチアーティストだという。この『Help』は彼の4枚目のアルバムとなるが、一聴してその繊細なピアノワークと電子音楽との見事な融合振りに聴き入ってしまった。ジャンル的にはエレクトリック・コンテンポラリー・ポップということになるのだろうか。全体的にメランコリックであり、殆どにおいてナイーブなピアノ演奏がリードし、幾つかの曲でたおやかなヴォーカルが聴こえる。そして時折巧みなサウンドコラージュが顔を覗かせ、ごく稀に力強いエレキギターの音が響く。技巧的でありつつ心に訴え掛けようとするソウルを感じる。非常にユニークなアーチスト精神によって製作された好アルバムだということが出来るだろう。

■BRONSON / Bronson 

BRONSON [解説・ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] (BRC642)

BRONSON [解説・ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] (BRC642)

 

グラミー賞ダンス/エレクトロニック部門ノミネート・アーチストであるODESZAとシドニーで活躍するディープハウス・ユニットGoiden Featuresによる新プロジェクト、BRONSONのニューアルバム。エモーショナルで力強いメロディと、美しくドラマチックな曲展開、時としてダークにメランコリックに響き渡る電子音、どの曲を聴いても実にバランスが良く完成度の高い名作アルバムで、今年を代表するエレクトロニック・アルバムの1枚となるかもしれない。

■Transmissions / Global Communication

Transmissions

Transmissions

 

『76:14』がリマスターされ、豊かな音質へと蘇って再発されることとなった。さらにこのアルバムに加えて、Chapterhouseのリミックス作『Chapterhouse Retranslated by Global Communication - Blood Music: Pentamerous Metamorphosis』、これまでのシングル&リミックスを集めた『Curated Singles & Remixes』を加えた3枚組CDボックスセット『Transmissions』としての発売である。エレクトロニック・ミュージック・ファンにとってこれはもう必携のボックスセットだろう。

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■Auraa / Ellen Allien

Auraa

Auraa

  • 発売日: 2020/06/12
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

ハードコア・テクノの女王Ellen Allien、待望のニューアルバム!期待通りのひたすらにカッコよくゴリゴリにハードなフロア仕様テクノで、聴くほどに頭にダンス衝動が湧き上がって止まらない!これはコロナ禍でどんよりした世相とクラブ事情を叩き潰す為に鳴らされている音だ!殺っちめえ!殺っちまってください姐さん!あっしはどこまでも付いていきますよ!

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■Silver Ladders / Mary Lattimore

Silver Ladders (ボーナス・トラック1曲収録/解説付き) [ARTPL-138]

Silver Ladders (ボーナス・トラック1曲収録/解説付き) [ARTPL-138]

  • アーティスト:Mary Lattimore
  • 発売日: 2020/10/09
  • メディア: CD
 

今回もズコズコだブンブンだと散々騒いだオレだが、そんなオレでも静寂が欲しくなることがある。そこでこれ、アンビエント・ハープの才媛Mary Lattimoreのニューアルバム『Silver Ladder』。静謐と温もりの籠ったアコースティックハープの調べがオレをとことんリラックスさせてくれるのだ。ハープってこんなにいいものだったのか。最近聴いたアンビエントサウンドの中でも白眉。これは今年のベストアルバムの1枚になるだろう。SlowdiveのNeil Halsteadがプロデュース。

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その他あれこれと雑食していた  

韓国産ホラー映画『クローゼット』を観た。

クローゼット (監督:キム・グァンビン 2020年韓国映画

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どうもクローゼットというところにはオバケが潜んでいるらしい。

海外のホラー作品を観たり読んだりしているとたまにそういった描写に出くわす。小さな子供が自分の部屋のクローゼットに何か潜んでいるんじゃないかと妄想を大きくし、いや単なる考え過ぎだよ、と思ったところでバーン!とオバケさん登場みたいな。いや、これはちょっと単純化し過ぎたが、なぜかクローゼットが恐怖の源流になっているらしい、ということはなんとなく見聞きする。

だが、そうは言われてもどうも実感が湧かない。なぜならオレはこの年までずっと日本家屋にばかり住んでおり、クローゼットなどという設備には無縁だからだ。クローゼットに代わるものと言えば箪笥や押入れになるのだろうが、子供の頃それが怖かったか?というと全くそういうことはない。まあ和製箪笥ホラー、押入れホラーというのもあることはあるのだろうが、海外におけるクローゼットの扱いよりはマイナーなのではないだろうか。

韓国映画『クローゼット』はそのままズバリ、クローゼットに潜む悪霊を描いたものである。物語の主人公は事故で妻を亡くした男サンウォンとその娘イナ。二人は人里離れた洋館に越すが、お互いの心には溝が生じていた。そんなある日イナが友達が出来た、と言い始め、さらにイナの部屋からは不気味な異音が響くようになる。そしてイナは突然姿を消してしまうのだ。必死の捜索を続けるサンウォンだったが、そんな彼の前に行方を知っているという謎の男ギョンフンが現れる。

