ウー・ジン主演の『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』は香港映画版ランボーだったッ!?

■戦狼 ウルフ・オブ・ウォー (監督:ウー・ジン 2017年香港映画)

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『全世界興収1,000億円!』という煽り文句が強烈な映画『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』でございます。いやあびっくりさせられちゃいますよね、1000億円ちゅうたらオレの大好きなピザが東京ドーム10杯分ぐらい買えるんじゃないでしょうか。東京ドーム1杯分ぐらいでも十分多いって言うのにいったいどうしてくれるんでしょう。

で、「いったいなんじゃいな」と思って調べたところ、この『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』、あのウー・ジンが主演・監督を務めているっていうじゃないですか。実は以前、トニー・ジャーが目当てで映画『ドラゴン×マッハ!』観た時に、「なんかトニー・ジャーより目立ってる激強のおっさんがいる」と驚嘆した俳優がいたんですが、それがこのウー・ジンだったんですね(それまで知らなかったことをお許しください)。そんなウー・ジンが主演した全アジア話題沸騰の映画とくればこりゃあ観なきゃしょうがないじゃないですか。

さて物語。主人公レン(ウー・ジン)は元特殊部隊「戦狼」の一員だったのですが、ある事件により軍職を剥奪され、今はアフリカのある国で過ごしているんです。実はかつて同じ軍人だった恋人がアフリカで兵役中に殺され、その犯人を追っていたんですね。そんな時いきなり勃発する軍事クーデター!レンは在アフリカ中国民間人を救う為、たった一人で戦火の中に飛び込むのですよ!!

映画が始まるといきなり貨物船を襲う海賊との肉弾戦が描かれるんですが、これがなんと!ウー・ジン演じる主人公レンが、海賊どもを海中に引き摺り込み、全員「水中クンフーでやっつけてしまう!というもんの凄いアクションが展開します。もうウー・ジンに海中に引き込まれたら生きて出てこれないと思ったほうがよさそうですね。どんな妖怪だよウー・ジン

クーデター軍は残忍極まりない連中で、街中は銃撃と爆炎の嵐、辺りは民間人たちの死体の山、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図と化しているんですよ。そんな中たった一人で果敢に戦いを繰り広げるレンなんですが、RPGの砲弾をフェンスの金網で受け止めるなどという恐るべきアクションを見せてくれます。なにしろウー・ジン体のキレが凄まじくて、格闘技よし、ガンアクションよしと、なにやらせてもカッコよく決まるので惚れ惚れしちゃいますね。

実はこのクーデター軍には白人傭兵軍団が関与しているんですが、こいつらがまた輪を掛けて残虐な連中で、救出に訪れたレンに牙を剥くんです。その中でも強力なのがヴァ―チャファイターのサラみたいな傭兵とストリートファイターザンギエフみたいな傭兵で、レンを亡き者にせんと襲い掛かるんです(映画の間中「サラが襲ってきた!」「ザンギエフつええ!」とか勝手に盛り上がってました)。さらに傭兵の親玉をキャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』のフランク・グリロが演じていてこれがもう実にタチが悪い。そしてこいつらが戦車まで持ち込んで迫りくるもんですからいかに無敵のウー・ジンでも絶体絶命の危機に至っちゃうんです!

こういった具合に全篇激しい銃撃戦と強力な格闘技とで繰り広げられるアクション巨編、あたかも映画『ランボー』の中国版かと思わせるような物語なんですが、中国の元軍人の戦う場所がアフリカの架空の国というのがなかなか上手いことやってるな、と思わされました。お話には中国軍も相当に絡んできてますし、現在の社会情勢を鑑みるなら当たり障りのない舞台であるといえるのでしょう。

で、この映画のもうひとつのポイントは、いわゆる中国の国威掲揚映画でもあるという点ですね。「どんな土地にいようと中国国民は偉大な祖国が守る」ってヤツですね。中国国旗もこれ見よがしに画面のそこここに躍ってますし、そういったのが苦手な人は抵抗感があるかもですね。実はあまりにあからさますぎて、中国人観客の一部ですらちょっと白けているらしいです。

とはいえ、国威掲揚なんざハリウッド娯楽作でも飽きるほどやってるし、インドじゃ映画館で国歌が流れて全員起立って話だし、ここだけ取り出して評価を下げるべきではないと思います。むしろ主人公レンが亡くした恋人のことを思いながら慟哭する、このウェットな情緒の在り方のほうに中国映画の"らしさ"を感じましたね。なおこの作品、『ウルフ・オブ・ウォー ネイビー・シールズ傭兵部隊vsPLA特殊部隊』という映画の続編らしくて(未見)、こちらもちょっと観たくなってしまいました。


『戦狼/ウルフ・オブ・ウォー』予告

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