タイフーンバースデー!

f:id:globalhead:20190910195438j:plain

unsplash-logo Joyce Adams

9月9日月曜日はオレの誕生日であった。しかしそれ以上に関東に台風直撃の日であった。前日の夜半から雨が降り始めそれは次第に激しくなりやがて暴風を伴ってあれやこれやに甚大な被害を出したのである。「持っていかれた……」とオレは思ったのである。オレの晴れがましい誕生日の日があちらこちらで阿鼻叫喚の大災害を巻き起こした日になったのである。もうこれでは誕生日どころではない。「オレに恨みでもあるのか」とちょっとこめかみのあたりがヒクヒクと脈打ったオレである。しかし、ちょっと冷静になって考えてみたのだ。いや、台風はオレに恨みがあったわけではない。むしろ台風さんはオレのバースデーを祝おうとわざわざ東シナ海辺りからグオングオン言いつつやってきたのではないかと。なんとまあ長旅ではないか。遂にオレも台風さんからお祝いされるほどの人間になったのか。やはり幼少の頃から風雲児と呼ばれ続けていたオレの面目約如といった所ではないか。そしてバースデープレゼントとして強大な台風パワーを大盤振る舞いしてくれたのだ。つまるところあの甚大な台風被害はオレの責任であるという事なのだ。今回の台風であんな目やこんな目に遭った多数の皆さんにはお詫びのしようがない。とはいえ、オレという人間のバースデーというのはあの位派手なものである、と大自然が太鼓判を押してくれたとも言えるのだ。もはや森羅万象がオレを祝い風を呼び雨を降らせ嵐が巻き起こり海は咆哮を上げ雲は渦を巻いたという訳なのだ。大気を動かし大地を揺らせる程のこの力、もうこれはオレが神懸りという事だと言っても構わないのではないか。確かにオレは天の申し子ではないかと思う事がよくあるのだがこれはもう確信に近い。今回の誕生日は天がオレにそれを知らしめた日であったという訳なのである。まあしかし神懸りでも天の申し子でもなんでもいいがもうちょっと給料上がんないかなー貯金溜まんないんだよなーやっぱアマゾンで毎回毎回CDだのブルーレイだのゲームだの後先考えずにボコスカ買ってるからなんだよなーなどと神懸りの割には所帯じみたしょっぱいことをうだうだと書き殴っているオレなのである。

とまあこんな頭になんか湧いてるような戯言の数々は全て冗談である。戯言の数々、というかオレの人生そのものが既に何かの冗談のような気もするしオレの存在それ自体すらも何かの冗談ではないかという疑念が常にもやもやと頭の片隅を侵しているのだが、これについて深く追及するとゆくゆくは緩衝材の張り巡らされた白い部屋に拘束衣を着せられて幽閉され天井を眺めながら「ボクは神武天皇の生まれ変わりだぞう」とか言いつつエシャエシャ笑っているような人になってしまいかねないのでなるべく考えないようにするのが正解なのだ。世界とか宇宙とかあるいは人の頭のナカミにはあまり深く関わってはいけない部分があるのだ。それは深淵と呼ばれるものなのだ。お前が深淵を覗く時深淵もまたお前を覗いているのだというニーチェの格言にあるように突き詰めるとヤベエしアブナイっすよってことなのだ。だから深淵がどーとかこーとか頭をグルグルさせる前にまず相手にしないってことが大事なのだ。一言で言うなら「スルー力」ということですよ。いや「するーか」じゃなくて「するーりょく」ね。「力」は「か」じゃなくて「りょく」って読んでよ。そこん所頼みますよ。でね、このスルー力がね、オレは大事だと思ってるんだ。いやだから「するーか」じゃないって「するーりょく」だっての。でさ、オレは現実とか呼ばれるこの世界で物事をわざわざヤヤコシクすることをあえて避けてもっとお気楽にテキトーにすることを選んだんだ。日々の生活やインターネットの文章の隙間から「ヤヤコシイ」が顔を覗かせタラタラと能書きを垂れ始めたら必殺の呪文を唱えて退散させるんだ。その呪文はこうだ、「MENDOKUSEEEEE!!」だ。関西では「SIRANGANA!!」というのもあるらしい。もう一つの呪文も教えてあげよう、これはちょっと長い、それは「りくつとこ・うやくはど・こにで・もひっつく」だ。この二つの呪文を駆使して太古の昔から宇宙に存在する大悪霊「夜弥弧死威」と戦い抜くんだ。

いかんまたしょーもない冗談を書いてしまった。今回はこんなことを書きたくて晩飯も食わずにパソコンの前に座ってるんじゃないんだ(注:この文章は10日の夜に書いている)。あ、晩飯はまだですがシャワーは浴びましたよ、今日も暑かったから汗だくでしたね、しかし汗だくとツユだくって似てますね、唯々諾々もちょっと似てますよね。…...だーかーら、脱線は止めろとアレほど。