まあなにしろ説明するまでもなくイナの失踪の原因はクローゼットに潜む悪霊であり、イナはその悪霊によって異界に連れ込まれたという訳だ。謎の男ギョンフンというのは度重なる児童失踪事件を追う退魔師で、異界からイナを救うために電子機器やら呪術道具を持ち込み、悪霊と対峙するという訳である。こういった形で物語はホラー作品としてはオーソドクスすぎるぐらいストレートに進行してゆき、その悪霊の正体にちょっとした悲惨な事件を絡め、サンウォンと悪霊との最終対決へと向かってゆくというわけである。

物語としてはトビー・フーパー監督作『ポルターガイスト』にJ・A・バヨナ監督作『永遠のこどもたち』を足してナ・ホンジン監督の韓国ホラー『哭声 コクソン』のおどろおどろしさをほんの少し振りかけたようなものとなっているが、こういった作品の既視感を感じはするにせよ、新鮮味と言った部分については残念ながら見当たらない。いや、悪霊が包丁を持って追い掛けてくるところがちょっと物珍しかったか。それと退魔師のギョンフン、最初はハイテクぽい機器で悪霊を探しつつ最後は祈祷に頼るのだけれども、最初からそうしていろよと思わないでもない。とまあそんな訳でそれほど楽しんで観られる作品ではなかった。

それにしても韓国において悪霊退散となると宗教的にはどうなってしまうのか。韓国における宗教人口は「仏教が22.8%、プロテスタント18.3%、カトリック10.9%、儒教0.5%、園(ウォン)仏教0.2%の順(韓国の宗教 | 社会全般 | 韓国文化と生活|韓国旅行「コネスト」)」となっており、仏教とキリスト教でほぼ二分する形(無宗教が46.7%)だが、退魔師ギョンフンの祈祷はあれこれ美味しい所を折衷したものに見え、いわゆるウィルスに対する混合ワクチンみたいなものなのか、とちょっと思ってしまった。しかしそれでは決め手に欠けるので、いつか悪霊に憑りつかれた時のために、自分の宗教はちゃんと決めておくべきだというのが本作の教訓だろう。

映画『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』はボンクラ過ぎるボン作だったッ!?

ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え! (監督:ディーン・パリソット 2020年アメリカ映画)

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マトリックス』、『ジョン・ウィック』 シリーズのキアヌ・リーブスが主演していたもう一つの代表作(?)、『ビルとテッド』が帰って来た!?という映画『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』を観てまいりました。監督はあのカルトSF映画ギャラクシー・クエスト』のディーン・パリソット。

この『ビルとテッド』シリーズ、1989年に『ビルとテッドの大冒険』、1991年に『ビルとテッドの地獄旅行』が公開され、一部になんとなくカルトな人気があるシリーズなんですよ。物語はロック大好きのボンクラ高校生、ビルとテッドが時空を超えて冒険の旅に出て、しまいには世界まで救っちゃうというお話なんですな。オレも大昔観ましたが、相当下らないなりになんとなーく面白かった記憶があります。

さて29年振りに製作されたこの第3弾、主人公ビルとテッドは世界を救ったはずなのに今やすっかり落ちぶれ、単なるニートのおっさんとなり果てていたんですよ。世知辛いですな。そこに未来から使者が現れ、「時空がアレしたのであんたらが世界を救う音楽を作らないと77分後に世界は滅亡する!」とかのたまうんですよ。「77分ってそんなの無理ゲーだろ!」と困惑する二人でしたがそこで一策を講じ、タイムマシンで未来に飛び二人が完成させた音楽をかっぱらってこよう!と画策する訳です。

とまあそんなお話なんですが、いやー、正直ビミョーでしたねえ。何度も未来に行って自分たちに会う、そして失敗する、という事が延々繰り返されるだけで、段々飽きてきちゃうんです。演出が一本調子過ぎて、あっと言わせるような出来事が起きない。それと映画の中の二人、コントみたいに掛け合いを演じてるだけで、動きやアクションが無い。二人がボンクラなのは分かるんですが、それにしたって単なるデクノボウにしか見えないんですよ。

それよりもよかったのはビルとテッドの娘二人の活躍でしたね。二人はお父さんを助けようと過去にタイムトラベルし、伝説のミュージシャンをかき集めてくるんですが、このシークエンスがとてもよかった。このテッドの娘役をブリジット・ランディ=ペイン、ビルの娘役をサマラ・ウィービングが演じているんですが、こちらも演出に一本調子を感じるとはいえ、女子2人にフレッシュな魅力があって、なかなか見せるんです。ある意味、ビルとテッドは脇役にうっちゃって、この二人を主役に持ってきた方がまだ楽しめる映画になったんじゃないかと思いました。(↓サマラ・ウィービングとブリジット・ランディ=ペイン)

