マイク・ミニョーラの描くドクター・ストレンジ作品『ドクター・ストレンジ & ドクター・ドゥーム』

■ドクターストレンジ & ドクタードゥーム/ロジャー・スターン (著)、マイク・ミニョーラ (イラスト)

ドクターストレンジ & ドクタードゥーム (ShoPro Books)

ファンタスティック・フォーの宿敵でもある天才科学者、ドクター・ドゥーム。彼は母親の魂を地獄から解放するための孤独な戦いに、何度も敗れていた。その戦いに手を貸したのが、天才脳外科医の魔術師、ドクター・ストレンジだった! まったく逆の力を武器にする二人は、魔王メフィストを倒し、母シンシアの魂を救うことができるのか。そしてそのために彼らが払わなければならない犠牲とは、いったいどれほどのものなのか……? 天才ヴィランと天才ヒーローによる、予想外のチームアップ。

マーベルヒーローが活躍する映画作品、いわゆる”MCU”の中でどのヒーロー映画が一番好きかと訊かれたら、オレは案外『ドクター・ストレンジ』と答えるかもしれない。主演のベネディクト・カンバーバッチは好きな俳優だし、超越的な秘術から生み出される魔術合戦には目を奪われたし、万華鏡のように刻々と姿を変えるビル群を描いたVFXには感嘆させられた。

その『ドクター・ストレンジ』を『ヘルボーイ』原作者のマイク・ミニョーラが描いたグラフィックノベルがあると聞いたらそれは読まざるを得ない。それがこの『ドクター・ストレンジ&ドクター・ドゥーム』だ。

タイトルから分かるようにこの作品にはドクター・ストレンジと共にドクター・ドゥームが登場する。ドクター・ドゥーム、『ファンタスティック・フォー』あたりで知られる強力なヴィランの名前だ。物語はドクター・ドゥームが地獄に堕ちた母の魂を救うため、世界最強の魔術師であるドクター・ストレンジの力を借り地獄へ降りてゆく、というものだ。

本作は1989年に書かれたが、ミニョーラにとって地獄に降りて悪鬼や魔王と戦うというモチーフは、その後1993年に生み出されることになる代表作『ヘルボーイ』の雛形となったとも言えるかもしれない。『ヘルボーイ』以前のミニョーラの手になるこの作品は、グラフィックこそまだ手探りの状態で、『ヘルボーイ』独特のソリッドなコントラストで描かされる作品世界はまだ見ることは出来ないが、それでも画面構成やコマ割り、アングルの付け方には既に非凡なものが見られる(まあ実際の所アメコミは分業制なのでグラフィック以外でミニョーラがどこまで関わったのかははっきりわからないのだが)。

とはいえ地獄における強力な魔術対決の描写は十分に楽しめ、ドクター・ストレンジらしさとミニョーラらしさの両方を味わえる作品として完成している。同時に、ヴィランとして登場するドクター・ドゥームの生い立ちや彼の抱える苦悩をこの物語で初めて知る事が出来、この辺りも興味深く読むことができた。

なお併載として、これはミニョーラの手によるものではないがドクター・ドゥーム、ドクター・ストレンジのエピソードが1作づつ、ミニョーラ最初期の作品でネイモア・ザ・サブマリナーという水棲ヒーローが活躍する作品が2作収録されている。

ドクターストレンジ & ドクタードゥーム (ShoPro Books)

ドクターストレンジ & ドクタードゥーム (ShoPro Books)