9日に関東に上陸した台風は朝方まで猛威を振るい、出勤時には各交通機関がストップし多数の通勤客に被害を与えた。かく言うこのオレもその一人であったが、実はオレの職場はオレのアパートからそんなに遠くないんだな。スマホのナビで見ると歩いて1時間24分。いや、歩いて1時間半程度の距離が近いか遠いかというとまあ遠いんだろうが、歩けない距離ではない。そもそもオレは歩くのが好きな人間でもうちょっと若い頃は暇になると「散歩」と称して1時間2時間とどこかへ歩いて行っていた。正直に書くと「暇」というのではなく「頭が煮詰まった時」だ。オレは基本的にとことんお家大好きのインドア人間で、おんもに出るのが大嫌いな性分なのだ。だけどずっと部屋にいると段々頭がニエニエになってきちゃってさ。そんな時歩きに出てクールダウンしていたんだ。それと、オレの今の仕事というのが基本現場仕事で、一日に1万5千歩から多い時には2万歩程歩いているのだ(スマホのヘルスアプリ調べ)。だから歩くというのはそれほど苦にならない。そんなわけでこの日は徒歩通勤を決行したという訳だ。それに、一度歩いて行ってみたかったんだ。職場に。あ、一言言っとくと、なにしろオレは「歩き好き」というある種のモノ好きであるだけの話で、「歩いてでも職場まで行こうとする仕事大好きなオレ」を強調したいわけでもそれを誇りたいわけでも人様に推奨したいわけでも全く無い。

そんな訳で職場にテクテク歩き始めたオレであるが、ひとつ誤算があったのがこの日が台風後という事で朝から大変蒸し暑かった、ということだ。歩いて10分20分ぐらいで汗だくですわ。なにしろ職場はゲンバなので出勤の服装は自由なのだが、一応いつもは襟のあるシャツを着ていくようにしていた。だけどこの日はTシャツで行ったほうがが良かったよなーと思ったけど後の祭りだ。まあこれはもうしょうがない。しかし歩いていると更なる障害が出て来た。まず倒木だ。強風になぎ倒された樹木が歩道のあちこちに横たわっているのだ。こんなに木が倒れたのか、と台風の強大さをやっと思い知った。そして次の障害が冠水である。歩道の窪みに雨水が溜まりプールと化しているのだ。ここでもオレは長靴履いてくりゃあ良かった……と後悔し始める。だがここで止めるわけにはいかない。もうしょうがないだろ、とジャブジャブとプール状になった歩道を渡る。勿論靴も靴下もズボンの裾もずぶ濡れだ。まあ事務所行くと靴下の替えがあったよな、とちょっと自分を安心させる。

こうしてさらにテクテク歩いていくオレなのだが、実はオレの職場というのは市街地から離れた相当の僻地にあり(なにしろゲンバなので)、段々と人気のない場所に差し掛かってくる。するとどうだ、今度は巨大落石が往く手を阻むではないか。大きさは大人の背丈ほどもある。それが人一人通るのがやっとの山道を塞いでいるのだ。迂回するにも道のもう片方は断崖絶壁であり、その下には荒れ狂う海がゴウゴウと渦を巻いているのだ。これは落石をよじ登るしかない。丁度登山ザイルを携帯していたのでそれを利用しなんとか落石を乗り越える。すると落石の向こうになにやら怪しげな風体をした男が下卑た笑みを浮かべながらこちらを見ているではないか。「金を置いてけ!」匕首を片手にきらめかせながら男は詰め寄る。追剥だ!オレはとっさに男を突き飛ばし、走りながら懐からマキビシを取り出してばら撒き、男の追跡を阻止した。辻角の赤い涎掛けをした地蔵のある辺りで一息つくと男はもう追ってきていないようだ。間一髪であった。その場所で暫く呼吸を整えていると今度はどこからともなく不気味な笑い声が響く。なんだ!?と辺りを見回すと、なんと石地蔵がゆらゆらと揺れながら笑い声を発している!「妖怪か!?」オレはそこで師匠から譲り受けた護符を取り出し妖怪石地蔵へと投げつける。すると石地蔵は悪臭のする黒い煙となって消え失せてしまった。

その後も霧の懸かった湖のほとりで巨大爬虫類の咆哮を聞いたりとか暗い森の奥で目が眩むほど光り輝く着陸したUFOに遭遇したりとか氷の祠で人外の者としか思えない長い髪の妖しい美女が眠気のする吐息を吐きかけてきたりとか遺跡だらけの砂漠では太古の超文明によって作られた巨大ロボットが目から赤いビームを発射しながら迫ってきたりとか様々な恐ろしい出来事がオレを襲ったが、なんとかオレは職場に辿り着いたのであった。いやー、台風だったとはいえ、本当に散々な誕生日だったよ(しかもちょっと足が攣った)。

……だから!冗談だってば(落石の辺りから)!

という訳で9月9日でオレも57歳になってしまいました。いやー57歳になっても今日みたいなバカなことしか書けないってのもある意味スゴイことですよねえ。ブログのほうは(予定通り)段々更新が減ってきてますが、例によってテケトーに続けていよいよ飽きて来たらテケトーに止めようかと思っております。いややっぱパソコンの前に座って時間掛けてなんか書いてるのって結構キツクなってきてねえ。いつまで続くか分かんないですがそれまでは皆さん、またオレのブログとお付き合いくだされば嬉しいです。でわでわ!最後に、ハッピーバースデー、オレ!