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それにしても、第2作目だった1991年から29年も経ったのに音楽的ヒストリーの更新が全く無く、相変わらずエレキギターをキュイーン!とやることがロックだったりとか、その辺もどうなんだろうなーとは思えましたね。まあしかし、もともとがボンクラ・ロック・ムービーだった作品ですから、この程度が妥当であると言えばいえるんですけどねー。そんなに期待しちゃいけないシリーズなんですよ!それにしてもキアヌ、大作にも主演してますけど、こういうしょーもない映画にもコンスタントに出演していて、時々どこを目指しているんだ……と思わないことも無いんですが、この清濁併せ呑む度量の広さがキアヌなんだって思うことにしておきましょう! 


12.18公開!『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』本予告 

『ワンダーウーマン1984』を観たんだが、なんだかなーって感じだったなあ

ワンダーウーマン 1984 (監督:パティ・ジェンキンス 2020年アメリカ映画)

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ガル・ガドット様主演のDCコミック・ヒーロー映画『ワンダーウーマン』の続編が製作される!と知り、オレは一日千秋の思いで待ち焦がれていたのである。いやー『ワンダーウーマン』、好きなんだよなあ、カッコよかったよなあ、なんてったって主演のガル・ガドット様、素敵だったよなあ、見目麗しかったよなあ!という訳で新作『ワンダーウーマン 1984』を観て来たのだが、ええと、アレ?アレ?なんなんですかコレは?なーんでこーなっちゃったんですか?ありゃりゃー……とガックリ肩を落として帰って来たオレなのであった。いやーこれはいくら前作もガル・ガドット様も支持していたオレだとて、ちょっと評価できないぞ。この映画観て思い出したのは栄えあるラジー賞に輝くハル・ベリー主演の『キャットウーマン』だったな。

ええとお話の舞台はタイトル通り1984年のアメリカ、ワンダーウーマンは人間の姿に身を隠し考古学者ダイアナとしてスミソニアン博物館働いていたんだな。そこで鑑定を依頼された奇妙な石を巡り、実業家のマックスが秘密の陰謀を企んでいたことを知る訳だ。実はその石は人間の欲望を叶える魔力を秘めていて、実業家マックスはその石を使い世界を混乱に陥れてしまうんだよ。これにダイアナの同僚であるバーバラ、何故か甦ったスティーブがからみ、ワンダーウーマンは危険な戦いに挑むことになるんだ。

何がよくなかったかというと、「人間の欲望を叶える魔力を持つ石」とか、ワンダーウーマンのスーパーパワーとか、なんだか設定がはっきりしなくて、唐突に後付けされたような設定やら理由が追加される事なんだよな。欲望を叶えた人間は同時に何かを失うことになるとか言うんだが、それは中盤まで説明されなくて、しかも要するにこの設定って有名な怪談『猿の手』で、さらに登場人物の一人に「これは『猿の手』だな!」と言わせちゃうのはどうなんだ、と。スーパーヒーロー映画観に来たのに物語が『猿の手』の長尺解釈版とかって、どうなんだよ。

猿の手 (恐怖と怪奇名作集4)

猿の手 (恐怖と怪奇名作集4)

 

それと悪役である実業家マックスが、実のところ何がやりたいんだかよく分かんない所なんだよ。「欲望を叶える石」を持ってるならさっさと欲望叶えてあとは楽しく暮らしてくれればいいじゃない。それをグダグダと周りくどい事をして世界を混乱に堕とすわけよ。話を大きくする為にその話に無理を生じさせちゃってるんだよ。さらにワンダーウーマンも途中で聞いた事のないスーパーパワーを使うんだけど、いやそれズルしてないかと。それ以外にもあの飛行機のくだりは多方面においてツッコミ所満載なんじゃないかと思ったな。

アクションにおいても、見所ってのが全部予告編で観ることの出来る部分でお終いなんだよ。予告編以上の映像が本編にないって、それって駄作凡作のセオリーなんだよなー。最大の刺客であるはずのチーターなんて単なる映画『キャッツ』だし、ボスキャラはダサいおっさんだし、ポスターなんかで見せてるキンキラキンの甲冑はキンキラキンにしてみたかっただけで本編でまるで役に立ってなかったし、そもそも殆ど人を殺さずキッツいシーンもない根本に「優しい世界」を標榜しようとした物語展開なもんだから、なんだか全編に手ぬるく生ぬるい空気感を感じるんだよな。まあ冒頭のアマゾン族大運動会シーンとかロマンス展開とか悪くない部分も多かったけど、残念な部分のほうが目立っちゃった映画だったなあ。


映画『ワンダーウーマン 1984』US予告1 2020年12月18日(金) 全国ロードショー