椎名誠『おなかがすいたハラペコだ。』と『おなかがすいたハラペコだ。②―おかわりもういっぱい』を読んだ

■おなかがすいたハラペコだ。/椎名誠

■おなかがすいたハラペコだ。②―おかわりもういっぱい/椎名誠

おなかがすいたハラペコだ。 おなかがすいたハラペコだ。?―おかわりもういっぱい

例によって取っ付きにくいハードカバー小説を読み疲労してしまったので、口直しという事で軽めの読み物を読むことにした。オレにとって軽めの読み物と言ったら椎名誠である。というわけでエッセイ『おなかがすいたハラペコだ。』と『おなかがすいたハラペコだ。②―おかわりもういっぱい』の2冊を読んでみた。

この2冊は『女性のひろば』という雑誌に掲載されたものを収録している。『おなかがすいたハラペコだ。』は2012年5月号から2015年8月号まで、『②』が2015年9月号から2018年3月号までの連載をまとめたものになっている。ちなみに『女性のひろば』という雑誌、あんまり聞いたことが無いのだが日本共産党中央委員会発行なのらしい。連載は現在も進行中のようだ。

でまあ、内容はというと、椎名さんのいつもの食い物エッセイである。オレにとって椎名さんと言えば食い物と旅行であって、小説は殆ど読んだことが無い。椎名さんのとりあげる食い物はグルメなるものでもなくB級グルメなるなんだかひねこびたものでもない。ひどく雑駁で日常的でいつでも食えるその辺のモンばかりである。あと釣りやキャンプ先でのその場で作る食事とかね。

それとは別に旅行先で食べたあれやこれやも多く取り上げられるが、これもレストランなんぞではなく現地に根差した野趣溢れる食い物や辺境の奥地で口にした面妖な食い物ばかりなのである。要は「腹減った!だから四の五の言わず目の前にあるもんを食う!」という単純で原始的でなおかつ健康的な動機によって書かれているのだ。オレみたいな凡人がスマホのアプリ頼りに情報で頭を一杯にしながら食べに行く料理ではないのだ。

とはいえ、椎名さんも昔っから食い物エッセイを多く書き続けているので、はっきり言うなら内容はマンネリである。とりたてて目を引くようなことも驚くようなことも新機軸となるようなことも書かれていない。おまけに、マンネリどころか1,2巻を通して同じ話が2回3回と飛び出してくる。まあ6年以上続く連載だから話題のダブリはいたしかたないかもしれない。とりあえずファンとしては、「いつもの椎名さんの語りを読むことの心地よさ」だけを楽しみにして読み進められればそれでいいのだ。

同時に、この2冊を読んで思ったのは、「椎名さんも年取ったなあ」ということである。それも当然、1944年生まれで今や孫もいる70半ばのお爺ちゃんだからなあ。なにしろあれだけ食うことに執着の限りを見せていた健啖家の椎名さんが、「もう丼ものは食えない」「揚げ物もいまいち」みたいなことを言っている。そもそも50半ばのオレ自体丼ものも揚げ物も重たいから敬遠してるぐらいだから当然かもしれない。昔ほど旅行も行っていないという。せいぜい仲間と釣りするぐらいなものだそうだ。

そんな食の細くなった椎名さんだが、麺類への執着は未だ捨てきれず、特にそうめんへのこだわりは鬼レベルである。薬味は10種類の中から選択し、ツユ自体も自家製でしかも出汁により3種類は製作しているらしい。これが高じて子供や孫が揃った日のお祝いは「ソーメンパーティー」だというから念がいっている。

それと、今回のエッセイでは珍しく椎名さんが自分の奥さんについて言及している。女性誌での連載ということもあるのだろうが、今や子供たちも成人して巣立ち、再び妻と二人顔付合わせる生活になって思うこともあるのだろう。そしてこの奥さんというのも渡辺一枝という名のエッセイストで、書籍も多く出されているという事を初めて知った。 

おなかがすいたハラペコだ。 (集英社文庫)

おなかがすいたハラペコだ。 (集英社文庫)

 
おなかがすいたハラペコだ。

おなかがすいたハラペコだ。